25.白蘭館
25.白蘭館
日本の要となる大都市東京で実際に起こった物語。
それは堕神が起きて数年のこと。日本の魔術師集団『白蘭館』の一員にして、創始者『愛路橋 花音』と、その妹『愛路橋 風歌』が、この世界に干渉して悪事を働く『暗黒のアブホース』の居場所を突き止めたことが発端となる。
血肉すら持たなくなった昆虫人間の蔓延る『ナゴヤ』から、この二人は『電波』を発信した。魔術師という波長の違う人間の元に届くこのシグナルは、七人の戦士を集めた。
アブホースの堕神時とネクロノミコンの予言で危険性を感じ取った魔術師は国外に逃亡し、隠れてしまったにも関わらず、七人もの魔術師を集めることが出来たのは、愛路橋姉妹にとって光明だった。
東京の『アリス幻視会』から『夢海野 絵本 (ゆめみの えほん)』。
京都の『神縛連合』から『雨道 蔵光 (うどう くらみつ)』。
北海道の『クトロンカムイ』から『黒兎 みなみ (くろう みなみ)』。
沖縄の『今昔精霊信仰会』から『穂群 緋影 (ほむら ひかげ)』。
大阪の『クワトロ・ロッジ』から『境 詩文 (さかい うたふみ)』。
神奈川の『古妖獣人研』から『猫目 慧 (ねこめ けい)』。
名古屋の『聖日本教会』から『来栖川 百夏 (くるすがわ ももか)』
この七人を加えて、『暗黒のアブホース』に対抗するべく東京に対策組織を結成。
『白蘭館』指示の下、日本を取り戻すために立ち上がる。
そして、五百年が経過した今、生き残ったのは五人。年を取ることで劣化する肉体への改善には努め、寿命で死ぬことはなかった。それでも、実に仲間の半分が死んでしまった。殺されたと言っても正しい。
残ったメンバーは、『白蘭館』の愛路橋両名。『アリス幻視会』の夢海野、『神縛連合』の雨道、『クトロンカムイ』の黒兎の計五名。他の魔術師達は『暗黒のアブホース』の手にかかって死亡した。
――だが、無駄な五百年では無かった。
愛路橋花音が日本各地に仕組んだ反魂の『白蘭式』は起動直前である。
だが、その契機はなかなか訪れなかった。五人の中でも最も力強い雨道が先陣を切って魔都と化した東京都心部へ足を踏み入れたところで、スカイツリーに巣食う『アブホース眷属』に止められてしまう。
予言能力を宿すアリス幻視会の夢海野でさえ、アブホース眷属の対処方法を見出すことは出来なかった。無論、アブホース本体も同様である。
愛路橋花音の『白蘭式』は全国に張り巡らせたアブホース眷属を連絡点に、直接アブホースを葬る術式。その式を完成させる為には、アブホール眷属を破壊し、日本の霊脈に取り込むこと。ちょうど、アブホース眷属は残り一体の容量で十分となる。
東京に住まうアブホース眷属を討つと同時に『白蘭式』の完成。さらに、そのまま都心部に入り込み直接アブホースを管理している『国会図書館』を破壊することで、かつての日本を取り戻す。という計画。
五百年という膨大な時間を掛けて、全国で行われた“準備”。
失敗は許されない。
愛路橋花音率いる『白蘭館』とその他魔術協会は、今まさに、東京への進行を目前に控え、焦燥と渇望で自我を失うような憔悴を味わっていた。中でも愛路橋花音は、一睡すらできぬ状況であった。前回、千葉で破壊したアブホース眷属からだとすれば、およそ一年と半月ほど、眠ることすら満足にできない、巨大なプレッシャーを抱えていた。
現在、この『白蘭館』は侵攻と同時に歩を進め、東京の一角『新宿』まで到達していた。そこで、路線を辿って現れた、西洋の魔術師と出会うことになる……。




