85.黒鯨①
85.黒鯨①
「――ならば、話は速い。道を開ける」
「準備は出来ているの?」
「ああ、今完成した――なんの関係もない場所から地点と地点を結び合わせるのは、力の弛みになる。バハムットを拘束できる時間は、六秒だ」
「十分。私は、その時間でバハムットを殺す」
雨道の目には、疑いは無い。テレスの実力を信じていた。
バハムットは更なる破壊行動を始めていた。目標は白蘭館から国会図書館へ。
その移動経路に、大量の流星を振りまく。爆炎が辺りを包みこみ、アブホースの眷属を吹き飛ばしていく。もはやこのバハムット、自身の親から生まれた子でもあろうとお構いなしの破壊行動だった。――それだけ、バハムットは眷属中でも恐ろしい存在なのだ。
加えて、バハムットは死ににくい体をしている。いわゆる、不死に近い体だ。『ウボ・サスラ』のように心臓を突くか、猫目のように不死性と不死性を対峙させることでないと、バハムットの消滅は望めない。
だが、二人の考えはその二つでは無い。
「バハムットを殺す……というのは無理な話だ。しかし、再び“封印”することはできる。あれは、今この時点でも白蘭式を背負ったまま、動いているからだ。つまり、あのまま行動を封じてしまえば……後は白蘭式の発動と同時にバハムットの命は尽きる」
「つまり……バハムットの移動手段を殺せばいい。そして、あの大口を塞ぐ」
「――後は、愛路橋の二人次第……」
どちらにせよ、これ以上国会図書館に近づけば、メリーと花音の危機に繋がる。花音が殺されれば、この作戦は全て水の泡となるのだ。
「―――では、始めようか。この戦いは俺達で解決する―――『八柱陣』――」
雨道の合図に応じて、テレスの黄金の柱がバハムットへ向かう。
テレスは黄金の柱を呼び出した瞬間、空へと飛んだ。それは、どこかで見た魔術歩法だ。一歩で大きく跳躍するテレスに、怪物達は取り囲む。自ら群れへと突撃してきた得物の逃す必要も無い。取り囲み、質量にものを言わせた多勢をもって、テレスを完全包囲する。逃げ道はない。が、それをこじ開けるのがテレスの武器だった。黄金の薙刀が敵の体を一刀両断した。囲まれる瞬間に第二歩が踏み出され、刹那の間に包囲網から逃げ出す。さらに、さらにテレスは上へと登っていた。
その間に展開される魔術は雨道の金縛術。テレスの黄金柱の力も加わり、先に繰り出した『六角結界』を上回る、高位の捕縛法を完成させることができた。八つの柱はバハムットの羽目がけて伸びる。その先端は尖っており、羽を貫くには十分な鋭利さだ。勢い良く地中から飛び出した杭は、まっすぐバハムットの羽へと到達し――貫いた!




