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43話 盗賊と闇

 

 

王都の総合ギルドへと到着した俺は――

真っ先に迷宮の情報を確認していた。


ふむ―。


――王都南の森に、東の岩場か。

そして、推奨は下級クラス――と。

ボスの情報はまだいいだろう。



うーん。なるほどな。


また森か――。



まあ。それはいい。


一つ気になったのは、ボスについての注意があったことだ。

特に東の岩場のボスについては

中級の中位~上位に位置する魔物なので、気をつけるように、とのこと。



そして―。

南の森のボスはそれよりも弱いが、その強さは下級でも最上位らしく。

この国ではこの森のボスを倒すことが中級昇格――。

つまり6級になる条件らしい。



勿論、昇格に相当するギルド貢献ポイントも別途必要だ。

それなりに依頼数をこなさないとダメだということだな。




「分かりました。絶対に岩場のボスには挑みません。」


そう伝えて、俺は静かに闘志を燃やしていた。


絶対に行ってはいけないか。

そうか、絶対に――ね。




そして。

忘れていた拠点変更届けを済ませ、いくつか情報収集をすると。


本題の盗賊撃退とその扱いについて聞いてみた。


すると、その話を切り出した所で

俺は2階の別室へと案内されることになった。




☆ ☆ ☆




案内された俺は、代わった担当者に一通り事情を説明して。


盗賊達のギルドカードとの交換で、盗賊討伐の報酬を受け取った。

その額、銀貨で25枚。預金はなし。


やはり盗賊を倒すと、報酬が出るのだな。



金額は翼鹿2体分か――。

聞いてみると、よほどの事がない限りこんなものらしい。

つまり安いってことだ。


だが、盗賊の装備などは全て俺の物にしていいらしく。

それを売ればもっと金額は上がるだろうな。



ちなみに、なぜ別室での対応なのかというと――。

単に盗賊関係について詳しい話が聞きたかったから、だそうだ。


状況の説明や報酬についてはこんなところか―。





しかし話はこれだけでは終わらなかった。

というより、俺が盗賊について質問をしたことで

色々と詳しい話を聞くことができたのだ。




この世界の盗賊について――。


まず第一に。

ほとんどの国が盗賊を人として扱っていないらしい。


それを裏付けるのは

死ぬと光になって消えるのは盗賊だけで、普通の人は違うという点。


さらに捕まると裁判なんかもなく問答無用で奴隷落ちとなる――。




そして第二に。

どうしてそんな扱いが出来るのかという点だ。

それは、“世界”がそう決めたからである。


ここで言う世界とは、この世界のシステムそのものを指しており―。

時折、イレギュラーな事柄が発生すると

それは“世界”がそう決めたから、という認識が一般的なのだとか。


例えば、今ある盗賊認定がそれに当たるし。

他には魔法使いになったことで

使用可能な魔法について、ウィンドウが開くこともそれに当たるらしい。





急に、“世界”とか話が大きくなったが――。

どうもこの異世界の住人にとっては、普通みたいなんだよな・・・。



そう。

まさに、世界とは神のようなもので。


そして神のみぞ知る――じゃないけれど。

いきなり本人の視界にウィンドウが出て、盗賊認定され。

ギルドカードも自動で更新されるらしい――。



盗みをしたり、人殺しをしたり――、盗賊に落ちる理由は様々だとか。

当然だが盗賊を殺してもその者は盗賊にはならない。



要するに、盗賊になるような悪い事をするな。

もしなったらその立場は魔物と似たようなもので。

討伐されるか、良くて捕まって奴隷落ち――そんな末路になるということだ。


あまりに厳しいと感じるけれど。

これは、この後の話とも関係があるようだ――。





少し話は変わって――。


最も驚くべきことは。

自分から望んで盗賊になる者がいるという事実だ。


これはどうも、世界の常識らしく。

見事、俺は田舎の山奥出身を露呈してしまった・・・。

まあいい。

それは覚悟していたことだし、置いておいて。



――うん。

それが・・・、どうも冒険者と関係があるらしいのだ。



冒険者はその職業効果に能力上昇がつかない。

 ――小さいと思っていたら、全くないとは驚かされた。

そして。

盗賊には、他の職業には劣るが能力上昇がある。


後は言わなくても分かるだろう――。




そう。


職業に適性がなく。

それでも力を求める者が盗賊となるのだ。


惨めで、弱く、ギルドではお荷物扱い――。

その立場から、力を手にして奪う者へと変わりたい。


そんな者が多く存在するのが現実なのだ――。




☆ ☆ ☆



別室を後にした俺は、廊下を歩き階段を降りながら

さっきの話を考えていた。


自分から望んで、という話だが。

なんというかやるせない気持ちになったのだ。




確かに、盗賊になることは本人が選択したことで。

それは許されることではない。


だが、その始まりにあるのは。

生まれつき適性を持つ者か持たざる者か――それで決まっている気がする。



そんな世界の仕組みを、俺は悲しいと感じたのだ。



これは俺が、平和な世界で平々凡々と暮らしていたからだろうか。

あるいは自分が適性を持つ者で――

心にゆとりがある者だからだろうか。



――。




俺は階段を下りると、ギルドのエントランスへ戻ってきた。


ふと、考え続ける俺の目に入ってきたのは。


冒険者の男が、パーティと思われる仲間と楽しそうに会話している光景だ。

この前の狩りの成果がどうの――、と話をしている。


――。



あれは。

先日、エスタの町で声をかけてきた男だ。

王都に来ていたのか―。


確か名前は、ハンスだったな。



ふむ。

 

―そして。

幸運にもパーティが見つかったと。





あの姿を見ていると。

今の俺の考えは間違いだろう、とも思える――。


やはり盗賊を選択したのは本人自身だと。

それ以上でも、それ以下でもない。



適性がないからといって、努力しようとせず道を踏み外す選択をした―。

そして安易に能力上昇の恩恵を得て。


他人を傷つけ、奪うことを受け入れた愚か者。



 

様々な考えが頭をよぎる。

答えなんてものは無いのかもしれない。

しかし、結論として出たのは。


盗賊にかける慈悲はないということ――。



例え、不遇だとしても努力してる者たちがいるのなら。

盗賊に情けをかけるのは、彼らに対して失礼だ。


彼の誘いを断ったのなら―。

せめて、それくらいはしよう。



そう、俺は思うのだった――。









 

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