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大4

「おおっ?」

 今度は目をしっかりと開けて移動の瞬間を見ていた俺だったが、目の前少し下に糞が一つ見えた。それが少しずつ遠ざかって最後に足が地面から生えてくるようにして抜けきった。もしかしなくても、こいつがカムイ様の糞だったのだろう。最近はすぐにアシンルが一杯になってしまうと思っていたのも、これが原因だったのかと納得できる。あちらの世界では俺の村一つよりもよっぽど人の気配を感じたからな。


「「首長?!」」

 村のやつらが俺を驚いた目で見てやがった。突然いなくなったと思ったやつがアシンルからにょきにょき出てきたらびっくりするだろう? 誰だって驚く。俺も驚く。


「おう、おめえら。とんでもないことになったぞ!」

「はい……? いま、どうやって……?」

「どうやっても糞もねえ! いや、糞はあるがそれはどうでも良いんだよ! 俺たちのアシンルが本当にルコロカムイで、そこを通ったらカムイの国に行っちまったんだよ!!」


 みんな呆然としている。なんでわからねえんだよ?! 続々と村人が集まってきて、すぐに村の全員が俺を遠巻きに見ている状況になった。

「おめえら! 二人ともあの時近くにいたよな?! 見てなかったのか?!」

「へ? へい、首長がアシンルを調べるっつうんで、俺達は森の方を調べようって歩いてたら叫び声が聞こえて急いで戻りやしたが。アシンルを見ても居なかったんでどうしようって相談して、村のみんなにも首長を探してもらってたんですよ」


「ああ、畜生。誰も見てねぇのか、でも俺がいま出てきたのは何人も見てたろ! 説明できねえこともあんだよ! とりあえずお前行け!」

 アシンル掘りをさせた若者を一人捕まえて、向こうについたら一度穴から出てすぐまた飛び込めと伝えた。こいつを向こうに長居させてカムイと会ってしまったら、御手を煩わせることになってしまうからな。 背中をドンッと押してアシンルに突き落とすと、若者が驚愕の表情を浮かべながら吸い込まれていく。


「なるほどね、外からはこう見えてたのか」

 周りで騒いでいるやつらは放っておいて、数秒ほどで若者が戻ってきた。


「どうだった? 俺の言った事、信じたかい?」

「えっと、その。気付いたら小屋の中みてぇなとこにいて……信じられないくらい暖かくて……」

「おうよ、それがカムイの世界なんだぜ。俺はそこで、人の姿を借りたカムイと会ったんだ」


 そこからは周囲の全員によく聞こえるように声を張り上げ、向こうの世界の話をした。カムイが住処すみかを追われて困っていたこと、俺たちの戦士がいればカムイの住処を取り返せること、そのための聖戦に他の村の戦士も連れて行きたいこと。


「カムイの世界が、そんなことになっていたんですか……。我々がお役に立てるというなら、命を懸けるべきです! 他の村の連中も必ずそう言うはずですよ!」

「おう! その通りだぜ! みんなもそれで文句はねえよな?!」

「「応ッ!!」」


 案の定だったが、俺の話を真剣に聞いてくれたみんなは聖戦への参加に同意してくれた。俺は村をいくつも束ねる首長ではあるがその権力というのはほぼ無く、村同士でのいざこざの仲裁をするくらいなんだ。村の重要事項を決めるときには、各村長たちが村人の意見を聞いてみんなで決めることになっている。


「よし! それなら、まず足の速いやつらを他の村に使いに出してこの話を聞かせよう。それから戦士を5千人集めるつもりだから、このルコロカムイじゃあ狭すぎる。せめて5人くらいは一度に向こうへ行けるように広げよう。他にはなにかあるか?」

「聖戦に行くなら武具が必要でしょう。まず狩りを増やして、一月以内に和人から買えるだけの槍を買いましょう!」

「おお、それはいい! 交渉はお前に任せるぞ! 狩りは残りの手の空いた者全員で手伝うんだ!」

「「応ッ!!」」


 今まで、村がこんなに熱くなったことは無かった。イオマンテの時よりも更に熱く、和人の酒を呑みまくったときよりも身体の底からたぎってくるように感じた。


 俺の手の届く全ての村が同じ想いだった。


 そして、このとき俺は初めてカムイと直接話した首長として認められ、尊敬を集めることになった。


 一月後、俺の号令の下に5千人の屈強な戦士達が集結した。


 俺の名はウタリアン。名の意味は……率いる者。

これにて完結、史実の裏側という設定でした。

なお、「ウタリアン=大勢の友がいる者」ですが本作では率いる者としました。


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「蝦夷0万石の野望・転生録」も是非どうぞ。

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