57.緑潜眼①
57.緑潜眼①
それは原始だった。黄金色の野原と、銀色に輝く恒星の天蓋が一面に現れ、その只中を鳥の腐乱死体が泳いでいた。黄金の原っぱにそれは羽を休めに降り立ち、緑色の水を啜って、再び飛び去った。
歩き続けると、大きな湖畔に出くわした。湖の色はなんともいえない、宇宙の色。
『宙色の怪物』。そんな単語を頭の中で無意識に反芻していた。
やがて、湖がぬっと動いた。形はタコを思わせる。丸い頭が自分よりも大きく、高くなると、湖に飛沫が巻き起こる。大量の触手だ。それは首を引っ掴んで折ってしまうには十分な強健さを思わせる。人間であれば、この触手にかかる前に、発狂しているだろう。
顔とは思えないような顔が、ロバートを睨む。
そして、理解しがたい声でロバートに話しかけてきた。
『アルデバランにようこそ。我が堕神点よ。この地に足を踏み入れた理由を申せよ』
「―――――」ロバートは唖然としたまま、口が開きっぱなしだ。
『情けない人間よ。脆弱な人間よ。我が問いに答えよ』
「―――僕に、僕に、お前の力を見せてくれ……」
『我が狂気を所望するというのか。愚かな人間なり。だが、よかろう』
一本の触手がロバートに向かって伸びる。
『我が手を取れ。堕神点。お前の望むものはお前自身が探すがよい。我が蓄えし宙の記憶へと、さあ、我が手を取れ』
「―――――ッ!」
ロバートは一瞬躊躇って、その触腕を握った!
爆発的な衝撃が、ロバートの脳を突き刺した。




