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ダンジョン

 冒険者ギルド(出張所)のドアを開けると、カウンターの奥では受付のおばさんが、本を読みながらお茶を飲んでいる姿がみえる。


 部屋の端には申し訳程度の椅子と机が置かれており、壁際には沢山の本がぎっしりと詰まった本棚がいくつも並んでいた。


 カウンターに近づいたところで、おばさんの方から話しかけてくる。


「はいはい、いらっしゃい」


 少し強めのパーマがかかった髪に、小さめの眼鏡をかけた受付のおばさんは、親戚の子供が遊びにきたかのような対応である。


「ダンジョンの事を聞かせて貰えますか?」

「勿論良いですよ。それが仕事のようなものですからね」


 今度はお年寄りが昔話を話す様な口調であるが、慣れた雰囲気で話始めた。


 まず、このギルド出張所。

 なんでこんな所にあるのかと思ったら、ダンジョンについての情報を伝え、また収集する事が役割らしい。

 冒険者が情報を聞きに来るのは勿論だが、旅途中の子供達がダンジョンの話を聞きに来るのは良くあることだそうだ。


 勿論ボクもその一人と思われているのだろう。


 大雑把なダンジョンの定義は魔物が棲んでいること。

 勿論お宝が眠っていることもあれば、何もないこともある。

 お宝は無くとも珍しい素材や鉱石、珍しい魔物がいることも多く、それを目当てに来る冒険者もいるとのことであった。


 ここアルド山脈の山頂付近にあるダンジョンは「アルドの洞窟」と呼ばれ、自然の洞窟からなっている。

 ダンジョンによっては古代文明の遺跡後や、神秘的な力が働く塔などもあるが、ここは比較的自然に作られたと考えられている。


 20年程前から調査が始まったが、自然の洞窟と言うこともあってお宝がほとんど無い。それに洞窟がかなり広く調査自体は進展していないらしい。

 洞窟の構造は何層にも分かれ、深層のフロアはどこまで続いているか、いまだに分かっていない。


 フロアや場所によって住んでいる魔物の大まかな住み分けができているそうだ。

 浅層の地図は出来上がっており、どのような魔物が生息しているか大体の位置も記してある。

 入口付近はスライムなどの危険が少ない魔物しかいないそうで、学園の実習場所にも使われているとのことだった。


 深い層は浅層より広く入り組んでいるため、地図が完成するにはまだまだかかるだろうとのことであった。


 そして、このダンジョン最大の特徴は「大穴」。

 ダンジョンの中心に、山頂と下層を繋ぐ半径50m程の大穴があり、その底はどうなっているのか誰も知らないそうだ。


「今はどのくらいの深さにまで行った人がいるんですか?」

「浅層を1階として地下5階までの情報が入ってるわよ。ほら上に書いてあるでしょ?」


 そう言われてカウンターの上を見ると「現在到達域=地下5階折り返し地点 到達者=キーマス・ガリバー 他3人」と書かれていた。


 大穴を降りていけば……

 なんてありきたりなことを考えてしまったが、勿論簡単にはいかないらしい。

 大穴にはハーピーや鳥類の魔物が生息しており、壁にはアルドタランチュラと言う大きな蜘蛛が所々に穴を掘って生息しているらしい。

 縄なんかで降りたら、それこそ狙って下さいと言っているようなものだ。


「深い層にはどんな危険な魔物が住んでいるんですか?」

「そうねぇ……トロールなんかは結構徘徊してるらしいわね」


 深層と言っても広く、どのくらい深いかも分かっていないので、全ては話しきれないと言っていた。

 他にはアルドサーペントと呼ばれる毒をもった洞窟特有の大きな蛇が良く目撃されているとのことである。


「宝物ってまったく見つかってないんですか?」

「浅層で見つかったって情報は全くといってないわねぇ……、貴重な鉱石や、深層で魔物が宝石を持っていたなんて話は少し入っているけど」


 うーん……なんか聞いた感じだとあまりお得感がないダンジョンのようだけど……


「あんまり調査する理由がなさそうですけど……なんで冒険者の方が探索にいくんですかね?」


 そう聞くとおばさんはにこりと笑って答えてくれた。


「それはね、ここの洞窟には主がいるかも知れないからなの」


 ダンジョンによっては生息している魔物が、均一に生息していることが多い。しかし、このように生息が別れている場合、主となる魔物が支配している可能性があるそうだ。


 強大な魔物の近くには強い魔物が、離れている場所には弱い魔物が生息するように、自然と住み分けが出来るらしい。

 勿論、知性のある魔物が統制をとっていることもあるそうだけど。


「ここは最深部に主がいると考えられていてね、そのお陰で浅層には弱い魔物が棲んでるから冒険者の実力試しにも持ってこいって訳ね」


 なるほど……

 実力試しは勿論、主を見つけてやろうなんて人もいるわけだね。


 そう言えばガロウが言ってたドラゴンの目撃情報が無いようだけど、もしかしてドラゴンが洞窟の主なんてことがあるかもしれないよね。


『十分に考えられることだと思いますよ。』

【クックック、ここまで話を聞いたのならば、もちろん探索に行くのであろうな?】


 ムムム……でもそこまでの時間もないし……

 どんなところか見に行きたいとは思うけど……


「因みに浅層から1階下に行くのにどのくらいかかるものなんですか?」

「そうねぇ……もちろん冒険者の実力によるけど、ベテランの人で2日ってところかしら?」


 ですってよクロさん。

 見に行く位しか出来そうにないですよ?


【何をいっとる、入学までに時間はまだあると言っておっただろう?】


 え? まあそっちは確かにまだ時間はあるけど。

 ガロウとの約束は三日なわけだしさ?


【ならばガロウを待ってから出発すればよいのではないか?】


 あ、そっちの発想ですか?

 いやでも1階に降りるのでも最低で2日ですよ? 往復で4日ですよ?


【10階近く進んで往復2ヶ月位であろう? まだ1ヶ月あるぞ?】


 な、何をいってるのかこの人は!

 最下層まで行く気マンマンの発言じゃないの!

 しかもそんな単純計算ですまないでしょうに……


『ダンジョンを探索すること自体は反対しませんが……もし主がドラゴンであるなら流石に大変だと思います。あまりおすすめはできません』


 あらあら、シロさんまで少しずれたことを……

 ドラゴンを倒すのが大変? それって出来る前提で話じゃない?

 それに2ヶ月近く探索することには触れていないようですが……


【まだ主がドラゴンと決まったわけではあるまい。今回はダンジョンの攻略を目的として、主がドラゴンであったならその時はその時考えればよかろう】


 おやおや、今度はダンジョン攻略が目的になってますね。

 おばさんの話だと攻略って主を倒すまでになるのでは?


 前回の闘技場の時と言い、ボクの意見が置いてきぼりな気がするんですけど……


『話を聞いた感じでは、ポコもダンジョンの探索はしたいのですよね?』


 うん、それはそうなんだけど……

 だけども攻略やら主やらとなるとちょっと……


『ダンジョン探索自体はポコの経験として良きことだと思います。しかし期間も長くなりますし、ダンジョン深く潜るとなると何が起きるかわかりません。状況に応じてワタシが引き返す判断をするのはどうでしょうか?』


 ふむ……判断をシロに任せる事自体は大賛成である。

 クロに任せたら間違いなく最深部まで行くことになるだろうし。

 なら挑戦してみようかな?

 ガロウが来るまでの3日間に色々と準備すればいいし。


【良し! では決定だな!】


 お、おう。随分とテンションが高いこと。

 まあボクとしても行くと決まれば楽しみだけどね!


「お話しありがとうございました」

「あらもういいの?」


 受付のおばさんは暇をもて余していたのか、少し残念そうな表情であった。


「ええ、3日程準備したら見に行こうかと思います」

「え? 何言ってるの? ダメに決まってるじゃないの」


 ビックリした表情で止められてしまった。

 こんな子供がそう言い出したら、止めるのが当前である。勝手に向かう事もできるが、地図が欲しいのでそうもいかない。


「えーと……一応ボクも冒険者なんですが……」


 ギルドライセンスを取り出して見せる。


「あらあら! まあ、こんなに若いのに? D級とは言えライセンスを持っているなら止める訳にはいかないわね。でも無理は禁物よ?」


 なんだか闘技場の受付のおばさんにも同じ様に心配されてしまった事を思い出した。


「ええ、無理だと思ったらすぐに引き返しますので」


 おばさんは納得すると、ごく簡単な浅層の地図を渡してくれた。

 流石に無料で配っている地図に細かい記載はない。しかし、本棚には今まで調査に出かけた冒険者たちの情報が置いてある。必要な内容は自分で書き加えることが出来る訳だ。


「そうそう、あとこれも読んでおいた方がいいんじゃないかしら?」


 そう言って渡してきたのは「ダンジョン探索の基礎知識」と書いてある本である。

 今のボクは経験と情報が圧倒的に足りない訳で、これからダンジョンに向かうには一番必要な本かもしれない。


「ありがとうございます!」

「どういたしまして」


 ボクは端にある椅子に座って本を読み始める。

 そんなに本を読むのは得意ではないけど、納得する内容が幾つも書かれており、「ナルホド、ナルホド」と読んでいる間に読み終わってしまった。


 本の内容を簡単に要約すると……


 第一に「食料と水は確実に確保せよ」である。


 当たり前のことではあるが、一番重要なことだと言う事を再認識させられた。

 補足として水に関する魔方陣を持っていれば水の確保を気にしなくても良いため、一種類は持ち歩くと良いと書かれていた。

 そうなると魔法が使えるボクは食料をしっかりと確保しなければいけないと言う事になる。

 植物は周辺に生えていれば採取するとして、干し肉は大量に持っていかなければならないだろう。


 もし最下層まで行くことになって食料が無くなったら……

 あまり考えたくはないが、最後の手段としては魔物をってことも考えられる……


 そして第二に「退路を確保せよ」であった。


 もちろん魔物から逃げるためでもあるが、帰り道をしっかりと把握しておけと言う事である。

 地図の書き方、ダンジョンでの目印(マーキング)の方法などが書かれていた。


 先頭が周囲の警戒、真ん中が地図とマーキング、後ろの者は後方の警戒と書かれていた。

 この書き方だと、普通パーティーを組まないでダンジョンに行くのは、あり得ないことなんじゃないだろうか……


 良く考えれば、一人だと睡眠をとるのもままならないかもしれない……

 これはガロウに一緒に来ないか聞いてみることにしよう。


 そして洞窟の探索には、松明などの明かり、コンパスのような方角を示す物、他にロープやナイフ、毛布などが最低限必要だと書かれていた。

 もちろん補助系統の魔方陣で代用できれば問題はないと補足されている。


 目的によっては他に必要な物は出てくるが、この辺の物が揃っていれば基本的な探索は何とかなるようだ。


 ではさっそく買い揃えよう……

 と思ったが、外にでると既に日が暮れていた。


 結局宿を取らなきゃ行けないんだったら、先に安い宿を予約しておけばよかったと思う。


 財布の中身を確認すると、金貨1枚に、銀貨銅貨が数十枚。

 3日泊まる程度なら全く問題はない。まあ色々買い揃えることになるし、安いに越したことはないのだけど。


 数件回ってみたが中々にお高い値段設定……

 1泊で銀貨4枚~の価格帯で、町に比べると2倍以上のお値段である。

 とは言っても、こんな場所で泊まれるだけありがたい訳である。

 暫くは宿屋に泊まることも出来なくなるだろうし、奮発した気持ちで3泊する事にした。



 そして次の日はさっそく買い出しである。


 干し肉、干し芋、干し果物。

 とにかく日保ちする食料を大量に買い込んでは宿屋へとしまいこむ。


 1日の食事が干し肉2枚、干し芋2枚、干し果物ちょっと。

 そう考えて2ヶ月分を見積もったところ各々100を越えてしまう。

 リュックを買って詰め込んだら食料だけでも結構ぎゅうぎゅうの状態である。


 うーん……

 ダンジョン探索って、やっぱり一人じゃキツいよねぇ……

 ガロウには頼み込んででも来て貰わないと……

 あれ、でもそうすると食料がさらに倍? ちょっと考えるのはやめておこう……


 コンパス、ロープ等の探索用品もしっかり購入。

 毛布は無いけど今まで通りにローブにくるまれば問題なし。

 松明やランプを買っておこうと思ったのだが、魔法でなんとかなるんじゃないかと思い保留にしておいた。


 残りのお金は銀貨数十枚と銅貨がちょっと。

 結構お金を使ってしまった感じはあるけど、あとは学園に向かうだし十分に残っているとは思う。


 さて探索用品の準備が終わったところで、久々の魔法考察時間である。

 残りの3日間にできる限りは考えておきたいところである。

 魔法を試すために人気の少ない行きに見かけた草原へと足を運ぶ。


 今のところすぐ使える魔法は

 治癒魔法(ヒール、ポコヒール、ヒールボール、ヒールサークル)

 治癒魔法(状態異常解除)(キュア、ディポイズン、ディスペル)

 防護魔法(ディフェンスウォール、マジックウォール)

 身体強化魔法(ストレングス、オールアップ、アクセル)

 探索魔法(サーチ)

 消滅魔法(デリートマジック、ターゲットデリジョン、デリジョンボール、ドライシューター(足)、ブラックアウト、ダークカーテン)


 他にも本には書いてあるが、とっさに使えるのはこんなところである。

 使い勝手がいいものはそれなりに揃っていると思うけど、少し物足りない気もする。


『探索に出るのならば、それに合わせて新しく覚えなくては行けませんね』


 確かに探索を有利に運べるような魔法があるならば、いま覚えておきたいところである。

 灯り、周りの警戒、方角や地図等に関する魔法があるならとは思うけど……

 あと集団の敵に襲われた時の魔法がドライシューターしかないのは少し物足りないかもしれない。


 灯りに関しては火の魔法を使えば問題ないと思うけど。

 周りの警戒はサーチで敵意を察知すれば問題ないのかな?


 うーん、取り敢えず軽く火を出して松明の変わりになる魔法を考えようかな?


【ふむ、あまり口出しはするつもりはないのだが……ここはひとつアドバイスをしておこう】


 む、珍しい。

 学園で学ぶことはともかく、魔法は自分で考え、試して自分のものにするのが一番だと言っていたクロが、試す前にアドバイスしてくるとは。

 失敗を笑うこともしないとはこれいかに。


【失敬だな、やはりやめた!】


 あ、すいませんでした。

 素直にアドバイスを受け取ります。


【最初から素直に聞けばよいのだ!】


 クロの方から進んでアドバイスしてくることなんて、そうそう無いもので……


『まあクロが言い出さなかったら私がアドバイスしていたと思いますよ』


 おやシロまでそう言いだすとは……?

 ここは真剣に聞かせてもらった方が良さそうですね。


『練習の段階では上手くいっても、ダンジョンでは失敗することがあります。クロはその事を伝えたいのだと思います』

【うむ、環境を考えなければならんと言うことだ。特に今回は洞窟であるから火の魔法は控えた方がよい】


 ほーほー、環境を考えないといけないか……

 それは考慮にいれておりませんでした。

 でも火の魔法は洞窟では控えた方が良いっていうのはどういうこと?


【狭い洞窟で激しい炎を出すと呼吸が出来なくなり死に至る場合がある。他にもガスが発生している場所もあるからな、引火して爆発を起こすなんてこともあるわけだ】


 お、おう……死に直結する内容でしたか……

 これは聞いておいて良かったです。


『土に作用する魔法では崩落の危険がありますし、水の魔法であっても場所によっては水が溜まり溺れる可能性も出てきますから気を付けなければ行けません』


 おおう……環境を考えるか……

 勉強させていただきました。

 しかしそうなると灯りに関して他の魔法で考えないと行けないなぁ……


『今回は準備期間も少ないですし、ヒントをあげても良いでしょう。ポコが使っているサーチを応用すると良いですよ。』

【む、そこまで教えるとは相変わらず甘いやつだな】


 ほほう! サーチを応用するとな!

 そう言われれば応用する方法がいくつか思い付く。


 ただ前みたいに情報酔いの様な失敗はしたくないけど……

 こればかりは試してみないとわからない。


 少し覚悟を決めた後に目をつぶり、ファルナを集中して範囲を狭めにして真名を唱えていく。


 [検索・地形・球形・範囲・10・メートル・指定(自分)]


 唱えた瞬間、自分を中心に360度の視覚に似た感覚が認識出来るようになる。

 とはいえ地面の形や境目が認識出来る程度の簡易的な感覚ではあるのだけど。

 実際に目を開けて比べてみると特に問題ないように思えたが、植物を認識していない事が気になってしまう。


 これって生物も認識しないってことだよね?

 そうなると魔物が出てきても認識できないってことになるのでは……考え直した方がよさそうだ。


 その後も熱・形・色など様々な真名で試行錯誤した結果、最終的にたどり着いたのが地形とは逆の発想で「空気」の検索である。


 空気が存在している場所が認識できると言うことは、空気が存在していない場所は物が存在していると言う事である。範囲内の物の形が認識できた。


 イメージとしては黒い紙に書いてある白い文字を読むのに近い感じがするので、ほんの少しの違和感は感じる。


 でもなかなかに使い勝手がよくむしろ目を閉じた状態でもなんなく行動できるし、範囲を拡げても情報過多となることもなかった。

 また空気の検索を平面・平行に発動すると、範囲をかなり拡げても大丈夫である。

 これを使えば簡易的な地図を作製することも可能だと思う。


 一応クロからは及第点だと言う言葉をもらった。

 まあもっといい方法があるんだろうけど、またの機会に考えたいと思う。


 この日は《サーチ》の応用を考えるので時間が過ぎてしまい、次の日は他の魔法の検討である。


 今までも思ってはいたのだけど、複数の敵に囲まれた時の対処方法を増やしたいと思う。

 取り敢えずは《ターゲットデリジョン》を複数にしたらどうなるかを検討してみた。


 《ドライシューター》では小さい範囲の水を消滅させて貫通するだけなので、数が増えても威力はそこまで変わらなかった。

 しかし《ターゲットデリジョン》は全体を完全に消し去るので、威力にどれ程の影響があるのか分からない。


 取り敢えずその辺にごろごろしてる岩を対象に試してみようと思う。


 右手にファルナを集中して[消滅・球形・打ち出し・対象・複数・分裂・包み込む]と唱えると、いつも通りの少し空間が歪んだ球形へと変化する。


 目に入った岩10個ほどを対象にして魔法を放つと、飛び出した瞬間に分裂して対象の岩を包み込む。

 それと同時にギュルッという音が幾つにも重なって聞こえ、岩の姿形は消えてなくなっていた。


 あらあら、まあまあ!

 全然問題ないじゃないですか!

 まあ、対象が岩ってこともあるだろうけど……


 その後も数を増やしたり、大きさを変えたりと何度か試してみたが、50cmくらいの岩であれば30個ほどを対象としても問題は無い。

 大きな岩が混ざると少し消し残りがあるかなと言った感じであるけど、魔物相手に消し残りがあっても問題はないと思う。

 ……少しグロテスクな状態になるかもしれないからあまり見たくはないけど。


 生物相手にどれだけの効果になるか分からないけど、20匹くらいなら対応できそうだし問題ないと思う。



 さて次に考えていたのが《デリートマジック》の物理攻撃対象バージョンである。


 何だかんだで今まで一番お世話になったのが《デリートマジック》であり、これが応用できれば一番だと考えていた。

 やっぱり怖いと思うのが、突然に矢が飛んできたり、背後から襲われたりすることなので……


 まあ前に単純に消滅魔法を周囲に発生させて失敗した記憶があるけど……今なら形をかえるなり、対象の指定や除外が出来ればなんとかなるんじゃないかと思うわけです。


 ……とは言いましたが、色々と試してみると単純な消滅魔法だけを自分の周囲に張るのはやはり難しい。


 半球形のドーム状にしたりと形を変えて発動することはできたが、これでは一緒に行動したものにまで危険が及ぶし、意図していない物まで消してしまう事になる。


 という訳で、最終的には攻撃を対象にすれば良いという考えに行き着いた。


 もちろん自分で試すのは怖いので、まずは岩でお試しである。

 手にファルナを集めて[消滅・攻撃・球形・打ち出し・対象・周囲]と唱えて発動する。

 ファルナは透明の球体となり、岩に向かって打ち出されると瞬時に全体を包み込む。

 取りあえずのお試しに、その辺に落ちていた石を投げつけてみると、ジュルッといった音と共に消えてなくなった。


 オオウ! 中々よさげではないですか!


 ただ不安なのは、どこまでを攻撃と認識するのか。

 それも試さないといけない。


 木の棒を持ってそーっと岩に近づけてみると特に反応はなく、軽く棒でポンポンと叩いてみても特に変化は見られない。

 今度は人だったらちょっと痛いかなって程度に力を入れて叩いてみると、ジュッっといった音と共に木の棒の皮が剥がれたか溶けた様に無くなっていた。


 おや? これってもしかして……?


 今度は思い切り木の棒で叩いてみると、空振りしたかような感触である。

 アレっと思って木の棒を見ると、岩に触れた先端の部分は綺麗に切り取られたように消え去っていた。


 あらやっぱり、攻撃と認識される度合いによって消滅魔法の威力が異なってきてますね。

 つまりは致命的な攻撃に対しては、それこそ最大限の威力を発揮するってことになるわけで……

 これは中々にいいのではないでしょうか!


【ふむ、偶然ではあったが中々に良い魔法であるな。偶然ではあるがな】


 あ、ええ、偶然なのは分かってますから。

 2回も言わなくてもいいじゃないですか。


 効果時間は《デリートマジック》と同程度。

 時間を伸ばすこともできるけども下手に効果時間を増やして威力が減ってしまう事を考えると、ファルナ量を増やしての調節で臨機応変に使うのがよさそうだ。

 名前は単純に《デリートアタック》とさせていただきました。


 その後も色々試して幾つか分かったことがあった。

 魔法攻撃にも《デリートアタック》は反応しており、不意打ちなどの対策には非常に優れていた。


 しかしながらダークカーテンの様な妨害魔法に分類されるものには反応せず、魔法で出現した水で沈めたり、風で飛ばしたりする魔法にも反応しなかった。

 呪いや魅了のような異常魔法の中にも反応しない魔法があるだろうし、適応範囲を調べるよりは魔法に対する効果はおまけと考えていた方がよさそうである。


[消滅・攻撃・と・魔法・球形・打ち出し・対象・周囲]とすることで両方の効果を得られることも確認済みであるが、使用する状況が異なりそうだし別々に使ったほうがいいかと思う。


 他にも試したいことはあったのだが3日間ではこれで時間切れ。

 ルドルフナイフ(適当に命名)を使って魔法を纏わせたり……なんていうのも試して見たかったのだけど。

 まあその辺は魔法具や戦技のことなんかを学んでからでもいいのかもしれない。


 とにかくこれでダンジョンに行く準備は万端である!

 あとはガロウとの合流を待って出発である。


次回はダンジョンの探索に予定です。


少しメモ程度に現在すぐに使える魔法を

治癒魔法(ヒール、ポコヒール、ヒールボール、ヒールサークル)

治癒魔法(状態異常解除)(キュア、ディポイズン、ディスペル)

防護魔法(ディフェンスウォール、マジックウォール)

身体強化魔法(ストレングス、オールアップ、アクセル)

探索魔法(サーチ(敵意・空気))

消滅魔法(デリートマジック、デリートアタック、ターゲットデリジョン(単・複数)、デリジョンボール、ドライシューター(足)、ブラックアウト、ダークカーテン)

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