卵
時間がとれました!
中々早く書けました!
「相変わらず見事なものだな……」
「流石のお手前! 感服いたしましたぞ!」
赤雷とキュドは、そう口にしながらボクに近づいてくる。
「何やら可愛らしい竜が出来上がったのぅ?」
銀鈴は群がってくる小さな竜をからかって遊んでいるようであった。
「しかし、完全に消せなかったなど初めてではありませぬか?」
キュドは流石に魔法に精通しているだけあり、今回の状況をしっかりと把握しているように思える。
また身体が小さくなりながらも行動を起こせる土の竜に興味があるらしく、まじまじと観察しているようであった。
「相当に強力な魔法ですね。ここまで抵抗を受けたのは初めてですね」
「フム……やはりプントス殿が言っていたとおり、古き竜の魔法……いやはや興味深い」
ボクの言葉を聞いたキュドは、髭をつまみ、小さな土の竜を見ながら考えている様子であった。
「ポコ様、お疲れさまでした」
ガロウがボクの方へと近付き頭を下げると、ガロウの頭の毛皮に埋もれて縮こまっている妖精の姿が確認できた。
「あれあれ! 何々! どうなったの?」
妖精はガロウの声を聞いて状況が変わったことに気付き、頭をあげてキョロキョロとしている。
自分より小さくなった竜を見付けると、フヨフヨと近づいて「何これ! とかげみたいー!」と回りをくるくると飛び回っていた。
「ねえ! ボクに頂戴!」
「む! それは妾が遊んでいたのじゃぞ?」
妖精と銀鈴の言い争いが始まり、赤雷はやれやれと言った様子でその状況を見守っている。
何やらそこなキュドがのそのそと近付き「ワシにも一匹頂けんかのう……?」と聞こえてくる。
丁度3体いるのだから皆で分ければいいんじゃないかな?
あの状態で動き続けていられるのかは知らないけどね……
少しワイワイとした雰囲気の中で、上方よりプントスの声が聞こえてくる。
「いやはや大したものだ。ワシでは相性が悪かったからな」
プントスにそう言われて、なぜ戦わなかったのかに納得する。
土の竜は火の塊を吐いており、木の魔物であるトレントでは相性が良くないとのことだろう。
「ボクも今回は相性が良かっただけなのだと……」
とは言え相性の悪い魔法に出会ったことは無いけれど。
もし消滅魔法が使えなかったら、どう対処するべきかは考えておくべきなのだろう。
「さて何か試したいことがあったんではないか?」
「あ、少し卵に触れせてもらいますね」
卵へと近づこうとすると、土の竜たちがボクに向かってキーキーと叫んでいる様子が伺える。
あの状態でも忠実に命令を守ろうとする姿は健気に感じられた。
妖精が抱えていた一匹の竜をポイッと投げ捨てて、ボクの頭の上を飛び回る。
「そうだ! そうだったね! ねえねえ何するの!?」
「とりあえず試すだけだからね?」
何も起きないことは十分に考えられるので、妖精にはそれだけを伝えた。
卵の正面にまで進み、恐る恐る両手を卵の表面に当てる。
少し……温かい……?
むしろ日影にある分、冷たい感覚が伝わると思ったのだが、洞窟の空気よりも温かいように感じられる。
両手にファルナを集中し、卵に向かって放出する。
流石に1度くらいでは何も変化が見られず、2度、3度と続けざまにファルナを放出するが何も変化は見られない。
うーん……?
やっぱり何も起きないのかなぁ?
『いえ、通常の状態でもその程度のファルナでは反応しないと思いますよ?』
え? この程度じゃ全然ダメだった?
【話を聞いておったのか? 古龍の卵だぞ! 全力で挑まんか!】
あ……なんかすいませんでした……
そ、そうですよね……
そんな凄い竜の卵がこの程度で反応するわけないですよね……
【ウム、わかればよい。最低でも今の10倍は試さんとな】
じゅ……10倍ですか……中々にしんどそうですが……
それにしても相変わらずの上から目線ですね……
後方でボクの様子を見ていた皆から声が聞こえてくる。
「ほれ妾の言ったとおり、温めているんじゃないかの?」
「手を当てているだけにも見えますが……」
銀鈴と赤雷の声が聞こえ、キュドが話に参加する。
「ファルナを注ぎ込んでおるようですな」
すこし距離があったが、キュドには何をしているかわかったようである。
「ほう? 赤雷や。竜の卵とはそう言ったものなのかや?」
「すいません姫様、私はそう言ったことには疎いもので……」
「なんじゃ、だらしないのう」
キュドが特別詳しいだけであり、赤雷が情けない訳ではない思う。
「キュド殿。ポコ様の行動にはどんな効果が?」
「う~む、竜の存在自体が謎に包まれてますからな……」
ガロウの質問に、キュドも悩みながらに答えていた。
そんな話が聞こえてくるなか、ボクは繰り返しファルナを放出していた。
シロからはまとめて多く放出するよりも、等間隔に放出する方がよいとアドバイスを貰ったが……何がよいのかはサッパリ分からない。
今まで使ったことがない量のファルナを放出し、流石にボクも疲労感を隠せない。
ここまで注ぎ込んで反応が無いとなると、流石に無理だったかもしれない。
そう諦めかけたその時、ぼんやりとした光が卵から放たれ始めた。
「むむ! これは!?」
キュドが卵の変化に大きな声をあげる。
「なんと……」
「わわわ! 生きてたんだね!」
妖精が卵のまわりを飛び回る。プントスは驚いて目を開き、一言発した後は、ただ黙って見守っている様子である。
変化が見られた所で手を止めようとしたのだが……
【まだだ! 今止めてはいかんぞ!】
そう言われて、息を荒らげながらも続ける事になる。
『無理をする必要はないですよ?』
シロはそう言っていたのだが……
──どのくらい経っただろうか?
繰り返しファルナを放出し続け、その度に卵の放つ光は強くなる。まるで心臓が鼓動するかのように自ら明滅し始める。
光が強くなってきたところで、ようやくクロからお許しがでた。
疲労感で一杯であり、恐らくはファルナ切れ寸前といったところなのだろう。
『どうやら無事に孵化することができそうですね』
え!? 何々!
もう孵化するの!?
【クックックッ、相当量のファルナを送り込んだからな】
なんだその笑い……
なんか謀られたような気分になるな。
【通常は何日もかけるからな、疲れて当然。むしろ良く足りたもんだ】
な、なんだとこのやろう!
気を失ってたらどうするつもりだったんだ!
【むしろそのファルナの総量! 誉めてやるぞ!】
お、おう……おりがとうございます?
なんか釈然としないけど……
光の明滅は次第にその間隔を短くする。
そして、ついには目映い光を放ち、ピシピシとひび割れる。
洞窟全体に届く程の輝きに目が眩む。
チカチカとした視界が回復する。
卵があった場所には、光輝く小さな竜が浮かんでいる。
銀色の鱗を持ち、蜥蜴にも似ているが何処と無く気品が漂う顔。
頭頂部には、後方へと延びるような2本の小さな角が見える。
背中を丸めて四本の足を縮め、尻尾を後ろ足の間に収め、頭を胸に付けるようにして丸まっている。
お伽噺でしか聞いたことがない生き物。
それが目の前に、しかも誕生の瞬間に立ち合えたことに感動を覚える。
両手を竜の下に伸ばし、すくうようにして受け止めた。
竜は少しモゾモゾとしながら一瞬目を開き、ボクの方を見つめながら「クァー」と声をあげる。そして再び丸くなって眠ってしまった。
「可愛いーね!」
妖精がボクの肩へと止まり、大きな声をあげる。
その声で我に帰り、皆の方へと振り返る。
皆もボクの方へと近付き、手のひらに収まった竜に物珍しそうな視線を向ける。
「オ、オオ……なんと……」
キュドは声を震わせ、感動のあまりに涙が頬を伝っている。
ガロウはフンフンと臭いを嗅いでいた。
「これが竜の赤子かえ? 初めて見るのう」
銀鈴はいつもの調子で、竜を指でツンツンとつついており「姫様、お止めください」と赤雷に注意されていた。
興奮冷めやらぬなかではあるが、周囲の様子が少しおかしい。
ザワザワとした木々の擦れる音が、そこかしこから聞こえ、上方から生き物の気配が感じられる。
「何やら……周囲が騒がしいですね」
ガロウは上空を仰ぐようにして、クンクンと臭いを嗅いでいる。
赤雷は銀鈴を庇うように構えをとり、周囲を警戒している様子だ。
ふいに周囲をキラキラとした光が無数に舞う。
一気に木々のざわめきが強くなり、鳥がバサバサと飛び回る気配が感じられる。
「なんじゃ? 何が起きとるのかや?」
銀鈴がキョロキョロと周囲を見渡している。
「大丈夫、ワシが呼んだ者たちだ」
今まで黙ったいたプントスが口を開く。
呼んだということからも、ただ黙っていたのではなく、何らかの手段で連絡をとっていたのだろう。
周囲のざわめきが最大にまで高まると、木の枝が次々に分かれてトレント達が顔を覗かせる。
トレントの枝にはハーピー達が止まり、次々とその数を増やしていく。
先程まで宙を舞っていた光も落ち着きをみせ、その内の1つがフヨフヨとボクの方へと近づいてきた。
「あ! 長老様! 長老様だよ!」
ボクの肩に止まっている妖精がそう声を上げる。
と言うことは、無数に舞っていた光はすべて妖精なのであろう。
先の垂れた緑のとんがり帽子をかぶり、緑の服に身を包んだ小さな白髪の年老いた妖精。
「お初にお目にかかります……拝見させて頂いてもよろしいでしょうか?」
ボクに断りを得る必要はないと思うのだか……
こくりと頷き、両手の中身を見えるように向ける。
「オオ……何と神々しい……」
手の中の竜を確認し、ボクの目の前で深々とお辞儀をする。
「まさかここまでとはな……ワタシに打ち勝っただけはある」
聞き覚えのある声に顔を向ける。アエーラと呼ばれていたハーピーがプントスの枝に止まっていた。
「あれ? 何でここに?」
「それについては後で話そう。それよりもこの状況をわかっているのか?」
ボクの近くに降り立ち、そんな事を言ってくる。
この状況? どう言うことであろうか?
多くの魔物が集まってきたこと? 竜が産まれたこと?
悪いことをした訳じゃないから襲われる訳でもないだろうし……
少し考えていると、プントスが口を開く。
「竜が産まれたということは、守りの役目をおった種族が開放されたと言うことだ」
あ、なるほど。
ハーピー達は入口を、トレント達は森を、妖精達は管理を任されたって言ってたっけ。
……だけどそれがどうかなるのかな?
自由になれて良かったってことじゃないの?
まだピンときていないボクに、アエーラが詳しく説明してくれた。
何世代もの間、引き継がれてきた役目。
大半の者は忠実に守ってきていたが、この役目が無駄に終わるかもしれないと考える者もいたそうである。
そんな考えを持つものの中には、少なからず外の世界へと出ていきたい思っていた者もおり、アエーラ自身もそんな一人だといっていた。
つまり、忠実に役目を守ってきた者は、自分達のしてきたことが無駄ではなかったことに、そして外に出たいと思ってきた者は自由になれた。
ここに集まった者たちにとって、ボクは感謝してもしきれない恩人になったと言うことである。
プントスがボクらに枝を降ろし、乗るように促す。
ここに集まったもの全員に産まれた竜を示し、ボクたちを紹介したいとのこと。
皆も素直にプントスの枝へとのると、高々と掲げられる。
周囲を見渡すと、数十にも及ぶトレントが森の間から顔を出し、無数のハーピー達が木々に止まっているのが確認できる。
プントスは周りのトレントよりも一回り大きく、全員から見上げられる形となっている。
「皆のもの! トレントの長プントスが告げる! 喜ぶが良い! 我らの悲願がここに成し遂げられた!」
プントスの言葉を聞くや否や、割れんばかりの歓声が沸き起こり、そこらじゅうを妖精と思われる光が飛び回る。
「ハーピーの戦士長アエーラが告げる! 此度のことはここにいるポコ・コロネル! そしてその仲間たちによってなされたことだ!」
アエーラが言葉が終わると、先程よりも更に大きな歓声が洞窟内をこだまする。
【クハハハ! 圧巻であるな!】
クロは、ボク達を見上げて歓声を上げる魔物たちの姿に満足そうな声を上げる。
『これだけ喜んでくれる者達がいるのはうれしい事ですね』
うん、ボクも嬉しく思うな。
キュドはこの場に居合わせたことへの感激で言葉を失っており、赤雷は珍しく「クアハハハ!」と声を出して笑っていた。
ガロウは以外に落ち着いた感じであったが、良く見ると尻尾を大きくバタバタと振っていた。表情には出ていなくとも嬉しく思っているのであろう。
銀鈴は相変わらずであり、歓声を上げる魔物たちをキョロキョロと見回して「これは凄いのぅ」「流石ポコじゃの!」と平常運転である。
それにしても、プントスもアエーラもやっぱりお偉いさんだったんだね。
あぶないあぶない、アエーラになんかあったらこんな雰囲気にはなっていなかったかな……
歓声鳴りやまぬ中で、プントスはボク達を下におろす。
「ポコよ、ここにいる者たちは決してお前達への感謝を忘れないであろう。この先何かあった時には力になることを約束しよう」
「い、いやまあ、たまたま上手くいっただけですから……」
少し照れ臭く、そんな返事しかできなかった。
そんな中で銀鈴がボクに質問してくる。
「してポコよ? その竜はどうするのじゃ?」
「え、ここで世話をしてくれる人がいるならと……」
「なんじゃ? 連れて行かんのかえ?」
え、いや……連れていくと言う選択肢はなかったんだけど……
今は小さいけど相当に大きくなるのだろうし、何より人間の社会では生きづらいと思う……
「銀鈴様、やはりここは任せられるものに預けるのが無難でしょう」
「フム、人の手には余る存在ですからな……」
赤雷とキュドもボクと同じ意見のようである。
「そんなものなのかのぅ?」
銀鈴もただ思い付いたことを口にしただけのようで、素直に納得してくれた。
「プントスさん、この竜のお世話をしてくれる方はいませんか?」
プントスは妖精の長老へと視線を向ける。
妖精の長老はプントスの意図を理解したのか、ボクの方へと近づいてきた。
「その役目、我々にお任せくださいませんか?」
「それはもちろん……でもいいのですか?」
今までここの管理をして、今度は竜の世話まで任される。
妖精の長老がどのような気持ちなのかわからない。
「このような光栄な役目を任せて貰えるのであれば、精一杯に努めさせていただきます」
長老は深々と頭を下げる。光栄と言ってもらえるのであれば何も問題は無いのであろう。
「では長老にお任せします。宜しくお願いしますね」
そう言って竜を差し出すと、長老は数人の妖精たちに竜を運ばせる。
「まあワシらトレントはここから出る気はないからな、何かあれば手伝わせてもらおう」
プントスもそう言ってくれた。
「えー! 今度はお世話なのー!」
肩にのっている妖精が口を尖らせ文句を言っていた。
それにしても何時まで肩にのっているつもりなだろうか……
「これピピル! すいませんポコ様、なにぶんまだ幼いうえ失言を……」
「いえいえ、お世話していただくのはこちらですから」
ピピルと呼ばれた妖精は、長老に怒られたのにも関わらずまだ口を尖らせ、フワフワと何処かに行ってしまった。
「さてと……そろそろボクらも帰らないと……」
帰り道を考えると少しげんなりしてしまうけど……
銀鈴も「もう少し休んでからにせんかや?」なんて言っている。
まあ確かに少し休まないと、ボクのファルナも尽きてしまうかもしれない。
ふと視線を移すとキュドが卵があった場所で、ごそごそと何かをしているようすであった。
「あれ、キュドさん何してるんですか?」
「いえ折角ですのでこれをもって帰ろうかと」
キュドが見せてくれたのは卵の欠片である。
「ここまで来てたいした収穫が無いのも寂しいですからな」
そう言ってせっせと欠片を拾い集めていた。
「そうじゃな! 妾も記念に持って帰ろう!」
キュドの話を聞いて銀鈴も拾い始める。
いいのかなぁ……と思い妖精の長老の方を見ると、笑いながらに「構いませんよ」と言っていた。
そう言われたなら折角なのでボクも何となく拾い集めてしまう。
ガロウもボクのために臭いを嗅ぎながら探し、結構集まったのだけど。なんに使えるのかな……これ……
『それなりの価値はあると思いますよ』
え? そうなの?
『ええ、薬や錬金術、それに防具の材料などとして貴重な材料になるかと』
へー、それはそれは。
お金が無くなっていたので有り難いですね。
まあ……売るのは何だか勿体ない気もするけど。
「ところで帰り道を心配しているようだが、心配いらんぞ」
プントスがそう言うと、アエーラの方を見る。
「うむ、我がここにいるのを不思議に思っていたのであろう?」
確かに先程アエーラがここにいるのことに驚いてしまった。
流石に同じ道のりを進んできたとは思えないし、やはりなにか仕掛けがあるのだろうか?
プントスは更に言葉を続ける。
「我が木の根を残した場所であれば、魔法で移動することができる。その魔法にて大穴まで送ってやろう」
な、なんですと!
そんな便利な魔法が……
「ほう、それは転送魔法のようなものですかな?」
「え、キュドさん転送魔法なんて使えるんですか?」
キュドが口にした言葉に少し驚きながら質問してしまう。
魔法が使えるなら洞窟に入る前に準備しておけば、帰るのが楽なのではと……
「使える事は使えますが……ワシ程度では家に印した魔法陣と転送ポイントを繋ぐのがせいぜいかと……」
ムムム……転送ポイントと繋ぐ……?
良くわからないけどキュドさんでも難しい魔法ってことなのかな……?
『転送魔法については非常に複雑ですからね、少しだけ簡単に説明しましょう』
あ、シロ先生の魔法講義の時間ですね。
シロ先生、宜しくお願い致します。
【うむ、心して聞くが良い】
うん? クロさんには言ってはいませんよ?
『もともと複数人で大掛かりの魔法を使うときに魔方陣を使用している。そうお話したと思います』
うん、結構前にそんなことを聞いたような気がします。
『転送魔法がその典型であり、ファルナの転換だけでなく、対象の変換や座標の指定。非常に大掛かりな構築が必要となります』
うん? とにかく真名が多くて大変だってことだよね?
あ、もしかしてそれって魔法書に書ける大きさじゃないってこと?
『陣の形にもよりますが……一般的な文字の大きさでポコの部屋くらいの大きさになると思います』
あー、それは持ち歩くにはかなり大きいかもね……
『転送距離、転送物質の量によって必要なファルナ量も大幅に変化します、そして座標の指定を誤れば、土や壁などの物質の中に転送されて融合してしまいます』
ヒ、ヒィ……それは怖いですね……
『その為にも指標となる魔方陣が発動されているのが最適です。おそらくキュドの言っていた転送ポイントというのはそう言った場所のことでしょう』
なるほど……
キュドさんは元から準備してある魔方陣から、指標となる魔方陣への転送が出来るってことなのかな。
なんとなくは理解できたような気がします。
『トレントも本能的に同じことを行っているのでしょう』
根を残すってことが転送先の指標となるってことですね。
【クックック、ここからはクロ先生の応用編になるぞ】
あ、はい……
どうぞ……お願いします……
【む、その言い方では……何やら気分がのらんな。止めておくとするか】
クロ先生!
お願い致します!
【フン、分かればよいのだ。実際はな、座標は距離指定だけでも問題ないのだぞ】
え、でもそれだと転送先に何かあったら……
【ウム、その為に幾つかの方法があるわけだ。例えば転送先の空間をあらかじめ魔法で隔離し、確保する方法などがお勧めだな】
おー! なるほど!
あ、じゃあ転送先を消滅してから、その場所に転送するとかでもいいのかな?
【ム! 中々呑み込みが早くなってきたな!】
ありがとうございます!
『とは言え、そのような応用が出来るのは真名を理解できる者だけになります』
ああ……そりゃそうですよね。
そうなるとキュドの家への転送でさえ相当に特別ってことか。
普通は転送ポイントと同士で移動するのが精々ってことかな……?
うーん……勉強にはなりましたが……
使えるようになるには、まだまだ時間がかかりそうですね。
【ウム、もっと精進するとよい】
はい……がんばります。
「準備はよいか?」
頭の中で会話をしている間にも、話は進んでおり、プントスが転送の準備にはいる。
「あ、はい。お願いします」
別れ際に妖精の長老が深々と頭を下げてくる。
「ではポコ様、またこの子にも会いに来て下さい」
「それはもちろん! まあ……時間ができたらですが……」
そう簡単にはここに来れそうに無いと思い、少し語尾を濁してしまった。
「うむ、またここに来たい時には我が根に話しかけるとよい」
プントスのその言葉を最後に視界が暗くなる。
足が地を離れて身体がうねるような奇妙な感覚。再び地面を感じとると、嗅いだことのある鼻を突く臭いを感じとる。
その臭いに思わず鼻を押さえ、目を開いて周りを見渡す。
そこは先程までの綺麗な森と異なり、見覚えのある死体の散乱した洞窟の大穴の底である。
取り敢えず学園に行くまでを早く書きたいかと!
時間の取れるうちに前までの話の修正と、新しい話の更新をしたいと思います。




