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第102話
時計が十一時を打った。窓から見える外は真っ暗で、木の枝すら見えない。目が冴えてしまった彩羽は、もう一つ気になることを仲村に訊いてみたくなった。
「白い髪の妖精?」
「そんな言い伝えはありますか」
そう尋ねた彩羽の顔を見て、仲村は小さく笑った。
「それなら、あの人に訊いてみたらどうかな」
視線の先に顔を向けた彩羽は息を呑んだ。ドアの上枠をくぐるように頭を下げ、のっそりと入ってきたのは、あの日彩羽が双眼鏡の中に見た男だった。厳つい風貌、鋭い眼差し。そして、実物はもっと大きく見えた。
白衣姿のその男は仲村に軽く会釈した後、涼太に向かい「よう」と手を上げた。
「ドクター」
涼太がそう声を掛けた。




