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Day Of Destruction(改定前)  作者: スピオトフォズ
第二章 反撃の狼煙
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第二十話 栃木戦(Ⅳ)

――6月31日深夜・日光市郊外・第七混成大隊・第三陸戦歩兵中隊・デルタ臨時分隊――



 恐らく、一瞬だけ気を失っていた。


 意識が戻ると同時に、体中が痛むのを感じた。

 だが、体は動く。

 やばい……、逃げなければ!


 目を開ける。


 まず始めに見えたのは、倒れている久賀だった。

 その次に、その久賀に近寄る一機の近接型が、刃を付きたてようとしているのが見えて、全身が覚醒した。


「久賀ッ!!」

 手に突撃銃は無い!!

 背中に手を伸ばし、散弾砲を取ると同時に、近接型と距離を詰める。


 一歩近づけば十分だった。

  散弾砲の散弾は、ほぼ全弾が近接型に命中し、機能を失った近接型は2m程飛んで鉄くずと化した。


「久賀ッ! しっかりしろッ! まだヴェクトルが狙ってる!!」

 意識がないがうだうだしてれない!

 俺は久賀の右腕を肩に回し、引きづりながら歩いた。


「曹長! ヴォルコフ曹長! 生きてますか!!」

 俺は左手で散弾砲を構えながら、無線で呼びかけた。

 煙で視界が悪い!

 だがまだこの辺には近接型が潜んでいる筈だし、ヴェクトルもいるはずだ!


『黒崎! こっちには佐川がいる! 俺達はピンピンしてるが、久賀の姿が見えん!!』

「久賀はこっちで拾いました! 坂本は?」


『坂本は無理だ……、諦めろ。合流してさっさと逃げるぞ! ここはやばい!』

「了解!!」

 レーダーで曹長の姿を確認した。

 距離は近い、すぐ合流できそうだ。


「う……黒崎、か?」

 久賀が目を覚ましたようだ。


「やっと起きたか。ああ、無理すんなって! お前多分足首折れてるぞ」

 覚ましたとたん、自分で歩こうとするから制止した。


「まじかよ。通りで痛いと思ったら……。っていうか、悪い、こんな時に」

 バツが悪そうな顔をする。


「気にすんな。坂本は死んじまったが……、だからこそ俺達は生きて帰るんだよ、必ずな」

 坂本とは、さほど仲良くも無かったし、名前を知っていた程度だった。

 だが、レーダーをちゃんと見てれば、陰から飛び出してくるのは気づけた筈なんだ。


 それに気付けなかったのは、坂本自身のミスでもあるし、しかしそれをカバーする為に仲間がいる。

 そう考えると、あの時気付けなかった自分に責任が無いとも言えない。

 

「坂本が……。そうか……」

 久賀はそれ以上は何も言わなかった。

 同じ分隊の仲間が死んだんだ。

 思う所はあるだろう。


 そうして少し歩くと、煙の向こうから曹長と勇希が姿を現した。 


「和真! 久賀! よかった……、無事だったんだな!」

 勇希は左腕に血で真っ赤になった包帯を巻いていた。

 その視線に気づいたのか、


「ああ、俺はちょっとドジやっちまってな、ははは、早く医務室に転がりたいよ」

 と力なく苦笑いした。

 だいぶ血を流したな……、顔色が悪い。


「無駄話してる時間は無いぞ! 走れ!」

 曹長の声で俺達はひたすら南方面へと向かった。


「……、しかし、嫌に静かじゃないか? ヴェクトルはどこ行っちまったんだ?」

 久賀が周囲を見渡して言った。

 周囲は相変わらず土煙で視界が悪いが、レーダーに敵影は映ってない。


「スパイダーはその殆どが砲撃で片付いたんだろ。ヴェクトルは元々人間を認識しにくい。この土煙の中じゃ、俺達を視認出来ずに過ぎ去ったのかもな。まあ、俺と佐川で残った奴らはだいたい片付けたからな」

 突撃銃を構えながら、周囲を見渡してヴォルコフ曹長は言った。

 しかし、この人はホント特徴的な声の上に声が大きいから、この距離だと無線機無しじゃうるさいぐらいだな。


 無線は銃撃や砲撃音の中でも声が鮮明に聞こえるように音量調整がされていて、曹長のような大声でも白石中尉のような小声でも同じく聞こえるようになっているのだ。

 今は互いに距離も近いし、肉声でも声は聞こえるから無線を使っていないが。

 

「ッと! 噂をすれば敵だ! って……、何だよこの数は!!」

 久賀が思わず大声を上げる。

 レーダーに映った敵は、徐々にその数が増えて行く!


「曹長! こりゃやばいですって! 迂回しましょうよ!」

「もう遅い! 気付かれた! 大挙してくる!」

 勇希の気弱な声に、俺はレーダーを確認しながら返す。

 そろそろ肉眼でも見える!

 

 その数はもう、レーダーが真っ赤に見えるぐらいだ。

 赤い光点が、波のように近づいてくる。

 

「あのアパートを盾にしろ!! 機甲部隊が来るまで持ちこたえるしかない!」

 曹長は、そう言って四階建ての横長なアパートへ向かった。

 この辺はもう田んぼしかないので、盾に出来るのはこれぐらいしかなかった。


『ヴォルコフよりスネークアイ! 機甲部隊を座標F16-27へ送れ! 見ての通りスパイダーの大群に捕まった! もうここから移動は出来ない!!』

《こちらスネークアイ! 五分待て! 第七機動隊を送る! オーヴァー!》

 機動隊……、正式には機甲大隊に所属する、機動射撃中隊だ。


 高機動車に装甲と機関砲に、誘導弾システム(要するにミサイルランチャー)を装備した“重機動車”で構成される部隊だ。

 もともと高機動車は、輸送に特化した軍用車で10数名は乗り込める大型車だが、その座席を潰して武装を取り付けたのだ。

  

 機動力が物を言うSERF戦では有効な戦力だ。


『了解! 一秒でも早く頼む!』

 そう曹長が話している間に、敵が迫ってきた。


『黒崎、アタシはここで援護する。降ろしてくれ』

 そう言ったので、俺は久賀をアパートに止まっていた車のそばに降ろす。


『来るぞ!! 撃て撃て! 敵を近寄らせるな!!』

 ヴォルコフ曹長の声で、俺達四人は一斉に射撃を開始した。

 遠くから迫るスパイダーの群れはまるで津波だった。


「はははっ!! こりゃいい! 適当に撃ってもバカスカ当たるぜ! 照準いらずだなっ!」

 攻撃が当たるとスパイダーは怯む。

 それを利用して、適当に弾丸をばら撒けばある程度侵攻の阻止にはなった。


『ほんと、こいつら馬鹿だよな! 自分から弾幕に突っ込んで来やがるぜ!』

 こちらはただ、引き金を引いて左右に振るだけで、何機もの近接型を仕留める事が出来る。

 その上、密集しているので勇希が榴弾砲を打ち込めば、一発で三、四機も撃破することが出来た。

 こちらは五人、向こうは何百機も居るのに、圧倒的に有利だった。

 

 だが、それは最初のうちだけだ。


『黒崎ッ! 左側から回り込まれてるぞ! なんとかカバーしろ!!』

 俺は敵進行方向から左手に回り回り込もうとするスパイダーを抑えていたが、


「無理ですッ! 敵が多すぎてこれ以上は!!」

 撃っても撃っても奥から敵が繋がって押し寄せる!

 周囲が田んぼや畑しかないので見通しはいいが、だからといって防げるもんじゃない!


『こちら佐川! 弾倉、残り一個です! 榴弾砲はゼロ!』

 右手を抑えている勇希も限界に近い!


『俺も同じだ! だが弾幕を弱める訳にはいかん! 弾が切れたらナイフで戦え!』

 くそっ、無茶な事をと思うが、あながち冗談でも無いな!


『――ッ! まずいっ! 被弾警報! 砲撃型だぁぁーー!!』

 久賀の悲鳴のような声が聞こえた。

 遂に最悪の事態が来たか!

 

 こっちまではロックオンされてないが時間の問題だ!


『久賀! 掴まれ! うおおおぉぉ!!』

 久賀は骨折で動けないので曹長が引っ張っているようだ。

 そのすぐ後、久賀と曹長が抑えていた正面がレーザー砲弾の爆炎に包まれた。


「曹長、久賀!」

『大丈夫だ! ゴホッゴホッ! 生きてる!』

 煙でむせながらも曹長の声が無線に響いた。


 その直後、俺にも《被弾警報》とHMDに映った。

「くそッ! こっちにも砲撃型が! 後退する!」

 こうやって徐々に下がらざる追えないんだよな!!


『分隊! アパートの裏まで下がれ! 砲撃型が前進してる! ここにいたら狙い撃ちされるぞ!!』

 アパート前はそこらじゅうにレーザーが降り注いでいた。

 俺は弾切れになった突撃銃を投げ捨てて、散弾砲に切り替え裏まで走った。


 途中、先回りした近接型が何幾か現れたが、全て散弾砲で片付けた。

「ッ! クソッ! コイツも弾切れかよ!」

 残りの弾倉ももうない!!


 そんな時、また一機の近接型が立ちふさがった。

 くそッ、ナイフでやるしか――。

 思った時、その一機は右からの攻撃で粉砕した。


『よかった、間に合ったぁ……、でも、俺もこれで最後だ』

 そう言って勇希は突撃銃を下した。

 

 その勇希の後ろには、久賀と曹長もいた。


『もう周囲は敵だらけだ! あと一分弱! アパートの中で耐えるしかねえ!!』

 曹長がそう提案し、俺達はアパートの中へと逃げ込んだ。

 その頃には、レーダーは敵で真っ赤になっていた。


『各自、残弾報告!』

 アパートの中に入り、階段を上がると、すぐに近接型が追ってきた。


「もう残ってません」

『俺も同じです』

 俺と勇希は、左右を一人で抑えていたので余裕がなかった。


『アタシは散弾砲の残りが二個です!』

 侵入してきた近接型を、曹長に支えて貰い、散弾砲を撃ちながら久賀が言う。


『俺は突撃銃が二個だ。久賀、和真に散弾砲の弾倉をやれ、俺は佐川に突撃銃をやる』

 俺は曹長から散弾砲の弾倉を貰い、リロードする。

 幸い、アパートは狭く、ギリギリ近接型が入ってこれる程度しか無いので、ここなら籠城出来そうだ。


 思った時、踊り場の窓ガラスが割れ、近接型が侵入してきた。


「このッ!!」

 最後尾にいた俺はギリギリで反応し、散弾砲を撃つ。

 

 俺達は現在、一階手前の踊り場に集中し、ひたすら入口のスパイダーを攻撃していた。


『くそ、数が多すぎる! このままじゃいずれ侵入されますって!!』

 勇希が弱音を吐くが、その気持ちも分かる!


『スネークアイ! 機動隊はまだ着かないのか!? もう限界だ!!』

《こちらスネークアイ。第七機動隊は現在交戦しながらも急行中! もう少し持ちこたえろ!》

 くそッ! 最悪だ!! こっちはもう弾も無いってのに!!


 その時、遂に《被弾警報》の文字が現れた。

『クソッタレ!! 上だ! 上へ逃げろォォ!!』

 曹長の声で、俺達は一斉に階段を駆け上がった。

 下はスパイダーしかいないからこうするしかない!


 俺は先頭の勇希に続き、急いで駆け上がった。

 そして、アパートにレーザーが直撃し、凄まじい轟音と震動が俺達を襲った。


『ッ……、全員、無事か!?』

 曹長の声が聞こえた。


「なんとか……」

『いてて……生きてます』

『曹長乱暴すぎだぜ……、お陰で助かりましたけど』

 何とか無事だったが、一気に四階まで駆け上がった上に、背後はもう瓦礫でふさがってしまった。


 ここがコンクリート造なのが幸いして丈夫なので倒壊の恐れはなさそうだったが、退路は断たれた。

 ここでまたロックオンされたら、もう本当に逃げ場がない。


《第七機動隊よりデルタ臨時分隊!! 目標のアパートが見えた! 近接型が砂糖に群がる蟻のようにいるんだが、生きてるのか!?》

 来た!!

 ここにきて遂に救いの手が!!


 ようやく助かる兆しが見えてきたような気がした。


 


◆人物紹介◆


名前:若田涼(わかたりょう)

性別:男

年齢:24歳

階級:一等兵

所属:第七混成大隊・第三陸戦歩兵中隊・第六突撃小隊(デルタ6)・第四分隊

兵種:狙撃兵(主武装:突撃銃、狙撃銃)

容姿:短く切った黒髪、小顔。体つきは割と細いが、見た目以上に筋力や体力はある。

一人称:俺

三人称:分隊員は~先輩。それ以外はさん付け。

趣味:ツーリング、釣り、キャンプ。


詳細:第一印象はさわやかな青年。

人当たりも良いが、言葉づかいは割と適当で「~ッス」が特徴的。

第四分隊の新入りなので、分隊の皆を尊敬している。

趣味のツーリングで春奈とよく話していたり、勇希の馬鹿話を聞いていたり仲はいい。

実はWAP極東本部内に姉がいる。


戦闘では類稀なる狙撃スキルを発揮していて、浦田と並ぶ後方支援の主力だ。

訓練部隊の中で、狙撃技術ならズバ抜いてトップだった。

それを柴田中尉がウクライナ派遣へ抜擢し、第四分隊へと配属された。


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