1話「我Fの称号を持つ者也」
4/2 少し言葉遣いや改行などを変更し、読みやすいように改善しました。
紅く燃え盛る大きな屋敷が見える。
血塗られた魔法陣には逆五芒星が描かれており、その上に1人ただずむ幼い少年。
少年の辺りには事切れた父親と母親らしき骸。
目の前には漆黒の翼を携えし一人の女性。
ワインレッドの様な瞳をした彼女は何かを喋っている。
しかし何を言っているのか分からない。そこで夢は終わった。
「またあの夢か……」
俺の目から頬を伝って涙が流れていた。時計は午前6時過ぎを指している。
両親の仇にして憎き悪魔……。俺は復讐を果たす為、ここへ来た――
「はぁ……、なんで私があんたみたいなのに呼び出されなくてはならないのじゃ」
文句を垂れているのは先日、召喚した使い魔の猫だ。未だに名前さえ知らない。
「溜息を吐きたいのはこっちの方だ……。何で俺ほどの才能の持ち主が召喚して召喚されるのが猫なのだ!」
「誰が猫じゃ! この無礼者!」
頭を思いっきりバシッとしばかれる。だが柔らかい肉球によってダメージは殆ど無い。
「まぁ、文句言ってても仕方が無いか……。とりあえず昨日の結果発表も知りたいし、学校へ行ってみるか」
「私は歩くの面倒だから、このさもなぁでばいすって言うのに入って寝てるわよ」
「あぁ、勝手にしろ」
この寮はファルシオン内部にある男子寮だ。ここから歩けば10分もしない内に校内へと入れる。
俺は校内へと続く桜並木を歩いて行く。すると掲示板の前に人だかりが出来ていた。
「あ、銀志~!」
「んっ? なんで蛍がこんな所にいるんだ!?」
掲示板から、紅 蛍が駆け寄ってくる。腰まで垂れた長い髪は紅く染まっている。
「なんでじゃないでしょ! 銀志一人じゃ頼りないから私も来たんじゃないの!」
「何を言ってるんだ? 俺のどこが頼りないというのだ」
俺と蛍は同じ孤児施設で育った――言わば幼馴染という奴である。
しかし、召喚士なんて全く興味を持っていなかった蛍がファルシオンに入学していたのは想像だにもしていなかった。
「うーん……むしろ頼りになる所を教えてほしいくらい何だけど?」
「なん……だと……言わせておけば!」
「えへっ♪ それよりも同じクラスだったよ? これで安心ね!」
「何が安心なのかよく分からないが、大丈夫なのか蛍? お前、戦いとか苦手そうなのに」
「大丈夫よっ! 実力テストでも先生達に結構褒められたわよ♪」
「そうなのか……。まぁ無理はするなよ」
「大丈夫っ大丈夫! それじゃ早速行きましょ!」
「お、おい。腕を引っ張るな」
蛍に引っ張られ俺は自分達のクラスへと向かう。クラスは五芒星の惑星に倣って学年毎にK・S・M・K・Dの5クラスへと分けられているようだ。そして俺達のクラスは……。
「1年M組か。何か嫌だな」
「え? 何が?」
「いや、何でもない」
中に入ると既に何人かは席に着いて座っていた。全くこちらに興味を示さない者も居れば、睨むようにこちらを見てくる者もいる。俺達はとりあえずに適当な席に座った。
「なんだか緊張するね、銀志」
蛍はそわそわしながら話しかけてくる。
「何をそわそわしているんだ? トイレならこの廊下を出て――」
「違うわよっ! わざと言っているの!?」
朝から騒がしい奴である。もう少し静かにできない物であろうか……。
「おはよー! 今日からこのクラスを受け持つ事になった斎藤 元です。趣味はネットゲームで男プレイヤーを騙して貢がせるネカマプレイです。よろしく!」
さらっと教員にあるまじき発言が聞こえた気がした。
「先生最低ですね……」
「ははっ、良く言われるよ」
何故か嬉しそうに受け答えする斎藤先生。
「それじゃ、僕の赤裸々な話を聞かせたからには君達にも話してもらうよ? 女子は3サイズも包み隠さずちゃんと申告するように!」
「「えーー」」
女子からはブーイングが挙がっている。ここまで酷い先生も珍しいな。
「それでは左端の席の方からよろしくお願いします!」
「……碧川玲です。趣味は……ありません」
紫色の肩まで掛かった長髪をした大人しい印象の女の子だ。喋っている様子から見て口数は少なそうである。
「いやいや! 何か一つくらいあるでしょう? 碧川さん」
「……それでは……斎藤先生の暗殺」
「えーと……今のは聞かなかった事にするよ。うん! それじゃ次!」
次々と予定調和の様に1人ずつ立ちあがっては自己紹介をしていく。
「紫藤銀志です。趣味は……妄想です。よろしくお願いします」
「随分、斬新な趣味だね」
「く、くれないほたるです! よ、よろしくおね○※□◇#△!」
「紅さん。落ち着いて下さい」
最後のは何かの詠唱呪文か……?
「来瀬 赤羽だ。趣味は盗撮――」
「来瀬君、後で職員室へ来るように。先生も興味あります」
金髪で目が鋭い印象の厳つい男子だ。しかし、世の為、彼らの為にもここは110当番するべきなのだろうか?
「斎藤先生、通報しておきました」
一人の女子生徒が既に通報していた。
「じょ、冗談に決まっているじゃないですか~。もうせっかちだなぁ。さてそれでは、昨日の実力テストの結果を返していきます。先程と同じで左端の人から取りに来てください」
遂に実力テストが帰ってきた。評価はA~Fに分類され、Aに近くなるほど評価は高い事を表している。
「はい、碧川玲さん。A判定おめでとう! さすが100年の逸材と言われるだけの事はあるね!」
「……いえ、それほどでも……」
「「おおー」」
「すげぇな!」
周りから驚きの声が上がる。A判定ということは満点か。なかなかやるな……。まぁ俺ほどでは無いが。
「紅さんはB判定です! この調子で行けばA判定も夢ではないでしょう。頑張ってくださいね」
「は、はい! ありがとうございます!」
蛍のくせにBとは生意気な……。まぁ良いだろう。俺には関係の無い事だ。
「それでは次は紫藤君! ちょっと……廊下まで来てくれるかな?」
「え? あ、はい」
なんだろうか?そんな周りに聞かれたくない程の逸材だったのだろうか。俺は廊下まで出た。
「君もなかなか凄いね。自分のクラスから100年の逸材と言われる人間が2人も出るとは思わなかったよ」
「はぁ……?」
「はい、これ。僕から言うのも酷だしね」
そして手渡された通知表。酷ってどうゆう意味なのか?そこに書かれていたのは……。
――認識能力F、集中力F、霊性F、肉体能力B、魔力測定不能につきF、総合評価F判定。
「因みに、F判定を出したのは歴代の生徒でも君が初めてらしいよ? まぁ落ち込まずにがんばってね」
俺は言葉を失った。我ながらテストにはかなり自信があった。それは多少、失敗した所もあるだろう。だがだ!
「先生! こ、これは納得できません! 魔力が測定不能ってどうゆう事なんですか!?」
「う~ん、そう言われてもね~……。魔力測定機で感知できない程、魔力が低かったのか、調子が悪かったのか……」
「そ、そんな俺って魔力低いんですか……?」
「まぁ……使い魔を見れば、一目瞭然というか……でも、これから頑張ればまだまだチャンスはあるよ! ファイトだ紫藤君!」
俺の肩を叩くと、斎藤先生は逃げる様に教室へと戻って行った。
俺は鳩が豆鉄砲が食らったような顔をして力なく自分の席へと戻った。
「銀志、どうだったの? 何か鳩が豆鉄砲食らったような顔してるけど」
おい、俺の顔は鳩みたいな顔をしているのか!? と突っ込みたい所だったが、その気力が沸いて来なかった。
「ど、どうしたの? 大丈夫? 銀志?」
心配そうな顔で俺の顔を覗いてくる蛍。
しかし、あれほど自信満々で受けた実力テストがF判定だと誰に言えようか?いや、言えるはずが無い。
「ま、まぁ。たまたま調子が悪かっただけだよ! 銀志なら大丈夫だよ!」
蛍は何かを悟った様に俺を励まし始めたが、俺の耳には届かなかった。
「は~い、それではチーム編成をします。4人1組で皆さん分かれて下さい。遅い子は先生とイチャイチャの刑に処っしますからね」
そして女子達は一斉に動き出す。それほどにあの先生が嫌なのか!?
「銀志~、私達は同じチームで良いよね?」
「……あぁ、良いんじゃないか」
俺は力なく答えた。周りの生徒も知り合いを探して組んでいるようである。
そしてTHE余り者である俺達は集まった。
俺こと力なき灰になった紫藤銀志 F判定 幼馴染の紅蛍 B判定 無口だが才能は学年トップの碧川玲 A判定 目つきが悪く趣味が犯罪の来瀬赤羽 C判定
こ、このチーム大丈夫なのか……?
「もう俺、棺桶で横になってても良いですかね?」
棺桶を見つけた俺は中に入って閉鎖空間にしばらく身を置きたかった。
「駄目よ銀志! それ死んだ人が入る物だから!」
「しかし、まさかチームにF判定が居るとはな……。足引っ張んなよ」
「そ、そんな言い方って!」
「………」
まぁ、普通の反応だろう。俺もF判定なんかがチームに混ざっていたら文句を言っている所だ。碧川も何も言わないが、そう思っているに違いない。
更に俺のせいで初っ端から空気が悪い……。
「はい、静かに! チームは決まったようですね? それでは早速、使い魔を使っての実習訓練をしましょう。皆さん、体育館に集まってください」
使い魔の実習訓練……。
嫌な予感しかしないのだが……棺桶に籠っていた俺は、蛍に紐で引っ張られながら体育館へと拉致られる事になったのであった。