53.戦力
53.戦力
作戦会議の参加率は良くない。
ロバートとサラは修行中で参加できないし、白蘭館の雨道と夢見野はすぐにどこかへ蒸発してしまう。夢見野は“いつもの場所”で、雨道は外に出てうろつく怪物と対決しているらしい。
メンバーは愛路橋姉妹、黒兎、メリーの四名になる。メリーは言いたいことを全てウェンディに任せているらしく、ウェンディはメリーの代弁としてこの席にいた。テレスは部屋の隅でパズルをして遊んでいて、話なんて一言も聞いていない。
「『ウボ・サスラ』の進行経路は以前、スカイツリー上空。移動することはなさそうですよ。花音ちゃん」
「ええ――メリー様、貴方はどうお考えですか?」
メリーが頷くと、ウェンディが流暢に話した。
「あの場所に居る『ウボ・サスラ』は確実にアブホース眷属の中でも強力な部類に入ります。『トーヴハァ』と同等、それ以上の力を持っています」
ウェンディはさらに、手にもった資料を掲げた。白蘭館が作っていた、封印した怪物の情報だ。その中をめくり、怪物の名前を口にしていく。
「アブホースは『ウボ・サスラ』『トーヴハァ』の他のも強力な怪物を産み出しています。それは、この本を作った方々なら、すぐ分かることのはずです。千葉を徘徊する『剣豪将門』。北海道を一夜で破壊した『バハムット』。大阪の『ムラサキカガミ』。熊本の『万病の壺〈アルハッド〉』など、日本にまつわるものから、アブホースの原体が顔を出すことも有ります。日本を基板にした『剣豪将門』や『ムラサキカガミ』ならまだしも、『バハムット』や『アルハッド』、『トーヴハァ』や『ウボ・サスラ』は、アブホースに近い特性を備えた、強力な個体です。恐らく、その強さの比は、この本に記されている通りです」
『剣豪将門』が封印直後までに及ぼした影響は、千葉の人間、魔術師を百人ほど殺した程度にとどまった。対して『バハムット』と『アルハッド』はこの比ではない。
『バハムット』は北海道を一息で吹き飛ばした。その一撃によって北海道の人工は百分の一に減ったとも言われるほどの大損害。札幌を中心とした都心部が壊滅した、恐ろしい破壊力をもった怪物である。
『アルハッド』は病魔を操る怪物。その影響は九州全域を襲い、バハムット以上の人間を苦しめたと推測されている。『アルハッド』の力を受けた人間はアブホースの怪物化が加速する。九州は、日本全土で最も速くアブホース眷属が住みやすい場所になったと言われる。
確かに、この二体の怪物を倒すのに被害は甚大なものがあった。
この二つの怪物を倒すのに、二人の同志が命を散らしたのだから。
愛路橋花音は、ただただ目を伏せるしかなかった。
「彼らの死は無駄にはしません。そして『ウボ・サスラ』を相手することにも、出し惜しみは一切無しで行きたいと思っています」
「正しい判断です」
ウェンディが続ける。
「その二体の怪物達と同じ力を持った『ウボ・サスラ』。これを倒すのに、風歌さんと雨道さんだけでは足りない……そこで、お母さまが提案するのは、私と、サラ、ロバートさんの三人を加えることです」
「――それが、そちらの条件ですか?」
「最低限、必要なこと。ですよ」
花音は危険顧みず立ち向かう戦士の事には、ことさら恐怖を抱いている。四人の犠牲者も、自分が出したのでは無いだろうか? 作戦の不備は自分の所為では無いのだろうか……ネガティブな思考に走る度に風歌の励ましを受ける花音。
それが唯一、リーダーの弱さだった。
「お姉様。心配はいりません。私たちはもとより、この生命を捧げています。どうか、命令に躊躇わないよう……」
「――ええ。そうね。その通りよ……」
花音の動悸を宥めるように風歌が花音に近づく。
「話を続けましょう。メリー様」
「では、次にアブホースをどうするか。ですね」




