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第十節 変態 Another View — 千条院 星

繋ぎ用に別の人の視点で書いた。

 「今日の特売、いいもの掴まえるのかな。」

 僕は空を見て、今日の献立を考えた。

 昨日は肉抜きの野菜炒め、一昨日は肉を模した豆腐ハンバーグ...いい加減にあの子達に肉料理を作るべきだろうか。

 (あきら)(ちかし)(めぐむ)

 亡くなった母は僕達に一文字の名前を付けたがる。弟の方は(あきら)、妹たちの方は(ちかし)(めぐむ)

 そして、一人だけ成人して、両親のいないこの家を支える為に働いているのが、自慢の兄、(のぞみ)兄さんだ。

 僕の名前の方は「星」と書いて、「ひかり」と呼び、妹たちと同じ変な読み方をしている。

 僕達を養ってくれている兄さんを助けるべく、僕も頑張って奨学金を得られるように勉強をしたが、後少しのところで成績が基準点に達せず、兄が務めているあの学園の中学校に入学できなかった。

 それでも、あの学園に入れるように、その学園のもう一つの入学条件である「一つでも人より優れたところがあれば」クリアすべく、武道に力を注いだ。

 そして、僕は「全国武道大会」に優勝し、「千年に一人の武術の天才」と評された。それを入学条件クリアした証拠として、学園の理事長に直に入学を頼んだ。

 相手が卑怯者(カメレオン)の代表格だとしても、兄さんの役に立てるなら、頭も下げよう。

 幸い、学園長は快く僕の入学を認めてくれて、破格に僕の早めの入学を許可してくれた。

 もう残り三カ月しかないが、それでも家計の助けになっていると思う。

 ほかの貴族達は僕達を見ると「千条院家も終わりだ」と揃ってそう言うが、僕にとっては下の兄弟達の献立の方が大事だ。

 働いている兄さんの負担を少しでも減らせるように、まだ小さい下の兄弟達の世話や、料理、そして家計のやり繰りをするのが僕の仕事。朝には保育園の先生達が弟・妹達を迎いに来てくれるが、帰りは僕と兄さんのどちらが迎いに行かなければいけない。

 ここ最近ずっと兄さんが迎いに行ってくれているが、いい加減、僕もあの子達を迎いに行こう。


 僕はいつものようにグランドに目を向けた。

 いつもなら、そこに一人の少女が走っていたはずだが、今日は珍しくいなかった。

 彼女はとても変な人間だ。

 初めて声をかけられた時、彼女が卑怯者(カメレオン)であることと、僕が理事長(カメレオン)に頭を下げたことと重なり、つい刺々しい態度をとってしまった。

 彼女に謝ろうと思ったが、どうしてだか彼女に声をかけられなかった。

 その次の日に、彼女はまた僕に声をかけたが、「今度こそちゃんと話そう」と意気込んだのに、言葉が出なかった。

 そのせいで彼女を怒らせて、僕に攻撃を仕掛けてきた。

 不完全になっているとはいえ、大切な「ケンタウロスの家宝」に傷をつかせるわけにはいかないので、仕方なく彼女の攻撃を避け続けたら、彼女が素人では怪我しやすい「薙ぎ払い」を使ったので、仕方ないその槍を打ち上げた。

 槍が彼女の目の前に刺さって、彼女を怖がらせた。

 もう彼女と仲良くなれないと思い、彼女にこれ以上に危険に遭わないように、「二度と近づくな」と冷たく言ったが、その次の「練武」の授業で、また彼女に声をかけられた。

 その時の彼女は僕に「カメレオンではなく、一個人として見てください」と言った。僕が声をかけられてどれだけ嬉しく感じているのかを、彼女は知らない。知らないまま、僕と仲良くしようと努力をしている。

 とても素直で一途な女の子だ。

 僕も彼女のような素直に自分の気持ちを伝えられる女の子になりたい。

 けど、やはり僕は不器用だ。

 彼女に対して、つい冷たい態度のまま、彼女と「勝負」することになった。

 彼女は僕に一撃でも入れたら、自分の勝ちだと、とても子供っぽくて、わがままのルールを決めた。それでも、彼女では僕に触れられないと思ったが、その真剣な気持ちを答え、僕も本気で彼女と勝負することにした。

 授業中、下校の帰り、挙句の果てにトイレの中まで攻撃を仕掛けてきた。

 しかし、僕は結局全ての攻撃を避けた。彼女には申し訳ないが、僕との力の差がありすぎた。

 それでも、彼女は諦めなかった。「体強」の授業がない日の放課後はいつも自主練をし、グランドで走っていた。


 だからこそ、「体強」のない今日に、彼女の姿がないのはおかしい。理由もなくさぼる人ではないと僕は思っている。

 なら、理由があって、ここにいないのか。

 彼女の連絡先を知っていれば、今から確認ができるのに...

 あのいつも彼女の後ろにくっついている凄腕のメイドもいない。何かあったのでしょうか。

 ......

 ...

 仕方ない。少し彼女のことを探そう。

 僕は夕方の特売セールを諦めて、兄さんに念話(でんわ)でほかの兄弟の迎いを頼み、校舎へと戻った。

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