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箱庭のテラフォーミング 〜全てが監視されていたなんて〜  作者: 大神みや
海の街イサウィラ編

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16/27

第14話 海の街の黄金と、赤土の都『マ・カレシュ』への招待状

「イサウィラ」

その街は、吹き荒れる海風と塩害によって死にかけていた過去が嘘のように、活気と豊かさに満ち溢れていた。


俺がこの街に来てから、丸二年が経とうとしていた。


「風車の調子はどうだ?」

「完璧よ! カイが設計図を見つけてくれたおかげで、街中の水路に真水が行き渡ってるし、夜には街灯まで点くようになったわ!」


セリアが、海岸線に立ち並ぶ巨大な風車を見上げながら得意げに笑う。


魚の残渣を利用した『魚肥』と、塩を洗い流す溝。

防風林の壁。

そして海風を動力と電力に変える風車のインフラ。

俺の持つ技術と、運営システムの『都合の良い偶然』をフル活用した結果、イサウィラは今や、この地域最大級の農業と漁業のハブ都市へと成長を遂げていた。

カオルがいつ来ても、一生安泰に暮らせる完璧な拠点だ。


「大将! 今回の取引の金だ。とんでもねえ額になったぜ」


街の商人組合のトップが、震える手で分厚い皮袋をいくつも俺の前に差し出した。

風車の特許や、防風林の設計、安定した作物の提供。

それらに対する報酬は、俺が一生遊んで暮らせるほどの莫大な富となっていた。


「ああ、ご苦労」

俺は皮袋の中身を確認することもなく、そのままセリアの胸に押し付けた。


「えっ……ちょっとカイ!? これ、全部で銀貨何万枚入ってると思って……!」

「俺は旅に出る。荷物になる金は要らない。

ルタ村の連中への仕送りと、この街の風車の維持費……そして、いつかカオルがここへやって来た時のための資金として、全額寄付する。好きに使え」

「はああっ!?」


セリアが素っ頓狂な悲鳴を上げ、隣にいたレイラもポカンと口を開けて固まっている。


(……相変わらず、バカな男)

だが、セリアの青い瞳は、呆れながらも確かな熱を帯びていた。

自分の富や名誉には一切執着せず、ただ結果と拠点だけを残して立ち去る。

そのストイックな後ろ姿に、彼女は――いや、天空で監視している視聴者たちも、すっかり魅了されていた。



俺は古びた革のリュックサックを背負い直した。



「次はどこへ行く気?」

レイラが、少し寂しそうな、けれど覚悟を決めたような顔で尋ねる。


「『マ・カレシュ』だ。ここからずっと東にある、内陸の巨大交易都市。あそこなら、カオルの足跡が必ず見つかる」


「……ちょうどよかったわね」

セリアが、一枚の豪奢な羊皮紙を俺に差し出した。


「マ・カレシュの領主からよ。あんたがルタ村やこのイサウィラで起こした『奇跡の緑化』の噂が、とうとう大都市のトップの耳に入ったみたい。『都市の周辺の土が急速に砂漠化している。どうか君の力で食い止めてほしい、莫大な報酬を用意して待つ』ってさ」


俺は羊皮紙を受け取り、鼻で笑った。

「報酬はいらないが、大都市のトップに繋がれば、人探しにはこれ以上ない好都合だ」


俺の言葉に、セリアはニヤリと笑った。

「そう言うと思ったわ。……レイラ、あんたどうするの? ここでリタイアして、おとなしく村に帰る?」

「冗談! カイの隣は私の特等席なんだから!」

レイラが俺の腕にギュッと抱きつき、セリアに向かってあっかんべーをする。


(……やれやれ。この二人の小競り合いも、すっかり日常になっちまったな)


俺は古びた革のリュックサックを背負い直した。

「……二人とも、置いていくぞ」

赤土の荒野を歩き出した俺の左腕で、デバイスがザザッとノイズを発した。

いつものノイズとは違う。何かが、混じっていた。


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