入り乱れ咲く舞踏会
はい。シャーロット、15歳の誕生日です。
早くないから。長かったよ?
高校生に人生もう1回って結構酷だと思うんだ。
私17+15で精神年齢32だよー。
でも確かにここ数年は静かだったんだよねぇ。
アデルが家出してきたり、2人が魔王殿下暗殺を実行しようとしたり、シオンが私を虐めるために婚約者にしようとしたり。
そんな事しかなかったです。
今日は私が主役なので、んな事は忘れた。
今年は来年から学園生活な事もあり、特別なお誕生日パーティなのだ。
舞踏会形式で夜に行われるのだ!
初めてだよ!しかも最後は仮面舞踏会らしいよ!
少々興奮気味の本日の私は、黒のイブニングドレス。
しかも大胆に露出させたセクシーなもの。
そして、飾りには翡翠を使っている。
これは15歳ならではだよね。
流石の美少女。って言うかもう美女。
成長した私の色香…は何故か漂わないけど、似合っている。
因みにカイトは白銀のスーツに金色のネクタイ。
ピカピカスタイルなので、抑え目に。
アイリスは紫の露出控えめのドレスに黒のアクセサリー。
もう分かるかな?
私達は友情の記念にそれぞれの髪や瞳の色の物を身につけたのだ。
少々渋られたが了承してくれた。
それよりカイト&アイリス&お父様のそんなに露出するな攻撃の方が説得大変だった。
アンタらは私の親か。
いや1名そうなんだけど。
「2人ともー!行こうかっ」
「はい、シャーロット様。
参加客の情報は分かってますのでご安心ください。
野蛮な輩が、麗しいシャーロット様に話しかけるなんて事はありませんから。
権力なんて握り潰して喰わせて殺りますわ」
「シャーロットの悪い虫対策も万全。
王子すら近づかせるものか…!」
…2人がこんな殺気立っているのは、15という齢が大抵婚約者を決める時期だと聞いたから。
このパーティで発表する事が多いらしい。
私の婚約者候補はアデルとシオン。
ツートップと豪華な顔ぶれだ。
アデルは私と仲が良いのと元々同い年で適当だと言われていたし。
シオンは全力で私を狩りにきてる。
そんなこんなで2人は特に王子や権力に敏感になってるのだ。
私自身はそんな興味無いんだけどね。
だがシオンは全力で拒否する。
お父様はカイトにシルヴァ家を継がせて、私を嫁にし、家族で暮らす手もあるって言ってた。
でもそれだとアイリスが可愛そうじゃん?
それにほら、カイトは幼馴染だし。
そう言った時は珍しくアイリスがカイトを励ましてたなぁ。
カイトいわく鈍感は罪らしいよ。
気を付けよう!
シャラシャラ、カツン。
揺れるのは翡翠の飾り。
鳴るのは黒のハイヒール。
私達が会場入りすると、人々の目が集まる。
主役だから当然なんだけど、他のとこ参加してもこんな感じだったりする。
まぁ、私もアイリスもめちゃくちゃ美少女だし、カイトもイケメンだからね!
注目を浴びるのは慣れてます。
通り名としては、私が『高嶺の完璧令嬢』で、アイリスが『金色の乙女』、カイトが『漆黒騎士』かな。
カイトの誰考えたんだろうね。
絶対厨二病じゃん、重度の。
「うわぁ、夜ってやっぱ雰囲気変わるねっ…」
会場は何時もの家のなんだけど、夜ってだけで全然雰囲気が違う。
窓から見える、シルヴァ家自慢の花園も、月光を浴びて光り輝いている。
ついでに用意してあるデザートも美味しそうだ。
思わずニマニマしてしまう、私は甘党なのだ。
ねっ!っと2人を振り返ると…何故か悶えていた。
おい、どうした。
「シャーロット…気にしないでいい。
可愛い過ぎるだけ…」
「わ、私も大丈夫ですわ。
直ぐに当主様に、シャーロット様専用絵師を配属するように頼んで参りますから!」
「!それ、いいね…。
他の人の目に触れないように、でも俺達が見れるように、四六時中見張ってもらう…」
「中々に気が合いますわね…ですが、その絵師がシャーロット様に害を与えないかが心配ですわ!
シャーロット様の表情を間近で見られるのなんて、狡すぎますし…」
「確かに、シャーロットにこれ以上近寄る人、増やしたくない…俺が覚える」
「カイト、貴方に今だけ感謝しますわ」
「俺もお前の頭の良さだけは嫌いじゃない」
ガっと熱い握手を交わす2人。
何やってんのか訳わかんないので、放置。
これは、ここ数年で学んだことだ。
カイトとアイリスは、偶に2人の世界に入ってしまう。
お姉ちゃん、何処で教育間違えたかなぁ。
さて、2人は置いておいて、早速デザートのエリアへ。
イチゴのやつも美味しそうだし、チョコのヤツも可愛らしい。
どうしよう、迷うぞコレ。
悩んでいると、後ろから声をかけられた。
「シャーロット嬢、お久しぶりです。
此方など、如何ですか?」
彼が手に持つのは、ショコラズコット。
上に薄い、口に含むと蕩けるようなチョコアイスが乗っていて、ホイップが贅沢に使用された1品。
ついでにイチゴも添えられている。
滅茶苦茶に美味しそうだ。
「ソレ頂戴!!」
教えてくれた彼…アデルに思いっきり笑顔でタックルする。
仕方ないでしょ、甘いは正義だもん。
ちなみにアデルは、家出してきた際に素で説教して以来、この口調で良いと言われている。
全体的に白っぽいスーツを可愛らしく着こなしたアデルは、カイトとは大違いの癒しオーラを纏っていた。
金髪に金の瞳のリアル王子様は、相変わらずのダメ王子だけど、1部の令嬢からは、子犬王子と大人気なのだ。
絶対その令嬢サディストだから逃げるんだぞ!
「お変わりないようですね…!」
私の手を握り、若干瞳に涙を浮かべながら、そう話すアデル。
いやお前1週間前にあったじゃん。
流石に1週間じゃ変わらないから。
「ええ、アデル様。
背後の殺気にお気をつけて」
ふわり、と優雅にスカートを摘み、一礼する。
よく分かってないアデルにふふ、と微笑むと、後ろを指さした。
当然ソコには、カイトとアイリス。
サーっと青ざめるアデルに心の中でエールを送りつつ、私は逃げさせて貰います。
これは戦略的撤退である!!
王子ですら近付けさせないって言ってたもんなぁ。
なんか見張られてるって思ってたけど、そのせいか。
私の幼馴染と親友が、ヤンデレストーカー化している件について、どうしたらいいか教えてください。
アイリスは腹黒系情報戦が得意!
苦手なのは肉弾戦だぞ!
カイトはポテンシャル高過ぎて闘いが得意だぞ!
苦手なのは完璧な作戦!
〜置いてかれた2人〜
「それでは、シャーロット様を私達が365日24時間見張ってると言うことで宜しくて?」
「うん、下手な人に任せるよりそっちのがいい。
シャーロットの魅力…絵なんかじゃ表せない」
「確かにそうですわね…!
!私の下僕から報告が来ましたわ。
虫掃除に行きますわよ、カイト」
「どれ?」
「ダメ王子ですわ」
「ん、アイツか…潰そう」




