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その男は白髪の角刈りに赤い目で青白い顔は傷だらけ。
上から下まで真っ黒なロングコートのような物に下は少し余裕のあるズボンにブーツで肌の露出は首から上だけ。
「ったく、日が落ちたからいいものの、物騒な事をしてくれるもんだぜ」
やれやれと言う態度に反してその目は猟犬のように鋭く、禍々しい殺気が溢れ出るその姿は言葉どおりの態度とは思えない。
「貴方何者?」
その禍々しさに顔を汗が伝う。
「何者~?そんなの見ての通りのバンパイア!北におわす我が主の4人の柱が一人、暗き蝙蝠デルク様よ!」
そう名乗った瞬間にリンちゃんが飛び出す。
宙を滑るように駆け右手を振るう。
しかしそれが地を砕いたところで声が響く。
「おーおっかねえな。何かの餓鬼だってきいてたのによりにもよって聖龍かよ、しかもそっちの餓鬼は聖獣だろ?おっかねえおっかねえ」
そういう声には恐怖は混じらず、ただ単純にからかう様な声音で続ける。
「そんなの全部相手にまともにやれねえからな、汚い手を使わせてもらうぜ」
そう言って少し離れたところに現れたデルクは指を鳴らして高らかに声をあげる。
「仕込みは上々!ショータイムだ!」
そして悪夢は幕をあげる。
その言葉に墓所が揺れる。
それはあちらこちらで何かが蠢く震動が起こり、それが十字架を揺らしそして。
「ぐぅうぅうぅぅうう」
呻き声と共に十字架が倒れる。
「さあさあ、同じ人間同士、醜く争ってくれや!」
その言葉を契機にして無数のアンデッドが地面を破って湧き上がってくる。
その中には既に白骨化しているもの、腐乱して原型の分からない者もいたのだが……
「あ、あ……」
容貌が分かるものを見てルイスが顔色を失って言葉にならない声を発する。
「うそ……」
そして手を口元に当てて言葉を失ってしまうけどその後に続く言葉を聞いたら仕方ないと思う。
「村長さん……それにみんなも……」
しかしそうして絶句しているわけにはいかない。
「ぐううぅううう、いたい、いだい」
その言葉と共に彼らはユラユラと揺れながら歩み寄ってきているのだ。
「はっはぁ!村の人間同士仲良くやってくれや!それとこいつはおまけだ!」
そういって指を鳴らした瞬間、墓所の外側にさっき倒したアンデッドが増える。
「増援、これじゃ……」
そうして途惑う内にデルクが村人のアンデッドと共に近付いてくる。
「さあさあ、これをどうするかな~?」
嗜虐的な笑みを浮かべるデルクにリンが呟く。
「クウ、外のをアンジェお姉さん、ルイスお姉さん、村の人達をお願い、私はあいつを」
そう言った瞬間リンが飛び出す。
「わかった!」
それに続いてクウも走り出す。
だがしかし、ルイスはまだその衝撃から立ち直れずに呆然としている。
「みんな、なんで……」
「ルイス、ルイス!」
そう言ってルイスを揺するとハッとして目を覚ます。
「あ、アンジェ、私」
「考えるのは後!今はこの場を凌がないと!」
「わ、わかったわ!」
呆然としたルイスが強化魔法を展開するのを横目に私も弓を構える。
「ルイス」
「うん、アンジェ、遠慮しないで」
「わかった」
涙を浮かべながら頷く彼女に返事を返す。
そうして前に視線を向けるとリンちゃんがデルクと対峙している。
聖属性を生まれながらに宿して種族としての力も強大な聖龍のリンちゃんだが、相手も劣るとはいえバンパイアロードだ。
そしてその生きている時間には圧倒的な開きがある。
必然技量は向こうに分があるわけで。
(潰れろ!)
「ひゅ~こええこええ」
リンちゃんの振り下ろした右の爪撃を軽口を叩きながら避けるデルク。
それに2撃3撃と繰り出していくが当たらない。
「はええし、おそろしいが、甘いぜ!」
そういって瘴気を纏った小刀を突き出す。
(ちょこまかと!)
寸でのところで爪を割り込ませて弾くが、その顔には焦りが浮かんでいる。
他方クウちゃんのほうはというと順調に数を減らす事はできているんだけど。
(数が、多い)
クウちゃん一人では数が足りずに墓所の敷地に少しずつ包囲網が狭くなっていっている。
それに対してクウちゃんも頑張っているのだが、それでも追いつかず、少しずつ動きに制裁が欠けてきている。
どちらも戦況が思わしくないのを見て私はルイスに声をかける。
「ルイス、辛いかもしれないけど墓所の中をお願い、私は外を」
「分かったわ!」
そう言ってクウちゃんと逆の方に射撃を開始する。
そしてルイスに目を向けると詠唱をしてくれている。
よかった、なんとか立ち直ったわね。
そう思いながら全体を見ながら射撃を続ける。
リンちゃんが耐えられるかとアンデッド達を殲滅してルイスが手助けできるかが勝負の分かれ目ね……
そう分析して射撃をしながら戦況を良くするために矢を散らす。
「#聖なる光__ホーリーライト__#」
ルイスの魔法が当たりを照らしアンデッドの一部を塵に返す。
それに耐えたアンデッドの戦闘を射る。
そうして戦況を進めていくのだが。
「おーおー、立ち直ったか、このまま進むと面白くねえから、少しあげるぜ?」
デルクがそういったところでどす黒い瘴気が辺りに散らばる。
「うそ!?まさか!?」
そう焦りの声を上げるルイスに嫌なものを感じる。
「どうしたの!?」
「あれは、アンデッド強化の、この状況で使えるっていうの!?」
その言葉に今度こそ私の背中を冷や汗が伝う。
あれは行使させてはならない。
そう焦り魔力を多く込めてデルクを射る。
リンちゃんも本能で感じ取ったのか攻撃の苛烈さが増すのだが。
「はーっはっはっは!残念!手遅れだよー!」
その言葉と共に瘴気が降り注ぎアンデッド達に定着していく。
悪夢は覚めない。
その凶悪さを増して、更に続くのであった。




