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後始末4

あまり盛り上がりませんが、書ける間に……

「ポコ様、大丈夫ですかな?」

「あ、はい。少し考え込んでしまったみたいですね」


 どうやら少しキュドに心配かけてしまったようだ。

 そこそこ長い時間黙り込んでおり、対処方法が見付からずに悩んでいる思ったのだろう。


 二人からの話から思い当たる対処法は幾つかある。

 取り敢えずは交渉。

 ダメなら指輪の破壊。

 それでもダメならその場で考える。

 多少荒っぽくなっても仕方がないと思う。

 

「今からでも幾つかの対処方法を試してみますかね」

「ほう!? 呪いには詳しくないのでは?」

「解呪の魔法は使えますが、今回は状況からも呪いとは違うかと……何とかなるとは思いますが……」

「おおお……流石ポコ様ですじゃ……是非とも後でご教授頂きたい……」


 イエイエ、全て受け売りです。

 むしろボクが色々と教えて貰いたいです。


 取り敢えずカーズがどこまで侵食されているか分からない。

 急いだ方が良いとは思うが、もし最悪の場合だと暴れだして寮外に出てしまうことも考えられる。


 ボクは壁にかけてある古いローブを手に取り、仮面を懐に忍ばせる。


 え? 何でローブが必要かって?

 色のない制服の背中を見られたらバレバレですから!


 準備が整い皆でゴールド寮へと向かおうとするが、アエーラが扉に視線を向けており、何かに気が付いたようだ。


「誰か近づいてきますね」


 何度かこんな場面に出くわしたような……

 大抵はパーマーが「大変だよポコ!」なんて駆け込んできて、赤雷にぶつかってアイテテテなんて。


 そんなことを考えていたが、いつもの様なドタドタと言う足音ではない。

 もっと軽いトトトッと言った足音がボクの部屋の前に辿り着く。

 コンコンコンッと軽いノックの音が部屋に響く。


「ポコさん? 此方にいますか?」

「キリエラ先輩?」


 赤雷がドアを開けると、キリエラは少し焦った表情で部屋の前に立っていた。


「良かったです。皆さん此方にお揃いだったんですねー」

「あれー? キリエラはカーズに関わりたく無かったんじゃないの?」


 ピピルがボクの頭の上でひょこりと顔をだす。


「勿論そうなんですが、皆さんにお伝えしなければいけないことがありまして……」

「何かあったのかや?」


 カーズの様子に異変でもあったのかと、少し不安になってしまう。


「先程、ブラッドル侯爵が学園に到着しました」

「なんですと! それは聞いてた話と違いますぞ!?」


 キュドが驚きの声をあげる。


「息子に合うのに何故許可がいるのだとゴールド寮へ……」


 これは非常にまずい。

 最悪のタイミングである。


 先程までなら理由を付けて、カーズに無理やり会うことも出来たはず。

 だけど今はボクがゴールド寮に入るのさえ厳しくなっただろう。


「そうか。キースの事が頭から抜けてましたね……」


 そもそもブラッドル侯爵が早急に来園すると言ったのは何故か。

 それはキースからカーズの現状を聞いたのであろう。

 無理やりにでも連れ戻しに来たのか、それとも治療を施しに来たのか。原因が指輪だと分かっている可能性は高いので、何かしらの準備はしているはず。


「キリエラ先輩。ブラッドル侯爵はおひとりで?」

「執事と祭服を着た方を連れていました」

「では神父か牧師辺りですかのう? 原因は理解しているようですな」


 しかし、呪いだと思っているのであれば解決はできない。


【フム、余計な事をせんと良いがな】


 え? どういうこと?


『解呪を行う場合、対象者を鎮静させてから行う事が多いのです。しかし現状でカーズの意識がなくなれば、取り付いた者が表面に出てくる可能性が有ります』


 えっ!?

 それって逆効果ってこと!?


 というか、キュドでさえ呪いの類いだと思っていたわけで。

 普通、契約条件や対価なんて事に気付くはずがないんだよね。

 そうなると単に事態が悪化するだけに……


 これは不測の事態に備えて、皆にある程度説明しておくべきかもしれない。


「むしろ悪い方向に進むかもしれません……」

「フム……と言いますと?」


 キュドは少し分かりかねぬと言った反応である。


「召喚された黒い蛇……元が何かは分かりませんが、指輪を介してカーズを侵食しているのだと思います。もし下手な事をすると表に出てくる恐れが……」

「それって……カーズが乗っ取られるってことですか……?」


 キリエラ先輩が固唾をのんで聞き返し、ボクは無言で頷ずいた。



 最悪の事態も想定できる今、皆を連れて急ぎゴールド寮へと向かう事になる

 走りながらに出来る事を考えて告げる。


「キュドさんとピピルは一度カーズの部屋へ!」

「了解しましたじゃ!」

「もし侯爵が何もしていなければ、呪いでは無い可能性を伝えてください。ピピルは中に入ってボク……というかあの御方が戻すと言ってあげて!」

「なるほどね! りょーかい!」


 ピピルは理解したとばかりにボクの頭の上で敬礼する。


「キリエラ先輩はボクと一緒に寮の裏手で様子を見ましょう」

「ハイ! 分かりました!」


 キリエラ先輩には無理をさせるわけにはいかない。

 変なところを見られるのは困るが、ボクの傍にいてもらうのが一番安全だと思う。


「皆さんは寮のホールで待機してもらえますか? 不測の事態の対応をお願いします」

「心得た。何かあった時には被害が出ぬよう引き留めよう」


アエーラは真剣な表情で返事をする。

頼まれている内容を理解してくれているようだ。


「クフフ、何だかワクワクするのぅ」

「姫様……まだ何か起こると決まったわけではありませんよ」


 銀鈴はと言うと、走る気はまったく無く、赤雷に担がれて肩の上に座っている。扇子の隙間から見える口元は、少し笑みを浮かべているようにも見えた。


 何かとストレスでも溜まっていたのかもしれない……

 まあ赤雷がいてくれれば平気だとは思うけど。


 ゴールド寮が見えてくると、何やら入口に人だかりができている。ザワザワと騒々しく、生徒だけでなく先生も集まっていた。


「これは一体何事ですかな?」


 キュドが寮長でもあるマルグリッド先生に話しかける。


「マイオール先生か、ブラッドル侯爵がカーズを連れ戻すと言って突然に来訪したのだ」


 マルグリッド先生はいつもよりも数段険しい顔で階上へと視線を向ける。


「フム……様子を見てきても良いですかな?」

「構わない。まったく聞く耳を持たない様子だったが……」

「後々報告しますじゃ。取り敢えず集まってる生徒を解散せてくだされ」


 マルグリット先生はキュドの言葉に頷き、生徒たちに早々に解散するように言い付ける。

 ゴールドに住む学生以外は渋々ながらも立ち去って行った。


 キュドが小走りで階段を登り、銀鈴たちが談話室へと向かう。皆の行動を確認した後、ボクは寮の裏手へ周ろうとする。


「おや? ポコも来てたのか」


 突然に声をかけられ、驚きながら振り向くと、フィリオが笑いながら声をかけてくる。


「そっか、フィリオはゴールドだったもんね」

「ハハハ、なんだ忘れてたのか? まあ何かと忙しそうだしな」


 何ともタイミングが悪い時にフィリオに見つかってしまったものである。

 フィリオと共にいてはボクは何もできないし、このまま寮に戻られるのもボクとしては心配である。


「(キリエラ先輩。フィリオを寮から遠退けてもらえませんか……?)」

「(え~、でもまあ仕方ないですね~。後でしっかりと話を聞かせてくださいよ~)」


 キリエラ先輩に耳打ちするように話をすると、フィリオは不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「フィリオ君、この間はどうもです~」

「あ、ああ。ポコと仲良くしてくれてるみたいでありがたいよ」


 フィリオはキリエラに話しかけられると、何だか苦虫を噛み潰したような表情である。

キリエラの事が苦手なのだろうか? そんな話は聞いた覚えがないのだが。


「丁度良かったこの間の続きを聞きたいのですが~、これから良いですか? 良いですよね~?」

「えーと、そうだ。これから食事に行こうかと……」

「それは丁度良いですね~。私もお供しますよ~」

「え、あ……」


 フィリオはキリエラに腕を掴まれ、引きずるように食堂へと連れて行かれる。

 その表情は苦々しく、逃げたくて仕方がないという気持ちが丸見えである。


 いったい何があったのだろうか……

 取り敢えずフィリオに向かって拝んでおいた。


 二人の事を尻目にボクは裏手へとまわり、人がいないことを確認してローブと仮面を装着する。

 これで何かあったとしてもボクとは気付かれないだろう。


 状況を把握するために≪サーチ≫を唱え、寮内の様子を確認する。


 丁度食事時であり、寮内は比較的人が少ない。

 最上階のカーズの部屋へと意識を向けて、中の様子を調査する。


 何とも広い部屋であり、軽く見繕ってもボクの部屋の20倍はあるだろう。

 中には既に人が入っており、奥のベットで横になっているカーズの姿、その横に立つ二人の神父風の男。

 扉の外には少し華奢な男性が見張りの様に立っている。

 部屋の中には体格の良い男性と、背の低い男性の姿が、恐らくはブラッドル侯爵とキースだと思われる。


 キュドはまだ階段を登っており、最上階にはもう少しかかる。

 しかもこの状況では中に入れない可能性も考えられる。


 そして事態は悪い方へと動く。


 神父風の男がベットに横たわっているカーズに、手を向けた時である。

 カーズが苦しむように身じろぎし、そのままベッドから落ちると、暴れるかのように転げ回っていた。

 部屋にいる4人は明らかに動揺している様子。


 キュドがようやく最上階へとたどり着いたようだが、部屋に入ろうとするも扉の前の男性に止められているようだった。


 カーズがゆっくりと立ち上がり、ゆらゆらと身体を揺らしている。


 明らかに異常な様子。


 これは流石に不味いような……


 ボクは最大限に凝縮したファルナを集中し、身体強化魔法を次々と唱え始める。

≪アクセル≫、≪ストレングス≫、≪オールアップ≫

 そして自分の身を守るための魔法を唱える。

≪デリートアタック≫≪デリートマジック≫


 今できる最高の準備状態。

 もっと色々な魔法を考えておけば良かったと頭をよぎる。

 それは解決してから反省しよう。


 膝を屈伸するように体を動かし、自分の状態を確かめる。


 うん、多分大丈夫。

 ボクは真上にあるカーズの部屋を見上げた。


次回は少し遅くなるかもです

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