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技術と魔術を駆使する魔術師 ─『異世界交通路』爆破事件の謎─  作者: どこかの平凡
第1章 魔術師学校学生編
10/11

第8話 魔術サポートは素晴らしい ※タイトル回収

 基本級を習得した日の夜、僕は裕也先輩の部屋に行った。

 

 ピンポーン─

 

 「誰?」

 「大江修司です。」

 「ん?...あー、修司か。ちょっと待って。」


 


 ガチャッ─


 扉が開く。


 「どうした?」

 「いや、きほ...」

 「まあ入れ入れ。」


 話聞けよ。

 まあいいか。

 

 「失礼します。」


 部屋にはいる。

 裕也先輩の部屋も構造は一緒。

 右手に洗面所と浴室、左手にクローゼット、奥に進み、キッチンや机、テレビにベッド、ベランダ。窓からは大都市ケイネスの高層ビル郡の夜景が一望できる。

 

 キッチンには食材が置いてある。どうやら自炊しているようだ。

 勉強机には何かの機械と、工具が散らばっている。

 何かを修理しているのだろうか。


 部屋を見回していると、先輩がお茶を運んできたので、席につく。


 「で、何の用だ?」

 「今日、基本級を完全習得しまして...」

 「ほう」


 そう言って、裕也先輩はコップを取り出した。


 「じゃあ、俺に水を注いでくれ。」


 そう言われ杖を取り出し、コップに水を注ぐ。



 ジョロジョロ───

 

 コップに水が溢れる。

 若干水圧の調整に難ありだが、まあ許容範囲だろう。

 後でちゃんと練習しておこう。


 「うむ、合格だな。」


 一応オッケーは貰えた。


 「あの、先輩。」

 「何だ?」

 「一応基本級は習得しましたし、実験台になるんですよね、僕。」

 「そう言えばそうだな。では、今週の日曜日空いてるか?」

 「はい」

 「じゃあ決まりだな。その日、俺の家に来てもらう。」

 「はい。それで、一体何の実験台になるのでしょうか?」

 「だから、親父の趣味だって。」


 どうやら教えてくれないみたい。

 基本級出来たら教えてくれるって言ってたのに。

 

 「じゃあ、また今度。」

 「はい、ではおやすみなさい。」


 軽く話を終え、部屋に戻り、兄と美奈の3人で食堂に向かう。

 最近食堂ばっかりで食べてるから、先輩を見習って自炊したほうがいいだろうか。

 今度アルモ家にねだって、キッチンセット一式を買ってもらおう。




─日曜日─


 休日でも朝のトレーニングは欠かさない。

 普段は1時間ちょっとしかやらないが、日曜日は2時間たっぷり動く。

 まあ、先週は動きすぎで疲れて、休みを棒に振ったが、今日はそんなわけにはいかない。


 トレーニングを終え、部屋に戻り、シャワーを浴びて、朝食を済ませ、少しゆっくりしてから先輩の部屋に向かう。


 


 ピンポーン─


 「うーい」

 「裕也先輩おはようございます!」

 「お前準備早いな。にしてもお前の普段着は何だか豪華だな。」

 「ええ、まあ」


 そりゃ、あの屋敷から頂戴してきたものだからな。


 部屋に入ると、裕也先輩は丁度朝食を終えたところらしい。 

 

 とりあえず準備を終えるまで部屋でウロウロする。

 机の上にはまだ工具が散らばっている。

 工具と一緒に、とある機械も置いてあるが、先日お邪魔したときより修理が進んでいる気がする。


 魔術師目指しているのに、機械にも精通しているとはすごい人だな。

 感心しながら機械をじろじろ見て、触ろうとすると怒られた。

 

 「裕也先輩、これって何の機械ですか?」

 「いずれわかるさ。」


 教えないと言わないところ、何か怪しい。

 もしかしたら、あの機械、僕が実験台になる事と関係しているのだろうか?






 結論。

 ドンピシャだった。

 あの後、先輩が準備を終えて、裕也先輩の家に向かった。

 先輩の家は、アルモ家の屋敷と比べれば雲泥の差だが、それでも大きく立派な家だった。


 その後客間に1人で通される。


 客間には、色々な機械の玩具が置かれていた。

 それもただの玩具ではない。

 技術と魔術の『融合術』で作られた物だ。


 融合術で作られた物というのは、色々ある。

 その中で代表的なのが、魔力を注ぐことで作動する機械。


 例えばこの水鉄砲。

 スイッチがいくつもあり、見た目は電子機械であるが、実際は魔力を注ぐことで、水鉄砲の中で魔力が水に変換され、発射されるのだ。


 更にこの水鉄砲、スイッチ1つで水圧を変えたり、発射方法を変えられる玩具なのだ。


 これはあくまでも例の1つであり、融合術は異世界交通路を通してこれまでも、そしてこれからも発展していく筈だったのだが...


 融合術で作られた玩具に見とれていると、誰かが部屋に入ってきた。


 「やーやー、どーもどーも。」


 年齢は40代後半だろうか?

 濃い髭が印象的な中年男性である。

 男は、明るい顔で勢いよく腰を掛ける。


 「いやー、今日はよくお越し下さった。私は裕也の父で、こういう者です。」


 そう言うと、男は名刺を差し出してきたので、慌てて受け取る。


 


 株式会社デイリーマジック、技術責任者、津田 伸一郎。


 


 デイリーマジック? 恐らく融合術の会社名だろう。

 こういう会社は魔力のこともあり、ケイネス側に会社を置くパターンが多い。

 っと、僕も自己紹介しなくては。


 「ケイネス魔術師学校1年、大江修司です。裕也先輩にはお世話になっています。」


 まだ片手で数えられる回数しか会ってないけどね。

 ま、ジュース奢ってもらったし、いいか。


 「そうか、君が修司くんか。」


 すると突然、先輩の父が僕の手を握ってくる。

 僕は女の子に手を握られたいです。いや、そんなことはどうでもいい。

 にしても彼の目が輝いている。何か訳ありだろうか?

 

 「裕也にもようやく友達ができたか。よかったよかった。」

 「ようやくって、先輩もう3年生ですよね?」

 「そうだよ。でも、今まで裕也はボッチを貫いてきたからね。」


 いやいやいや、あのノリからボッチなんて想像できませんて。

 だっていきなり声かけて、冗談言って、ジュース奢るんですよ。

 むしろあれでボッチを貫いてきたなんて逆に凄いわ。


 「何はともあれ、これからも裕也と仲良くやってくれ。」

 「勿論です。」


 僕にとっても先輩は学校での初めての友達だからね。

 今のところそれ以外に人間関係作ってないし。


 「さて、今日修司くんに来てもらったのは外でもない。あるものを渡したくてね。」

 「それで僕を実験台にするのですか?」


 彼は苦笑いする。


 「そう言われて否定は出来ないな。まあ、実験台より、お試しと言ってくれ。」

 「そうですか。」


 お試しか、よかった。

 実験台って言われたら何かされるって思うじゃん。

 最初はそう思ってたばかりに、今はちょっと安心感がある。

 

 だって、趣味って地点で明らかに怪しいじゃん。

 普通疑うでしょ。

 なんて思ってると、先輩父は声を出した。


 「裕也!例の物を持ってきなさい。」

 

 ドアの向こうから小さく返事が聞こえる。


 「修司くんは今、杖を持ってます?」

 「はい。」 


 何かがあったとき用に、一応杖は携帯している。

 最も、何の対処もできないと思うが。


 

 ガチャッ─


 

 先輩が入ってくる。

 彼の右手にはとある物が握られている。

 あれが例の物だろうか?

 大きさはボールペンより一回り大きい程度。

 ボイスレコーダーに似てなくもない。

 

 先輩は例の物を机の上に置く。

 色はシルバーで、ボタンが2つ付いている。

 あっ、これは先輩の机にあった機械じゃん。

 でも一体これは何だ?

 と思っていると、先輩の父が口を開く。


 「これは何だ?って思っただろう?」

 「え?ああ、はい。」

 「私はね、仕事をやっている傍ら、趣味で融合術の道具を色々作っているんだよ。」


 この機械が何か教えてくれるんじゃないんですね...


 「そうなんですか。」

 「まあね。私の立場を分かりやすく言えば、きちんと仕事を持っている、某探偵漫画の某博士かな。」


 おお、それを自分で言っちゃいますか。

 腕に大した自信をお持ちで。


 「そしてこの機械が、『魔術サポート』だ。」

 「魔術...サポート...ですか。」

 「百聞は一見に如かずだ。とりあえず見せて見ようじゃないか。」


 まだ百聞すらしてないんですがね。


 「では修司くん。杖を貸してくれませんか?」

 「はい」


 慌てて杖を渡す。


 「ありがとうございます。では...」


 すると彼は杖に例の機械を当てている。

 まず最初に電源ボタンらしきボタンを押す。

 

 次に、その下にあるボタンを押すと、機械の中からベルトのようなものが出てきて、杖を固定したではないか。

 機械と杖はくっついている。


 すると誰かが何かを喋った。


 「杖ノデータヲスキャンシマス」


 ん?今の声何だ?機械音?

 ってことは、その機械からか?


 「さ、修司くん、杖を握って。」


 そう言われたので、杖を返してもらい、握る。


 「スキャン完了シマシタ。続イテ、使用者ノ情報ヲ登録シマス。杖ヲ握ッテクダサイ。」


 そのまま杖を握り続ける。


 


 「...登録、完了シマシタ。」


 

 次の瞬間、杖にくっついていた機械が消えた。


 「えっ?」


 ちょちょちょ、今消えたよね。待って待って、色々起きすぎて頭パニックだよ。

 誰か頭整理してくれ。


 「これが『魔術サポート』です!」


 いや何も分からん。全然説明されてないし。


 「...あの、説明お願い出来ますか?」

 「修司くんも驚いてそうですし、そうしましょうか。」

 

 いや、今の説明なしで全てを分かった人がいたら、それこそ神だよ。

 

 「さて、今修司くんの杖に巻き付いている『魔術サポート』ですが...」 

 「何にも無いですよ。」

 「見えないだけです。」

 「感触も無いですよ。」

 「感触も無いだけですよ。」


 よく分からんが話を続けよう。


「この機械は、杖と一体化させることにより、杖の使用人に様々なサポートをしてくれます。

 そうですね、修司くん、手をグーからパーへ勢いよく開いて見てください。」

 

 言われたままやってみると、


 ヴヴン──


「!?」


 えっ?何か画面が開くような音がしたら、今度は空中に画面があるんですけど...

 何か近代を舞台にしたアニメとか、逃◯中とか戦◯中のゲームマスターが使っているようなやつ。


 「それは、この機械の機能の心臓部でもある空間ディスプレイです。そこから様々な操作や設定が出来ます。」


 なるほど。

 いや、凄い技術だな。

 流石自称某博士だ。


 「あの、この機械を使うことで、例えばどういったメリットがあるのでしょうか?」

 「と言われても言っても色々あるのですが、例えば、魔術の発動が楽になりますね。」

 「発動というと、その機械が勝手に魔力を注いでくれるってわけですか?」


 それって凄いけど、何かずるのような気がする。


「というわけでは無さそうです。

 実際裕也に実験してもらいましたが、魔力の調整は自分でやらなくてはいけない見たいです。」

「そうですか。」

「ただ、魔力を注ぐ時に、魔力の流れを安定にするので、発動が楽になるのです。」

 

「それって、未習得の魔術を使う時もですか?」

「それも無理です。

 きちんと習得して、感覚が掴めたものだけです。

 裕也曰く、魔力の注ぎ方が掴めているからこそ、安定するそうです。

 今後のアップデートで、いつでも安定するように改良しますか?」

 「それは止めてください。」


 僕は即答した。

 確かに、未習得の魔術を簡単に使えるようになれば凄くいいけどさ、何でもかんでも機械に頼っちゃうのはよくない気がする。

 最悪、機械が壊れたとき、僕自身の実力が伴わなければ、それで命取りになるかもしれないからな。


 「あと、魔力を安定して注げるので、術の威力アップも出来ますが...」


 それもずるだよな。本来は魔力を安定させるのも自分で出来るようになるべきだよな。

 機械があるから出来ても、それは自分の実力じゃないんだよな。


 「もし、おきに召さなければ、その機能をOFFにすることも可能です。」

 「そんなことできるんですか?」

 「はい。ただ、自分の命を1番に考えてください。いざというときはちゃんと機能をONにして下さい。」

 「分かりました。」


 まあ、少なくとも訓練の時は使わないようにしよう。

 

 「他には何がありますか?」

 「無属性魔法の『収納術』をリスト化して、荷物の収納がしやすくなりましたね。」

 

 よく分からない単語が出てきたので説明しよう。


─無属性魔法─


 無属性魔法は、火、水、氷、雷、風、土、回復、守備の8種魔法のどれにも当てはまらない魔法である。


 無属性魔法は魔力を基本的にそのまま使用することが多いため、様々な術が生み出されている。

 

 例えば、今出てきた収納術も無属性魔法の一種で、荷物を圧縮し、透明化させ、空中を漂わせる。

 これなら、手が空くし、荷物を盗まれたりする心配もない。

 最も、杖を無くしたら終わりだが。


 しかし、欠点もある。

 勿論収納術は便利だが、使える荷物が1点までなのだ。

 

 それを克服したのが、『魔術サポート』

 収納術をリスト化することで、簡単に荷物を取り出すことができる。

 荷物も1点から5点に増やすことに成功。

 勿論、リストから選んで荷物を出せる。

 

 ちなみに機械自体が消えたのも、自動的に収納術を使ったためである。

 一応1枠使っているため、残りは4枠である。


 

 といった感じである。



 他にも、この画面を使って通信が可能である。

 通信ができるのは、僕と同じく魔術サポートを持っている先輩と、先輩父である。


 他にも機能があるそうだが、実際に使ってみた方がいいと言うことで、説明書が送られて、説明が終わった。

 

 ちなみに、さっき言っていたアップデートというのは、先輩父側から自動的に送られてくるらしい。

 勿論、アップデートの適用、保留もでき、かなり高性能な機械だ。


 だが、1つ疑問に思う。


「どうしてこれを商品化しないんですか?」

「聞くと思ったよ。

 私はあくまでも趣味としてこれを作っているんだよ。だから特別お金が欲しいわけでもない。

 それに、誰かに悪用されても嫌だし、これを使って多くの魔術師が楽するようになるもの困るからね。」

「そうですか。」

 

「あっ、そう言えば、君に兄弟がいたりするかい?」

「兄と妹がいます。」

「彼らも魔術師を?」

「はい」

「では、彼らの分も作ろう。」

「ええ、いいんですか?」

 

「勿論、修司くんは裕也の友達だからね。」

「でもお代とか...」

「そんなこと気にしちゃいけない。これでも会社からガッポリ給料は貰ってるからね。」

「では、お言葉に甘えて。」

「それと、また新しい物ができたら使わせてあげるからね。」

「もう、本当にありがとうございます。」

「いいさいいさ、冒険は命懸けだからね。」


 

 こうして、また1歩魔術師として磨きがかかった1日となった。



 



 

 「大江ロイナさん。彼らはきっと帰る方法を見つけますよ。」

 

 


 後で知ったことだが、先輩の父も僕の母に恩がある身らしい。

 母はつい最近まで連絡をとっていたので、僕の存在を知っていたらしい。


 ということは、彼が協力してくれるのは母のお陰でもあるのだろうか?

 

 平瀬に帰れたら、本人から魔術師、大江ロイナについて色々教えて貰おう。

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