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神殺しの星辰《ほし》(旧題:不幸な少年と病の少女)  作者: ネツアッハ=ソフ
機械仕掛けの神
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緊急会議を始める

 翌日、龍の脳———午前09:00ジャスト。大会議場にて。


 大会議室に各種族の首長達が集まっていた。人間、竜種、吸血種、巨人族、覚、人狼、狐、狸、猫、その他様々な種族が居る。


 その名も大円卓(だいえんたく)。ニライカナイを統べる首脳達である。


 円卓の奥には大円卓の議長、魔王サファイヤが座っている。その右隣には石英が、左隣にはヘリオドールがそれぞれ座っている。議長の左右は副議長の席だ。


 つまり、今回石英とヘリオドールは副議長という重要なポストを任されたという訳だ。


 サファイヤの背後には、ムーンと共にメノウとサンゴが居る。二人は今回は特別ゲストだ。


 大円卓に居並ぶ化生(けしょう)の群れに、二人はびくびくと(おび)えている。


 初めて見る人外の群れに、二人共抱き合って震えている。


 それを、ムーンが苦笑しつつ宥めている。そして、それを見て覚のアルマがにやにやと笑っていた。


 ・・・アルマは相変わらずらしい。ちなみにアルマは本来首長では無い。彼女は大円卓では番外に位置する特別席である。ニライカナイに覚という種族は彼女と琥珀しか居ないからだ。


 まあ、それはともかくとして———


 「では、緊急会議を始める。議長は私、サファイヤが務める。副議長は石英とヘリオドールにそれぞれ務めてもらうとする」


 サファイヤの宣言と共に、緊急会議が開会した。首長達に資料が配られる。


 その資料を見た首長達が大きくざわついた。資料には機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナについての情報がメノウ、サンゴの姉弟の写真と共に記されていた。


 資料にはこう書かれている。


 ———機械仕掛けの神、デウス・エクス・マキナによって世界が一つ消滅した・・・と。


 首長の一人が挙手(きょしゅ)する。巨人族の長、ショールだ。


 「ところでサファイヤよ、其処の二人は一体何者だ?資料には関係者としか書かれていないが・・・」


 全員の視線がメノウとサンゴに向いた。ビクッと二人が震える。二人は既に涙目だ。


 ムーンが苦笑しながら大丈夫と宥めている。メノウとサンゴはムーンの背後にしがみ付いていた。


 その姿に、サファイヤは苦笑した。そして、こほんっと咳払いすると首長達に答えた。


 「この二人はメノウとサンゴ。機械仕掛けの神、デウスに滅ぼされた世界に住んでいた姉弟だよ」


 『—————————っ!!?』


 首長達のざわめきが大きくなる。そして、二人への視線がより強くなる。


 メノウとサンゴが余計に縮こまり、震え出した。思わず、石英は苦笑する。


 「なるほどね。要は、その二人の故郷を滅ぼしたデウスとやらを倒す方針を決めようと言う訳かい」


 「その通りです。アルマさん」


 アルマの言葉にサファイヤは頷いた。他の首長達も皆、納得した様に頷く。


 そして、再び首長達の中で手が上がった。狐の長だ。


 「それなら話は早い。わらわ達狐獣人に任せよ。正面から叩き潰してくれようぞ」


 「それなら、私達猫獣人も力を貸すよ!!」


 自信満々に言ってのける狐の長。そして、それに同調する猫の長。二匹共、かなりやる気だ。


 しかし、それを狸の長が嘲笑(あざわら)った。


 「カカッ!!女狐も猫の小娘も甘い甘い。もっと小賢しく策をめぐらそうぞ!!」


 カカッ、カカカカカカカッ!!!と腹を抱えて嘲笑う狸の長に、むっと不快な顔をする狐と猫の長。


 「貴様、余程の死にたがりか?」


 「なら、今此処で死ぬか?」


 狐と猫の長から放たれる凄まじい殺気。それを受けて、狸の長は尚も笑う。


 二匹の殺気を心地良く受け止める。


 「カカッ・・・面白い。ならば、此処で雌雄(しゆう)を決するか?」


 バチッと火花を散らす一匹と二匹。その殺気の余波を受けて、メノウとサンゴが涙目で震える。


 サファイヤがはぁっと溜息を吐き、三匹を止めようとした———その時。


 「てめえ等、いい加減にしろっ!!!」


 「「「っ!!?」」」


 ヘリオドールの怒号が響き渡った。魔力の籠った怒声により、広い会議室がびりびりと振動する。


 一気に室内は静まり返った。しーんっという擬音さえ聞こえない。


 それを見て、ヘリオドールは椅子に深くもたれ掛かった。そして、ちらっとサファイヤに目配せする。


 つまり、後は任せるという事らしい。何とも竜女王らしい。


 サファイヤは思わず苦笑した。


 「では、今後の作戦を考えるにあたってメノウとサンゴの二人に話を聞きたい」


 そう言うと、サファイヤは二人に微笑み掛けた。メノウが慌てて話し始める。


 「デ、デウスの特徴は輝く銀髪に薄い青色の瞳、それと純白の服を着ています。その身体からは常に銀色の魔力光が放たれていて・・・えっと、魔力に触れた部分から世界が破壊されていきます」


 『・・・・・・・・・・・・・・・』


 その説明に、首長達が黙り込む。世界そのものを破壊する性質と出力を持つ、銀色の魔力。そんなものどうやって倒せと言うのか。先程騒いでいた三匹も、黙り込んでいた。


 再び静まり返る会議室。誰もしゃべる気配が無い。室内は無音空間と化した。


 ・・・すると、其処に小さな手が一つ上がった。サンゴだ。


 サファイヤが驚いた様に、目を丸くする。


 「どうしたの?何か意見でもある?」


 「意見というか・・・その、何か役に立つかも知れないけど・・・」


 「うん」


 「姉ちゃんの魔力の性質は"確率間跳躍"なんだ。それで・・・その、・・・その力は対象を任意の時空に召喚する事も出来るんだよ」


 それを聞いて、全員の視線がメノウに集まった。その瞳は、どれも驚愕に染まっている。


 メノウは身体を縮こまらせながら、頷く。


 「はい・・・。私の魔力光は無色、性質は"確率間跳躍"です。・・・それは、確率によって枝分かれした異世界を自由に行き来出来るという物、です・・・」


 凄まじい能力だった。つまり、分岐した確率を跳び越えるという事は時と空間を超越するに等しい。


 石英やサファイヤなど周りに出鱈目な人物が多いが、この能力(ちから)も大概強力である。


 超越者と言っても過言では無いだろう。神にも匹敵する能力だ。


 つまり、二人がこの世界に転移出来たのはこの性質の魔力のお陰だ。メノウは恥ずかしそうに俯く。


 石英は少し考える素振りをする。


 「・・・・・・・・・・・・ふむ」


 「石英、どうしたの?」


 「・・・いや、ちょっと作戦を考えていた」


 そう言って、大円卓の皆を見渡す。サファイヤが不思議そうに石英を見る。


 「何か思い付いた?」


 「ああ・・・。まず、僕が時空から切り離された異界を造り出す。そして、異界にニライカナイの戦力を集めるだけ集めよう。全ての準備が整い次第、デウスを強制召喚してこれを叩く。そういう作戦だ」


 石英の作戦を聞き、首長達が考え込む。かなり強引な作戦だ。しかし、誰も反対しない。


 それは、つまり皆反対するだけの策を用意出来ないからだが。


 ・・・しばらくした後、沈黙を破る様にヘリオドールが笑い出した。首長達が目を丸くする。


 「カッカッカッ!!!良いじゃないか。私達らしくて。私は賛成だぜ!!」


 「だな。確かに俺達らしいわ・・・」


 「ですね」


 ヘリオドールに続く様に、ショールが肩を(すく)めた。吸血種の長、ネリアも頷いた。


 「わらわもその策には同意しよう」


 「私も同意するよ!!」


 「カカッ・・・まあ、良いじゃろう。好きにやって見せよ」


 快く同意する狐の長と猫の長。狸の長は不敵な笑みで同意する。これも、(ひとえ)に石英の人徳による物だろうが・・・。


 サファイヤは一つ頷く。


 「では、他に意見は無いか!!無いならこの作戦(さくせん)を採用する!!」


 サファイヤが大円卓の全員を見回して問う。・・・特に反対意見は出なかった。これで良いらしい。


 皆、やる気に満ちている。サファイヤは満足そうに頷いた。


 「では、これにて緊急会議を閉会する!!全員、解散!!!」


 こうして、デウスとの戦いに向けて準備が始まった。

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