EXTRA.3 見誤った力
試験が終わってからは身体の慣らしに行くらしい。まだまだぎこちなさはあるし、違和感もあるのだろう。それにジュナスのあの力を使いこなすのはいきなり出来る筈もないだろう。
いざ出発の準備をしようという段階でマルスの装備に悩んでいたハルアード達が、密かに仕込んでいた仕組みに気付いていた。
『ふふふ、そこら辺の調整は抜かりないよ! 咄嗟に作り変えたにしては立派なもんでしょ!』
誰に聞こえる訳でもない自慢げな言葉と共に胸を張る。幼い女の子の姿の為か主張するようなものは何もないが。
ハルアード達はそのジャストサイズ感に不気味さを覚えていたが、自慢げにしていたためその様子には気付かなかった。とにかく、準備が終わり出発する事になっていた。
『よっし! これで街以外のとこも見て回れる!』
一人で出歩くことも出来ないわけではないが、”精霊封じ”のせいで魔力がかなり減っている。回復するにはもうしばらく時間がかかるだろう。そして、話を聞いている限りでは魔物は昔と変わらず存在しているらしい。
『……ほんと、色々と呼び名が変わってるね。”精霊石”は今は魔石か。邪刻石ってのは『邪刻』に堕ちた”精霊石”の事でいいのかな? 魔物の核も一種の”精霊石”なんだけど、その辺りの知識も無くなってる……?』
色々と自分の持っている知識との食い違いが判明してくる。なんらかの意図的な情報の断絶を感じてくる。もうここまで食い違いが出てきているとますます単独行動で今の時代を調べるのは難しいだろう。ハルアード達に着いて行くことにして大正解だったかもしれない。
そして何より、昔は人の街にでも何処にでも普通にいた自分と同じ精霊たちが一切見当たらないのが気になってしまう。
『……あいつら、一体何をやって、何処に行ったんだろ?』
その疑問に答えられる者もここにはいない。だから目的の一つに他の精霊を探す事を付け加えていく。
『あぁ!? 置いていかないで!?』
それはそうとして、出発していくハルアード達に置いていかれそうになり、慌てて追いかけて行くのであった。
街道を歩くハルアード達の後を勝手に着いて行き、しばらく経った頃に目的の場所へと到達したようだ。魔物の討伐は後回しにして、色々と試すらしい。
『へぇ? なんか変わった魔法の使い方するんだね? そういやマルスの記憶の中に魔法は失われているとかあったねぇ?』
魔法が失われていなかった時代を知っている身としては、非常におかしな事をしているようにしか見えなかった。紙に書く術式ってなにそれ? 詠唱ってそんなものいらないじゃん? そんな事ばかりが思考に過る。
おそらく魔法の発動の為の一番重要な要素が抜け落ちている。マルスに与えた魔法の片鱗は人が使う魔法ではなくその一段上の精霊の魔法の知識である。マルスなら、魔法に何が必要なのかはすぐに気付くだろう。
『……いや、もうマルスは魔法の仕組みに気付いているかな?』
そういえばそれっぽい事を言っていた気もする。
『ま、魔術とやらも無駄が多いだけで魔法といえば魔法かもしれないね』
とりあえず見守ることにしよう。どうやら実験も始まるみたいだし。まずは魔紙とやらを使ったものらしい。だけど不発だった。まぁそれもそうだろう。あれほど制限を掛けまくれば多量の魔力での発動には耐えられない。
次に詠唱とやらを使ってのものらしい。
『あ、こっちのほうが魔法に近いんだ。って!?』
いきなりの閃光に驚いてしまった。まさかこんなに広範囲に発動するとは思わなかった。ジュナスがなんかとんでもない事を口走ってハルアードがブチ切れていた。流石にこの展開は全然予想していなかった。
『……ちょっとジュナスの魔力量、過小評価し過ぎてたかも……』
こんな物をハルアードに扱わせようとしたのはちょっと悪い事をしてしまった気がする。こんな魔力は見たことがなかった。
『……ほんと、あいつらはどんな”導刻”を作ったの!?』
この場にはいない同胞たちの行為に悪態をつく。同胞たちを見つけたら真っ先に問い詰めてやろうと決意する。
だが、そんな事を考えている場合でもなかった。先程の閃光で魔物達が押し寄せてきている。
『ちょっと待ってよ!? 今の僕、戦えないんだけど!?』
慌てて退避しようとするけれど、逃げ道はなし。ハルアード達は迎撃体制へと移っていた。仕方ないので弓を構えているレイアの背後でやり過ごす事にした。
そこからはハルアード達の一方的な蹂躙劇であった。一体仕留める毎に洗練されていく動きは見事と言っていいものであった。ジュナスもまた、危機には役に立っていた。
それはそれでいいとして、数が多すぎた為に後片付けまでしていたら日が暮れていた。
『ふーん、邪刻石はちゃんと回収するようになってるんだ』
放置すれば強大な魔物を生み出す要因となるものの処理がきちんと行われている事に感心する。
ただし、気になった事が一つあった。魔物に堕ちた妖精種が多かった事だ。妖精種は本来は肉体を持たない精霊が肉体を得た種族の事。魔物として生まれる種族ではない。
魔物となった妖精種の数が多いと言うことは、『邪刻』を誘発する悲劇か何かがあったという事である。調べなければならない事が増えてしまった。
後片付けが終わったハルアード達は帰路につくけれど、帰った先では説教が待っていた。
説教が終わるまでぼーっと待ってはいたけどひたすら暇だった。だけど、何かの連絡が入った瞬間様子が変わっていった。
『あーあの連中がね』
色々と思惑はあるらしいけれど、今は出来る事は特にない。ハルアード達は一先ず他の国に行くことになったらしいから着いて行くだけだ。
色々と調べたい事もあるし、同胞も探したい。この先、何があるんだろうか?
これにて第二章終わりです!
次は第三章に!と行きたい所ですが、正直なところモチベーションが続きません……。
少ない人数ではありますが読んでくださってる方がいるのも分かっていて、散々悩んだのですが……。
ごめんなさい、第二章までで打ち切り終了とさせてもらいます。
もう一つの作品が私のモチベーションに止めを刺すとは思わなかった……。
少ない人数ではありましたが、ここまでお読み頂いた方々には感謝を申し上げます。
そして書ききれなかった未熟さ故に、こんな形になりまして本当に申し訳ありません。
本当にありがとうございました!




