異世界からの勇者
このお話の舞台はロン王国
ロン王国は王様と王妃様が夫婦仲良く治めている王国で、
その王国の住人として生まれた人は一生飢えず、
幸せに暮らせると言われていたほど福祉が整っていた。
また王様と王妃さまは政治の仕方がうまかった。
今の王様と王妃様が統治し始めてからは他国との戦争も一度もないままで
みんな幸せに暮らしていた。
そんなある時、空にまがまがしい雲が現れ
魔王が生まれた。
昔々からロン王国の隣には森がありそこには魔族と呼ばれる
人間に好かれぬ一族がいた。
先祖は人間に悪さをせずにはいられないし
時には人間の命さえをも弄ぶ恐ろしい一族だ。
時代の変化とともに魔族も変わり人間に友好的になった。
ロン王国は魔族ともうまくやっていて一度も衝突が起きたことはなかった。
だが、魔族にはときおり先祖の血、いたずら好きの血の濃いものが生まれる
その力は絶大で魔族にとっても厄介だった
ほかの魔族をその意思にかかわらず改変させ使役する
それが魔王だ。
赤子でいる時間は少なく
すぐに急成長する。しかも並の人間では近づくことさえできない
魔王を倒すことは魔族にも大切なことで
代々ロン王国は魔族と同盟を組んでいた
魔王が出たらロン王国の人間が討伐する同盟だ
魔族も魔王を倒す時、使役された魔族から犠牲が出ても仕方がないと承知している。
ロン王国には
人間を救うための伝説が残っていた
「王様と王妃様の子には魔王を倒す能力がある
魔王が生まれてからその子が生まれ
その子は魔王よりも成長が早い
その子に魔王を討伐させることが一番の解決策だ。」
という伝説だ。
この伝説には続きがある
「もし、子を何かしらの理由で送り出せないのならば
異世界から勇者を召喚しろ
生まれる子より勇者は強い
そして勇者に魔王を討伐させるんだ
何も心配はいらない
こちらに召喚した勇者は死なず、
病気にもならないし、けがもしないし、痛みも感じない
だが飯は良いものをふるまえ
勇者はこちらの飯を食うともっと強くなる
住環境もよくしてやるとよい
もっともっと強くなるからだ。
魔王討伐が終われば勇者は次の日には元の世界へ帰る
向こうの世界では勇者が送り出されてから時間がたっていない
またお礼にはこの世界に落ちている石を持たせてやるといい
向こうではたいそう高価なものなのだそうだ」
「召喚の手順は…
どんな魔導士でもいいが5人集めて円陣を組め
5人の魔導士の願いの力が必要だ
5人に出てほしい場所を願わせて
この世界に落ちている石を円陣の中央に投げ
手を合わせ願わせろ
空がきれいに晴れ日差しが一瞬強くなれば成功だ
願った場所に降りてくるだろう
降ろす場所は打ち合わせをして決めておくとよい
出た場所を変更することは不可能だ」
魔王が生まれた直後王妃様から王子が生まれた
その王子の成長速度が速かったので
この王子は魔王を討伐できる能力があるとわかった。
いままでロン王国の歴史上このようなことは何度か起きた
その度に子を向かわせたのだ失敗したことはなかった
しかし
今回は少し違った
魔王に強すぎる力があるようなのだ
いつもは大きくなってから支配がはじまるが
もう生まれた時点から魔族たちへの支配がはじまっていた。
王様と王妃様は
国の主として彼らは賢く状況を判断し、強すぎる力をもった魔王に王子が立ち向かっては負けてしまうと考えた。
そもそも今回生まれた王子が初めての子供だった
親としても可愛いわが子を失うわけにはいかなかった。
だから召喚の道を選ぶことにした。
その後王子は立派に成長し青年になった。
そろそろ儀式をしようと思い王様と王妃様は
魔導士を集めた
初めにきてくれた1人目は博識な魔導士で
2人目は優しい魔導士
3人目は冷静な魔導士
4人目は麗しい魔導士だった。
そして最後の5人目は大の子供好きで
王子の為ならばなんだってすると意気込んでいた。
石も持ってきて
召喚の儀式を始めた
王様と王妃様がしばらく相談したのち
王様が言った
「勇者を召喚する場所は城の大広間にしよう、みんなそこを思い浮かべながら願ってくれ」
みんなそれに同意し頷く
みんなそれを願って儀式をした
一人を除いて
最後の魔導士は子供が好きすぎたのだ。
だから強く強く
王子の為になら、王子の為なら
と王子を思い浮かべて願った。
儀式は成功したように思われた。
日差しが一瞬強くなったからだ
王様と王妃様が勇者にいろんな説明をしようと
一同で大広間に向かった
だが、城の大広間をみても人がいない…
みんなどういうことかと口を開けて呆然としている。
王妃様が言う
「皆様、ここを思い浮かべられて願われましたよね??」
その言葉を聞いて
最後の魔導士は、はっ、となり
王子の部屋へ走ってゆく
一同は状況がよくわからず
最後の魔導士に続いて走ってゆく
王子を見るなり
全員が驚き数秒間黙った
そんな空気の中
王様が初めに口を開いた
「王子が勇者と合体?して、いるではないか…?」
すると王子と勇者が同時にしゃべりだした
彼らも状況が把握できていなかったようで
今気づいたので凄く驚いたのだ。
声が重なって誰が何を言っているのかわからない。
時々、王子が見えたり勇者が見えたりする
皆、本当にどうなっているのかと戸惑いを隠せない様子だった。
冷静な魔導士が取り乱しながら言った
「合体では無く、王子と勇者がかさなっ、ているのか??
まさか、王子の座標と、ど同位置に召喚された!?」
王妃が驚きながら王子に言う
「どこか痛いところはない??」
王子は
「大丈夫だよ、痛いところはないし体にも違和感はないよ」
と答えた
その後
王様が勇者になぜ呼んだのか、や魔王を討伐すれば帰れることなどを事細かに説明した。
勇者は納得しすぐ承諾した。かなり良い条件だったからだ。
そもそも異世界から来た勇者は人を何かしらで救いたいと考えていたし
すごく勇気のある人間だったからぴったりだった。
問題は重なってしまっているという状況だ
状況が落ち着いてきたところで
皆が最後の魔導士のほうを見た
皆に見られている魔導士は、はばつが悪そうにしている
しだいにその空気に耐えられなくなり
最後の魔導士は土下座し全力で謝罪した。
王子の為にと思ったもののその王子に迷惑をかけることになってしまったことで
自分を許せず、罪悪感を感じ心から反省していた。
王様と王妃様はお優しかったので反省している魔導士に処分は考えなかった
歴史上初めて召喚するのだからこんな事故が起きてしまっても仕方ないだろうと考えた。
その後、博識な魔導士が言った
「5人分の願いの力を最後の魔導士は持っていたのでしょう
でなければ不十分で召喚できないか下手すれば王子か城かに反動がきて危険が及び危なかったと思います。」
王様は言った
「じゃあ最悪の場合は避けられたのだな…それは救いだったな」と
また、少し試したいことがあると王様が続けて言う
「王子ちょっと歩いててみてくれるか?」
王子は少し歩いてみた
すると勇者とぴったり重なったまま歩いている
「次は勇者が歩いてみてくれ」と王様が言う
勇者が少し歩くと
王子とぴったり重なったまま歩いている。
それを見て王様は「次は王子は右、勇者は左に歩いてみてくれ」と言った。
勇者の力が強いせいか左に少しづつ進む
「本当に重なってしまっているのね」と王妃様が言う
「逆向きの力で引っ張れば行けると思ったのだが…」と王様が言った。
冷静な魔導士が冷静さを取り戻して言う
「これを解決できなければ王子と勇者のお二人で討伐に行くことになりますね…」
王様と王妃様は悲しそうな顔になった。
王子を魔王討伐に行かせたくなかった
しかし、仕方ないとわかっていた。前例がないから重なってしまっているのはどうしようもないし
なるべく早く討伐しないと魔王はもっと強くなる。
そんな王様と王妃様を見て
勇者はなにか覚悟を決めた顔で真っすぐ彼らの目を見て話しだした
「私が王子を無事に連れ帰ります
そのことを必ず約束しますから、どうか悲しまないでください」
勇者にも家族がいたからその気持ちが理解できたのだ。
王子も
「父上、母上僕がただでやられてしまうとは思わないでよ、
強くなって自分の身どころか勇者まで守ってみせるよ」と笑って言った
それを聞いた王様と王妃様は
泣きながら
「ありがとう…」と言った。
彼らは勇者と王子を共に送り出すことにした。
ぴったり重なった体の使い方を学ぶため
しばらく戦いの訓練をしてから
勇者たちは討伐の旅に出ることに決めた。




