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第4話 メビウス・リング(Ⅳ)

 DOOMがおぞましい程の覇気を(たぎ)らせる。それはアタシ達の肌をひりつかせる程の、熱気とも冷気とも取れる、禍々しい物だった。


「貴様らぁぁぁ! 骨肉の一片たりとも残されると思うなぁぁぁ! 消し炭も残さん! この世の記憶からも消し去ってくれるわ!」


 言葉の欠片の一つ一つが身を削ぐようだ。

 リック課長には申し訳無いが、この場から脱出なんて出来ようも無い。

 ……地獄に踏み込んでるんだもん。一切の希望を捨てて、ね。この地獄の主、DOOMの怒りを買ったのはアタシ達だけではない。


「フェイ! 貴様も同罪だ! オレを利用しようなどと画策していた様だが、甘いのは貴様の方だ。オレは……オレの理想とする世界を築く! その目的を果たすためなら、どんな犠牲も厭わんっ!」


 銃口をフェイへと向け、その指はトリガーを今にも引きそうにぴくりと動く。


「フフフ……君を利用……? 確かにオールトの雲は君を利用していたのだろう。だけど、俺は君に期待しているよ? それに、まだ最後の仕上げが残っている。その間、この場を君に任せたいのだが……どうだろう?」


 銃口を突き付けられながらも、不敵な笑みを浮かべDOOMと向き合うフェイの姿に恐怖さえ感じるのはアタシだけだろうか?


 暫し睨み合った後、その銃口をこちらに向ける。

「最後の仕上げ……だと? フン、さっさと仕上げて来い。オレの目的を果たすまでは生かしておいてやる。コイツらを殺した後は……貴様の番だ」

「分かったよ。じゃ、後は頼んだからね」


 肩をすくめて答えたフェイは、DOOMの肩に手を添え、そのまま奥の闇へと消えていった。DOOMはその手を添えられた肩を、汚れを払うかのように撫で、その眼孔に灯された炎を更に黒く染める。


「たかが新聞屋風情にここまでいいようにコケにされるとはな……いや、お前は只の新聞屋では無かったな、特異点……そうか、特異点か。お前こそが異質だったのだな」


 アタシが異質? 失礼なっ! レディに向かってその言い草は無いでしょーがっ!


「異質なモノは排除せねばな……消えろっ!」


 その言葉と同時に何体ものDOOMが現れ、一斉にエネルギー弾を浴びせてくる。


「エミリー!」


 今の状況では、残念ながら頼りになるのはエミリーしかいない。


「おっけ~で~す! いっくぞぉ~!」


 ヘリオスがアタシ達の前に立ち、エネルギー弾をガードする。


「エミリー! 大丈夫なの!?」

「へっちゃらポイですよん♪ クリスせ~んぱい」


 おどけるエミリーに対して、苛立ちを隠せない様子が見て取れる。


「機械人形がぁ!」


 声を荒げるDOOMがトーラスなんたらを一発、二発、三発と発砲する。火に油を注ぐとはこの事か! 余計な事を……

  新たに呼び寄せたクローン達が、三度(みたび)周りを取り囲む。この光景にも慣れてきた、と言うより飽きてきたわね。とは言えど、こちらの防備も万全では無く、ヘリオスの弾薬も底を尽き、STチームの超振動剣(ハイパー・ヴァイブロ・ブレード)だけでは防ぎ切れない。

 アインもクラウ・ソラスを片手に果敢に攻め込むが、それも長くは持たず人海戦術の前では甲斐も無く疲弊するばかり。

 ジェフもビーム・ガンを豪快にぶっ放しながら超振動剣(ハイパー・ヴァイブロ・ブレード)で応戦するが、ミリュー達を護りながらでは苦戦の一途を辿るしかない。

 精霊使いチームでは、今や戦力と呼べるのは神器の支配者となったカイルのみ。彼もジェフ同様に、ハル達を庇いながらではおいそれと翼をはためかせる事も叶わず、更には四つの精霊の力を繰り出すには、残念ながら彼の精神力が持たない。

 シンとクリスも負傷したアストをサポートしながら奮戦するが、やはりアストが足手まと……コホン……十分な動きを見せられないアストに期待は出来ない。

 当然、神器の力にも、だ。

 いつ尽きるとも知れず次々と姿を現すクローン達。コイツ等を相手取るにつれ、こちらの疲弊は加速度を増していくばかりで、当然五体満足のままでいられる筈も無い。

 部屋の方々から聞こえてくる悲鳴や(うめ)き声、哀哭(あいこく)喚呼(かんこ)……

 足を引きずりながらも懸命に戦う者、片腕をだらんと下げたまま、もう一方の腕で剣を振るったり、銃を放つ者……

 それは最早正視するに堪えられる情景では無く、

そして、幾重にも頑丈な鍵を掛けられたままのアタシの記憶の扉を開いたのだった。




 全てを壊してやる……

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