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 さて、楽しい楽しい第二幕の始まりだ!簡単に潰れて白けさせるような事はしてくれるなよ?


 デルクの声を皮切りに強化されたアンデッド達の足が進み始める。


 それはルイスが張った結界に触れても怯む事もなく、絶えること無く結界をその手で叩き続ける。


 そしてその行動の変化はそれだけに留まらない。


「拙い!クウちゃん下がって!挟まれるわ!」


 外に居たアンデッドも強化され、倒すのに僅かに時間が余計にかかるようになっていたクウちゃん。


 その苦戦を好機と見たのか一部のアンデッドが墓所の中から外に向かって移動を始めたのだ。


 それを見たアンジェがクウちゃんに指示を出しながら援護射撃を行う。


 そのおかげで目の前の敵の群れに隙が出来、クウちゃんの口から固有魔法が放たれる。


 それは咆哮に術式が乗った種族固有の魔法で、さっき使ったホーリーライトよりも貫通力のある光線で敵を貫く。


 それによって相手の足が止まるのだがすぐに埋まり始める。


 この機を逃せば下がらなくなるので全力でこちらへの道を作る事でクウちゃんをこちらに戻らせる事に成功するが、戦況は非常に厳しい。


 それは少し離れた所でアンデッドを寄せ付けずに常に動きながらデルクと交戦しているリンちゃんも同じことが言える。


 相変わらず攻撃が当たらず、いなされて嫌らしいタイミングで反撃を受けているのだ。


 有効打は貰ってはいないが、さっきよりも動きの質が落ちてきている。


 甘い甘い、そんなんじゃいつまで経っても当たらないぞ?所詮は知性の足りない龍族だな


 そう言って嘲笑するデルクに歯噛みするのが分かる。


 非常に拙い状況だ。


 このままじゃジリ貧、追い詰められたらその後は……


 嫌な想像が頭を過ぎる。


 群がられズタズタにされ苦痛の中に死んで、その後も玩具にされる私達。


 そしてその後はお兄ちゃんと戦う盾にされて……そんなの嫌!


 打開策を考えないと。


 そうは思うけど、一つしか思いつかない。


 しかもそれも凄く勝算の低い上に失敗すれば目も当てられなくなる。


 それでもそれ以外思いつかなくて迷ってしまう。


 これは非常に危うい賭けだ。


 今は結界を張る事でアンデッドの進行を抑えながら強化魔法を使ってら状態でなんとか戦況を保っている。


 しかしこれをやる時は少しの間だけどそれを全部解かないといけない。


 そうなったら大丈夫なのか、私には判断が付かなくて迷ってしまう。


 アンジェとクウちゃんの戦う様子を見ても大丈夫かどうかのギリギリのラインのどちらかを判断出来ない。


 そうして悩んでいると不意にアンジェと目が合う。


「ルイス、何迷ってるの!?」


「アンジェ……」


 私はそれをアンジェに話す。


 可能性のある事とそれにかかる時間、そしてその為に必要な事とリスクや見立てを。


 それを話して難しくて黙ってしまう。


 でも、そんな時アンジェは笑ってくれた。


「その賭け乗ったわ!クウちゃんもいいわね?」


 ひと鳴き、肯定の意思の籠もった泣き声が響く。


「決まりね、やるわよ!ルイス!」


 その声に私の迷いは絶対に折れることの許されない決意に変わった。


「うん!覚悟は決めた!みんな、力を貸して!」


 そう言って私は両手に掴む杖に力を込めた。




 私達のやらなければいけない事はこうだ。


 私は儀式魔法の位階を冠する聖魔法、#広域の聖属性浄化魔法__ワイドスペクトラムホーリーピュリフィケーション__#を使わなくてはならない。


 それは普段なら司教クラスの指揮者が10人の司祭を率いて半刻の準備と詠唱の後に使用する物でこんな状態では選択肢にすら入らないものである。


 でも今私の手にはお兄ちゃんが作ってくれたこの杖がある。


 それは聖属性を高めるように素材を厳選した上でリンちゃんのお母さんからもらった素材を使った上で最新の注意を払って作ってくれたのを更に私の使い方に併せて調整してくれた物だ。


 これのお陰で聖属性の魔法の使用が以前の数倍は楽になっている。


 それは威力の面でも、制御の面でもだ。


 そのお陰で私はこの賭けをする選択肢が出るところまできているのだ。


 ネックとなるのは2点、魔力の量と準備をする為の制御である。


 その二つにおいて私は聖女であることと、加護をもらった事により通常の司祭達とは比べ物にならないほど優れている。


 これは一般的な計測による平均値が出ているのでそれと比べた数値である。


 それでも10人分には満たないのだけど、ここに儀式魔法の難しいところがある。


 10人の魔力を調律して放つのが儀式魔法である。


 通常単独での魔法行使にも魔力のロスと言うのは発生している。


 それはさけられないもので、儀式魔法もそれは同様、いや、その傾向は更に強くなる。


 それは当然の事だろう、違う人間の魔力を合わせた後に調整しているのだ。


 同様に詠唱も通常の物の速度に比べれば遥かに遅くなる上にその前提の準備にも相応の時間がかかる。


 これは調整を失敗すると効果が大きく変化する為だ、それを調整するのが位階の高いものになるのは当然だろう。


 しかしそれを独りで行使する。


 それが発動するという前提になるのだが、その場合その効率は大きく上がり、独りで行う分準備時間も短縮できる。


 それがこの賭けにおいての勝算。


 お兄ちゃんがの力を借りて初めて立てるステージ。


 それをやり遂げるために、私は今助走をつけるように防壁と強化の魔力を勢い良く流して止める。


 さあ、私達の勝負の時間だ!

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