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プロローグ
赤茶けた大地。
降り注ぐ灼熱の太陽。
俺はスコップを突き立て、乾ききった土を掘り返す。
一年が経つ。
最初の頃はコーヒーの味も、乾いた空気もすべてが馴染まなかったが、今はこの村の匂いも、子供たちの笑い声も、すべてが愛おしい。
「カイ、帰国まであと何年だっけ?」
幼馴染のカオルが、そう言って笑った。
俺がこの不便な僻地へ志願したのも、彼女が「カイの作る野菜を、世界一過酷な場所で食べてみたい」なんて言ったのがきっかけだった。
俺は呆れながらも、その笑顔が見たくてここまで来たのだ。
だが、あの日の午後。
村外れの滝のしぶきが、逆さまに空へと吸い込まれていく。
「っ、カイ!?」
カオルの悲鳴が響く。
だが、指先が触れた瞬間、重力が物理法則を無視して横転した。
――しまった。俺が……俺がこの場所へ誘わなければ。
視界が真っ白に塗りつぶされる中で、最後に見たのは、必死に俺を掴もうと宙を舞うカオルの絶望的な表情だった。
『保護区へ転送します』
無機質なアナウンスが、決して後戻りできない場所への扉が開いたことを告げていた。




