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オーク35歳(♂)、職業山賊、女勇者に負けて奴隷になりました ~奴隷オークの冒険譚~(完結)  作者: 熊吉(モノカキグマ)
第5章「決戦」

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5-3「総攻撃」

5-3「総攻撃」


 勝ったとはいっても、それは、あくまで緒戦に過ぎなかった。

 魔王軍には未だ数えきれないほどの魔物たちがおり、魔物たちはクラテーラ山から湧きだす様に現れ、続々とその戦列に加わっていく。


 いつ、第2回目の突撃が開始されてもおかしくなかった。

 人類軍は燃え広がった炎が魔王軍の行動を制止しているうちに慌ただしく次の迎撃の準備を進めていく。


 第1波を撃退するために用意しておいた罠の多くを使ってしまったから、第2波以降の攻撃は、人類軍側からの反撃と、ウルチモ城塞の城壁の堅固さに頼るしかない。


 炎は、数時間に渡って燃え続けた。

 人類軍はその間に消費した矢などの補給を行い、城壁にいた兵士たちをまだ戦いに参加していない元気な兵士たちと交代させた。


 そして炎が消えると、魔王軍はウルチモ城塞への突撃を再開した。

 魔物たちによる総攻撃だった。


 魔物たちが大挙して城壁に向かって突撃してくるのは第1波と変わらなかったが、今度はその突撃を、巨人族と魔法を使う魔物たちが支援していた。

 巨人族は隊列を組んで人間の投石器を真似るように石を城壁に向かって投げつけ、魔物たちが魔法を使って城壁の人類軍を攻撃する。


 その目標は、城壁の上に設置されている人類側の兵器へと集中していた。

 魔王軍第1波の突撃の際に大きな威力を発揮した投石器やバリスタを、優先して破壊しようとしている様だった。


 それでも、人類軍はほとんど被害を出さないまま、魔王軍の攻撃に持ちこたえ続けた。

 人類側の魔術師たちが対抗呪文を唱えて対処したこともあったが、何よりも、ウルチモ城塞にはその守りの要である「ファンシェの鏡」が備えられていたからだ。


 ファンシェの鏡は聖なる光をたたえたまま、ウルチモ城塞へ向かって飛んでくる石や、魔法の攻撃を跳ね返し続けた。

 城壁の直前にはファンシェの鏡の力によって作られた不可視の壁なようなものがあり、巨人たちが投げた石はそこで砕け散り、魔法は跳ね返された。


 人類軍はファンシェの鏡の力を得て意気盛んとなった。

 ファンシェの鏡によって守られた投石器、バリスタが休むことなく射撃を続け、兵士たちが放つ矢の雨が途切れることなく魔物たちの頭上へと降り注ぐ。

 魔物たちは次々と倒れていったが、かつて同胞だったものを蹴散らしながら突撃を続け、第1波と同じようにウルチモ城塞の堀へと殺到した。


 堀は、すでに半分ほどが埋まっている。

 炎は魔物たちを焼いたが、その全てを完全に灰とすることはできなかったのだ。


 魔物たちは第1波と同じ様に自身の死体を積み重ねて堀を突破しようとしていた。

 人類軍はその頭上に必死に矢の雨を降らせ続けたが、しかし、魔物たちの攻撃を止めさせることはできなかった。


 魔王軍は数に任せて攻撃を続け、人類軍に休む暇を与えなかった。

 谷筋に押し込められていた後続の魔物たちが到着するとそれを次々と突撃させ、猛攻撃を続けたのだ。


 人類軍はそれまでと同じ様に必死に防戦を続けたが、しかし、これまでの戦いにより、ウルチモ城塞の堀は数か所で完全に埋め立てられており、そこから侵入した魔物たちが城壁にとりつくことをとうとう許してしまった。


 ウルチモ城塞の城壁は高く、分厚く、頑丈な上にファンシェの鏡によって守られているから、魔物たちにどんなに激しく攻撃されても容易には傷つかなかった。

 魔王軍は城壁の破壊が困難であることを理解すると、新たな魔物たちを戦いに投入した。


 翼のある魔物たちに、空からウルチモ城塞を攻撃させたのだ。


 無数の、異形の怪物たちが空から城壁へと殺到し、城壁を守る人類軍を次々と攻撃した。

 人類側も、複数の矢を連続発射することができる機械式の弓などで飛来する魔物たちを迎え撃ったが、翼のある魔物たちは素早く、損害を出しながらも城壁へと接近した。


 魔物たちの鋭い爪に切り裂かれ、空から魔法で攻撃され、ある者は悲鳴を上げながら魔物に空高く連れ去られ、そこから地面に落とされて殺された。

空からの攻撃で、人類側にも被害が続出した。

 ウルチモ城塞にはファンシェの鏡の守りがあったが、その懐まで接近されてしまうと、魔物たちの攻撃を跳ね返す力は十分に働かない様だった。


 この状況を見たオプスティナド4世は、ただちに予備兵力として温存していた「ネメシス隊」を戦線へと投入した。


 ネメシス隊はオプスティナド4世がアロガンシア王国の国王となってから編成を開始した魔術師たちの部隊で、諸王国の中では有名な存在だった。

 ネメシス隊は空を縦横に駆け巡り、上空から弓や魔法で地上の敵を攻撃し、人間同士の戦争で大きな力を発揮し、オプスティナド4世の勇名をとどろかせた部隊だった。


 今回の戦いでも、ネメシス隊は威力を発揮した。

 ネメシス隊の魔術師たちは常に2人で1組の編隊を組んで空中戦を実施し、互いに連携することなく自身の能力に頼って戦っていた魔物たちを次々と撃破していった。


 中でも、ドラゴンと呼ばれる巨大な魔物を撃墜した姿は、圧巻だった。


 ドラゴンは、「神々の乗り物」として知られる、神聖な生き物だった。

 その存在は人間たちの間では信仰の対象となったりもするほどだ。

 同時に、暗黒神テネブラエにくみするドラゴンは、「ダークドラゴン」と呼ばれ、人々から強く恐れられている。


 そのダークドラゴンの1頭を、ネメシス隊の複数の魔術師たちが連携して攻撃した。

 ドラゴンは強靭なうろこによって守られており、魔法や弓による攻撃もほとんど受け付けなかったが、勇敢な魔術師の1人がドラゴンの逆鱗と呼ばれる弱点の部分に矢を打ち込んだことで、形勢が決まった。


 ドラゴンが体勢を崩した瞬間を狙い、ネメシス隊の魔術師たちはその翼に集中攻撃を加え、片翼をもぎ取った。

 翼を失ったドラゴンはそのまま、魔物たちがひしめいていた頭上へと頭から落下して即死しした。


 それを合図としたかのように、魔物たちの攻撃が止んだ。

 総攻撃を加えても容易にはウルチモ城塞を陥落させられないと理解した魔物たちは、態勢を立て直すために引き下がったのだ。


 城壁の守りについていた兵士たちが、退却していく魔物たちの姿を見て歓声をあげる。

 総攻撃によって少なくない被害が生じてはいたものの、それでも、人類側は耐え抜いたのだ。


 自分たちは、戦える。

 勝利の興奮と、新しく芽生えたその自身が、兵士たちの表情を明るくしていた。


 後には、無数の魔物たちの死体だけが残された。


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