↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/57

鬼人

話を進めるのは難しいですね(・ω・`)

 さてさて、どうなるかと思ったが、ゴブリンの集落には問題無く入ることが出来た。


 知らない顔だとバレるかもしれない心配もあったが、ゴブリンの隊長が先頭となって入ったお蔭か、見張りも特に反応することなく素通りである。


 とは言え安心するのはまだ早い。

 魔法の制限も刻々と迫っているため、一直線に洞窟へと向かう。


「おい、そこのゴブリン」

「は、はい!」


 中央の大きな建物の横を通ろうとした時、流暢なヒトの言葉で話し掛けられ、思わず返事をしてしまう。

 振り替えると2メートルはある筋肉隆々な体格の男が扉の前に立っていた。


 一本の大きな角、下顎からは2本の牙。

 上半身は裸で肌は赤く見え、下半身には東の国の着物のような、少し変わった服を身に付けている。


「人語が喋れるヤツなら丁度いい。姫様が部屋を掃除しろと仰せだ」

「は、はい、わかりました」


 正体がばれたのかと焦ったが、違うようで少しホッとする。

 カレンとロイズは軽く頷くと、そのまま奥の洞窟へと向かう。

 救出の方は任せておけと言うことだろう。

 こちらはこちらで何とかするしかない。


【鬼人で間違いないな。目的を探るのには丁度よいのではないか?】


 そう簡単に言いますが……

 バレてしまったらどうするんですか?

 それに魔法が切れる前に切り抜けないと……


 まあクロなら倒してしまえと言いそうだけど。


 建物の中に入ると実に汚い。脱ぎ捨てられた衣服や食べカスで足の踏み場が無い状態だ。


 奥には1本の角が生えた青い肌をした男が腕を組んで立っている。赤い鬼よりは少し細い体格で、精悍な顔立ちである。


 青い鬼の横には2本の小さな角が生えた美しい女性……絶世の美女と言っても過言ではない女性が扇子で口元を隠し、実に退屈そうに座っていた。


 妖艶な雰囲気を漂う少し垂れた目。雪のように真っ白な肌。銀色の艶やかな長い髪を頭頂部で束ね、ヒラヒラとした雅な東の国の衣服を着込んでいる。

 歳は二十歳位に見えるのだが……魔物にも外見での年齢が適応されるかはわからない。


「姫様、こいつに片付けさせます故に暫しお待ちくだされ」


 赤い鬼がそう言うと、奥の女の鬼はどうでも良さそうに、扇子を2度ほどヒラヒラと振る。姫様と呼ばれていることからも、二人はその部下と考えて間違いないようだ。


 ボクは大急ぎで麻袋に食べカスを詰め込む。


「それにしても退屈だのぅ……討伐隊とやらはまだ来ないのかぇ」

「先ほどゴブリンの部隊が出たようですが、直ぐに戻った所を見ると対した者ではなかったようです」


 姫様と呼ばれる女性の問いに、横にいた青い鬼が答える。


 強い討伐隊が来るのを求めている?

 なおさら目的が掴めないな……


「それでは妾の事が広まらんではないか。時間がかかるのぅ……」

「焦らずとも魔王様への供物を集めながら、ゆっくりと待てばいいかと……」


 はい?

 魔王って言いました……?


 青い鬼の言葉に思わず麻袋を落としそうになってしまう。


「フム……それでは隙をもて余してしまうのぅ。また人狼でもくれば暇潰しになるのにの……」


 左のひじ掛けに顎を乗せ、実に退屈そうな素振りを見せ、そんな様子を見た赤い鬼が溜め息をつきながら言葉を挟む。


「しかし姫様、本当に魔王様の妃となるつもりなのですか?」


 !?

 魔王の嫁さん狙い!?

 と言うか魔王って……そんなのお伽噺じゃないの?

 そんな噂さえ聞いたこともないけど……


「む? もちろんじゃぞ?」

「しかし復活も確認できていないと言うのに……」


 か、確認できてないだと!?

 それは先走りすぎじゃないでしょうか……


「セキライよ、何度も言わせるでない。トト様が前に此方の方角より気配を感じたと言っておったであろう?」

「しかし……姫様……」

「うるさいのぅ……とにかく供物を集め、妾がここにいる事を示すのじゃ」


 セキライと呼ばれた赤い鬼は、諦めた様子で口をつぐむ。


 なるほどなるほど……

 つまりは姫様と呼ばれているワガママな女の鬼人が、存在も不確定な魔王の嫁になりたいと言い出したと。

 気配を感じた方角を探して、たまたま合ったゴブリン集落を占拠。供物を集めながら自分の評判を拡げて魔王に存在を知ってもらおうとしていると。


 何だそれ。

 しょうもないな……


『まったくもってその通りですね』


 大体の人はそう思うよねぇ……


 話を聞いているうちに鬼人達の関係性も何となく分かってきた。

 姫様と呼ばれる女の鬼人の我がままに、赤い鬼人はシブシブ従っており、

青い鬼人も表面上は素直に従っているようだが、内心ではどう思っているかわからない。


 全ての元凶はこの女の鬼人と言う訳だ。


 まあ、これで今回の原因については、大体は把握できんじゃないだろうか?ギルドに報告したところで信じてもらえるかも分からない内容だけど……


 情報は掴めたが、魔法の制限時間が後わずか。

 どうにかこの状況を切り抜けなければならないが……


 外では特に騒ぎが起きていない。救出の方は上手くいっていると考えて良いだろう。


「大体終わったのですが……」


 赤い鬼人はボクの方をチラリと見る。


「ならばさっさと出ていけ」


 うはっ! 助かった!

 あぶない、あぶない、時間ギリギリだったよ。


 軽くお辞儀をして入り口に向かう。


「……おい、ちょっと待て」


 丁度出ようとした時に、後ろからの声に呼び止められる。

 おそるおそる後ろを振り向くと、青い鬼人がこちらを凝視していた。


「中々流暢な人語を話すな。それにゴブリンには珍しく礼儀を心得ているようだが?」


 ひー!!

 ついついお辞儀を!

 余計な事をしてしもうた!


 呼び止められた時には既に時遅し。

 自分の視点が高くなり始め、鬼人達の表情が一変する。

 マズいと思い、直ぐ様飛び出すかのように外へと逃げる。


「貴様! 何者だ!」


 赤い鬼がそう叫び、棍棒を持つと同時に横凪ぎにする。

 

 ドゴオオオン!


大きな破壊音と共に小屋の入り口が粉々に吹き飛んだ。


 ヒィィ!

 あ、あぶなかった……


 《オールアップ》を唱えていたのが幸をそうし、ギリギリでの脱出に成功。

 ゴブリン達が何が起きたのかと顔を出すが、鬼人の形相を慌てて姿を隠す。


 こうなっては戦闘を回避するのは難しそうだが、気になるのはロイズ達の救出が無事に終わったのか。


 周りを見回すと、逃げ惑うゴブリン達の中で、慌てる事無く落ち着いて此方を見ているゴブリンに目が止まる。

 皆と行動を共にしていた、ゴブリン部隊の隊長である。ボクと目が合うと村の外を指差している。示された場所の繁みには、成功した合図を送るように人の手が振られていた。


 予定は狂ったが当初の作戦通りに、救出は成功したようだ。


「貴様! どこから紛れ込んだ!」


 赤い鬼人の怒号に大気が震える。

 返事を待つ気など無いのはひと目で分かる状態であり、今まさに襲いかかってくる寸前である。


「ちょっと待つのじゃセキライ。今の動き、ここへと侵入した手際……其奴中々の腕前なのじゃろ?」


 赤い鬼人の行動を遮り、奥から女の鬼人がゆっくりと歩いてくる。


「良き暇潰しになるのではないかえ?」


 女の鬼は酷く美しく、そして凄惨な笑みを浮かべてこちらを見ていた。


 ひぃー!

 ろくな事を考えて無さそうな……


 クロとシロは、女の鬼人は魔力が高いと言っていた。今のうちに対策をしておくべきだろう。足元にこっそりとファルナを集めて《デリートマジック》を唱えておく。


「一応は聞いておくがのぅ、ソナタは何しに来たのかや?」


 ここに来る理由などほぼ決まっている。

 答は予想できる上での、本当に一応でしかない質問である。


「えーと、この事態の解決といいますか……」

「それは妾達を討伐に来たと考えて良いのかや?」


 いやいや……

 自信満々のベテラン冒険者ならまだしも、ボクなんかが面と向かってそんな事が言えるわけが無い……


「いえ……あの、出来ればそろそろお帰りになって頂ければ嬉しいかなーとは……」


 女の鬼人は面白そうにクフフと笑い、後ろにいた青い鬼もボクの言葉に反応する。


「随分と自信があるようだな」


 えー!!

 どの言葉からそう取ったんですか!!


「我らも随分となめられたものだ……姫様ここは私にお任せください」


 青い鬼人が前に出ようとするが、女の鬼人は扇子を開いて妨げる。


「ソウキよ、お主もそう急くでない……」


 扇子を引きながら、少し勿体ぶるように話を続ける。


「フム……そうじゃの。お主の実力を見せて貰えれば話を聞いてやらんこともない……」


 その言葉には二人の鬼人達も驚いた表情を見せていた。

 魔王に執着し、赤い鬼人の言葉を聞き入れなかった女の鬼人。

 話を聞くと言い出したことは、二人にとっても意外なのだろう。


「そうじゃのう……まずはトロールとでも戦って貰おうかや?」


 そう言って扇子を頭上へと高らかに上げ何度か扇ぐ素振りを見せる。


 ズシン……!

 ズシン……! ズシン……!


 地響きと共に三匹のトロールがこちらへと近付いてくる。

 魔法か何かで操られているのか随分と従順である。


 女の鬼人は青い鬼人に椅子を持ってこさせると、高みの見物とばかりに足を組んで優雅に座り込む。


 向こうのペースに乗せらてる気がするけど……

 険悪な状態で進むよりかはいいのかなぁ?


『相変わらずのんびりとした考えですね』

【ふむ、少しくらい緊張感をもったらどうなんだ?】


 エー、あなた達が言うんですか?

 まあ……確かに会話が出来ると言うことに、気が緩んでいるかもしれないけど。


 トロール達はとぼけた顔をしているが、手にもっているのはヒトよりも一回りは大きな巨大な棍棒。単純にその一撃を食らえば、ひとたまりもないだろう。

 それにあの愚鈍そうな巨大な身体。少しくらいの怪我を追わせても怯まない恐れが充分にある。


 ゴブリン達の様には行かない。

 命を奪わなければ止められないだろう。


 ボクは深呼吸をして覚悟を決め、両手にファルナを集中する。


「では良いかや? 始めておくれ」


 女の鬼人が扇子を振ると、トロール達が襲いかかってくる。

 2匹はボクの方へと直進するように、1匹は少し遅れてキョロキョロとした後、気が付いたかのように向かってきた。


 ここで躊躇するようであれば、命を失うのはボクになるだろう。


[消滅・球形・打ち出し・対象・包み込む]と唱えると、両手のファルナは空間の歪んだ球体となる。対象を完全に消し去る《ターゲットデリジョン》である。


 先に向かってきた2匹に対象を定めて魔法を放つ。


シュンッ!

キュウウゥゥ!!


 風を切るような音が一瞬だけ聞こえる。

 2つの球体が瞬時に二匹を包み込むと、耳をつんざく様な高い音が発せられる。


 トロールの皮膚が消え、筋が消滅し、骨が顕になり、足元から崩れ落ちる。

 それでも魔法は止まらない。骨を、そして内臓を消滅させ、トロールがいたはずの場所には跡形も残らない。


 時間としてはものの数秒。トロール自身でさえも何が起きたのか分からないうちにこの世を去ったであろう。


 突然の出来事に周囲は理解が追いついていない。


 女の鬼人は扇子を手から落とし、驚愕の表情で固まる。

 男の鬼人達は目を見開き、数秒遅れて何が起きたのかと頭を働かせる。

 ゴブリン達は困惑した表情でコチラを伺っている。


 後ろにいたトロールでさえ動きを止めて、2匹がいた場所をキョロキョロと交互に見回す。ただ考えるのを直ぐに止めた様子で、警戒もせずに先程の2匹同様に突っ込んでくる。


 《ターゲットデリジョン》を唱え、一匹となったトロールに向けて解き放つ。


シュンッ!

キュウゥゥ…

 

 魔法の効果音が消えると共に周囲は静寂に包まれる。


「ふぅ…」


 ボクの小さな溜息が全員に聞こえるほどに。


 魔法を使って生き物を死に至らしめる。

 心が痛むのと思っていたのだが、想像した程の負荷はない。

 意思疎通がとれないトロールだから、あまり感じないのかもしれないけど……


 自分は案外冷たい人間なのかもしれないなぁ……


『命を奪う重みを考える時点で、冷たいなんて事はありませんよ』


 涙が出そうな励まし……

 ありがとうございます……


【害虫駆除に心の在り方など関係無かろう? 気にするほうが無駄と言うものだ】


 ん……? 

 なんだろう。

 励ましてるつもりなのか、ただの感想なのか。

 クロが何言ってるのかサッパリ分からん。


 気を取り直して鬼人へと向き直る。

 赤と青の鬼人はまるで獣が威嚇するかのごとく、険しい形相で身構えていた。一方で女の鬼人は笑みを浮かべて身を乗り出し、興味深そうな視線をこちらに向けている。


「姫様、お下がりください……どうやら甘く見ていたのはこちらのようです……」


 青い鬼人は庇うように女の鬼人の前に立ち、赤い鬼人はその前で棍棒に手をかけて身構えている。


「エエイ! 邪魔をするでない!」

「ひ、姫様!?」


 女の鬼人は、青い鬼人をはねのけて立ち上がる。

 青い鬼人は驚き焦っている様子であった。


「お主! 名前は何と申すのじゃ?」


 女の鬼人は二人とは正反対の反応である。

 まるで面白いおもちゃを見つけたように、嬉々として声をかけてくる。


「え、えーと……ポコ・コロネルです……」

「ポコと申すのか! そなた妾の元へ来るのじゃ!」


 えええ!!

 何を言ってるのこの人!

 話を聞いてくれるって約束じゃ……?


「姫様それは……」


 赤い鬼人が困った顔をしており、止めようとはするが聞き入れては貰えない。流石に冷静さを保っていた青い鬼も加勢する。


「姫様。魔王様の件はどうするのですか……?」

「エエイ、うるさいのう! 気が変わったのじゃ!」


 なんだか巻き込まれてるのに蚊帳の外。

 そんな変な気分である。


「村から出ていってもらう話は……」

「お主が来るならすぐにでも出ていくぞ!?」


 そんな無茶苦茶な!


【もう良い。まとめて消してしまったらどうだ?】


 クロも無茶苦茶だな!


 どうすれば事態が収拾するのか……

 まあついていくと言う選択肢は端から無いのだけども……


「あの、ボクは学園に魔法を学びに行く途中でして……貴女に付いていくのは無理なのですが……」

「なんでじゃ? お主ほどの実力があれば学び事など必要ないであろ?」


 中途半端なことを言っても、全て却下されそうなこの状態。

 ここはハッキリと断らせて頂きます。


「いえ……残念ながらお断りさせていただきます」

「いやじゃ! 無理にでも来てもらうぞ!」


 女の鬼人が扇子を高く振り上げると、キラキラとした粉のようなものが僕の方へと漂ってくる。


【何やら魔法を使っているようだな】


 えっ!!


 慌てて距離をとるが時すでに遅し。

 粉はボクの周囲を包み込み、叩いても、動いても付きまとう。


 そして淡く光を放つと消えていく。

 特に変わった変化は見られない。

 思わずキョロキョロと鬼人達の様子を伺ってしまう。


「ポコよ、来てくれるのであろう?」

「い、いえ、何度言われましても……」


 そう答えると女の鬼人も、他の鬼人も驚いた様子であった。


「なぜじゃ!? なぜ妾の魔法が効かぬ!?」


『どうやら精神系の魔法だったようですね』

【防護魔法を纏っていたのを忘れていたな? 慌ておってからに……】


 い、いや忘れてたわけじゃないんですけど。

 ホラ、突然だったので……


『雰囲気にのまれて油断していたようですが、もっと気を付けないといけません』

【ウム、魔法など突然が当たり前だからな。猛省せよ!】


 はいぃぃ……

 深く反省します……


 そんな間も二人の鬼は説得を試みているが、女の鬼は聞く耳を持たないようだ。


「そうじゃ! この二人に勝てたら村から出ていこう。じゃがお主が負けたら妾についてくる。これでどうじゃ?」


 うはぁー!

 とんでもないこと言い出した……


 戦いになることは当初の予定通りではある。しかし、二人の鬼は非常に困惑した表情をしており、こんな状況で戦うこと自体が心苦しい。


 この流れなら命の奪い合いまでにはならない気もするけど……


 赤い鬼人が溜め息をつき、一呼吸おいてから口を開く。


「姫様……我が儘はそこまでです」

「なんじゃセキライ、妾に逆らうのかえ?」


 女の鬼人が赤い鬼を睨み付ける。


「良いですか姫様、あの者と戦えば良くて相討ち……いや、おそらく我らは命を失うことになります」


 女の鬼は驚いたように目を大きく開く。

 扇子で口を抑えると、うつむき加減で黙り、素直に話を聞いている様子であった。


「我らは姫様に忠誠を誓った身、戦えといえば戦います。しかし、その後の姫様を誰が守るのですか?」

「……ポコはそこまで強いのかえ?」

「あの者が本気になれば、我等など一瞬……いや、この村ごと消されてもおかしくはないでしょう」


 女の鬼は眉尻を下げて黙り込み、かなり落ち込んでいる様子である。


「セキライ、その辺でやめておけ」


 今まで黙って話を聞いていた青い鬼人が口を開く。


「ポコと言ったか。我らは村を出て行く。それで許してもらえるだろうか?」


 ワーオ!!

 なんだかわからないけど解決しそうですぞ!


「もちろんです。この事態が解決すればそれ良いですから」

「そう言って貰えると助かる。こちらとしても姫様の我が儘で命を落とすわけにはいかんのでな……」


 青い鬼人は深々と頭を下げる。


「姫様の無礼な態度にも寛大な対応。心から感謝する」


 赤い鬼もそう言って頭を下げてくる。

 女の鬼人は反省したようで、ションボリとしながら下を向いており、上目使いでチラチラとその様子を見ているようだ。


 赤い鬼人が懐から笛を取り出して口にくわえる。

 キィィンと高い音が鳴り響くと、暫くして巨大な鷲が舞い降りた。


「迷惑をかけた」


 赤い鬼人がそう言って鷲の背中に乗りこみ、青い鬼人が女の鬼人を連れて鷲の背中に向かう。

 これで終わったかと思いきや、女の鬼人は何かに気が付いたかのようにバッと振り替える。


「もしやポコが魔王様なのかえ?」


 無茶苦茶だな!

 ボクはただの人間ですよ!


「姫様……それは……」


 青い鬼がひきつった表情で頬をピクピクとさせており、どうしようもないといった感じだ。


「そうじゃ! 妾がポコについて行けば良いのではないか?」

「姫様……申し訳ありません!!」


 青い鬼人はそう言うや否や、女の鬼人を担ぎ上げる。


「ソウキ、何をするのじゃ!」

「ポコとやら。今回の件、貸しとしてくれ」

「離せ! 離さんか!」


 女の鬼人はポカスカと背中を叩くがまるで相手にされていない。


「最後になってしまったが、我は蒼鬼、あっちは赤雷という」


 そんな中でも女の鬼がポカポカと背中を叩いている。


「ぬぅ……妾は諦めんぞ……」

「姫様……諦めないならば名前くらいは名乗ってください」

「む! 妾はギンレイ! 銀に鈴と書いて銀鈴と言う!」


 担ぎ上げられた状態でのけ反るようにして名乗ってくるが、そのまま鷲の背中に運ばれてしまった。

 何だかまだ声が聞こえる気がするが、突風と共に鷲は大空へと舞い上がり、東の方角へと飛んでいった。


 小さくなって見えなくなった辺りでシロが呟く。


『何だったのでしょうね』


 いや本当に何だったんだろうか。

 終わって見れば、一人の我が儘に近隣の町までもが振り回されたと言う結果だったわけでだ。


 まあ無事に解決したし……取り敢えず良かったんではないかな!


 鬼人達の姿を見送って振り向くと、目を疑う光景が待っていた。

 500匹は以上はいるだろう村全体のゴブリンが集まり、片膝をついて頭を下げるか、両手を地面につけて平伏している。


 どうやらまだ面倒くさい事が残っているようだ……


 ゴブリン達の中には、感謝する者、怖れる者、崇める者までおり、ポコサマ、ポコサマとそこらじゅうから聴こえてくる。


 取り敢えず収まりがつかないので、ゴブリンの隊長を通して皆に事の経緯を伝えてもらった。

 集落の長にも話をつけることができ、長は自分が生きているかぎり、人を襲うことを辞めさせると約束してくれた。少しは言う事を聞かない者もいるとは思うが、ボクの名を出して無理矢理にでも言う事を聞かせると言っていた。

 それだけでは感謝仕切れず、宴を開きたいと言っていたのだが丁重にお断りしておいた。


 どんな食べ物が出てくるかちょっと怖いし……


 一部始終を見ていたロイズとカレンが、冒険者3人を連れてゴブリンの集落へと戻ってくる。


 救出した冒険者3人にはとても感謝され、帰ったら是非ともお礼がしたいらしく、食事をご馳走になることを約束をした。

 ロイズに色々と説明を求められたのだが、細かいことはドニュマンさんの所で話すと誤魔化しておいた。

 それでもロイズは興奮しているようで、帰りの道中で話が止まる事はなかった。


 半日程度歩き、馬車道に出たところで野宿をすることになる。ゴブリンが襲撃してくる心配はなくなったが、一応は持ち回りで見張りをする事になり、いつもどおりボクが最初の見張りとなる。


 皆が寝静まってから暫くして、背後に気配を感じて振り返る。


 大きな狼がこちらをジーっと見つめており、ボクと目が合うとゆっくり近づいて頭を下げてくる。


「我が名はガロウ。森の騒ぎを治めてくれたこと、感謝させて頂く」


 オ、オウ。

 随分といきなりだな!


「い、いえ、特には何もしてませんから……」


 実際、銀鈴の我が儘が過ぎたために勝手に連れ戻されただけである。


「アナタが来なければ、あの状態がいつまで続いていたかわかりません。事実、我も挑みましたが手の打ちようがありませんでした」


 狼が流暢に人の言葉を話すと凄い違和感を感じてしまう……


「我ら一族、何かありました時にはアナタのお力になることを約束いたします」


 そう言って伏せるような体勢で頭を下げてくる。

 なんか頭を下げられすぎて、感覚が麻痺してきたように感じる。


 ここまで感謝される覚えはないが、森に住む者にとっては死活問題であったのかもしれない。

 まあ、王都に行ってしまえばプリエラ森林に来ることはほとんど無い。何かあったときには宜しくとだけ伝えたおいた。

 ガロウは大きく尻尾を振り、同胞に伝える為にボクの名を教えてほしいと言っていた。


「ポコ・コロネルです。ポコと呼んでください」

「ではポコ様、突然の訪問失礼しました。またお会いできることを楽しみにしております」


 軽くお辞儀をすると颯爽と森の中へと消えていった。


【ククク、まるで森の支配者になったみたいだな】


 クロさん……

 何言ってるんですか?


『聞こえが悪いです。統治者の方が正確だと』


 あ、いえ、シロさん。

 そう言う事ではないんですよ?


 二人はいったい何を考えているのやら……


 見張りの交代の時間となり、ボクは横になって今までの事を思い返す。


 村を出てから一週間しか経っていないのに、随分と色々な事があったようにも思える。これからの道程、それに学園についたら、一体どれだけの出来事が待っているかと考えると楽しみで仕方がなかった。


 そして、無事に事件が解決したと言うことは、明後日にはセントリオに向けて出発することが出来るはず。出発までの時間、ゆっくりと街でも探索しよう。お金も貰えるだろうし色々買えるだろう、そんな事を考えているうちにボクは眠りに落ちたのである。


おかしなところがあればご指摘下さいますと助かります(・ω・`)


次回は森を越えて次の町へと


※読みにくかったので、結構修正いたしました。内容にはそこまで変化はないかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。