36話 決断と勧誘
雑貨屋を後にした俺は、続いて総合ギルドにやってきていた。
目的は依頼の達成報告と、素材の売却――、
そしてボスの情報を買うためだった。
ボスが第三エリアにいるということは、既に聞いていたので知っている。
しかし、どういったボスなのか。
その攻撃パターンや弱点は――、そういった情報を購入できるのだ。
うん。
買うはずだったのだけど―。
実はこれをどうするか、ずっと悩んでいた。
そう。
ギルドに入る直前まで。
俺の本心では、なるべくなら初見で挑みたい。
情報料は下級エリアのボスなので2,000ゴルという金額だが、
それを払うのが惜しいわけではなかった。
初見で挑むことで得られる経験が惜しい、そう思ってしまったのだ―。
翼鹿のように予想もつかない攻撃をしてくるだろう。
それを咄嗟の判断でどうするか――。
それはきっと密度の濃い経験になる――はずだよな。
そして――。
ギルドに入ったところで。
俺は決断した。
情報なしで、挑もう――と。
おう。やってやるさ。
初見で仕留めてやるとも!
「こんにちは。」
大胆な決断をした俺は、意気揚々と受付に声をかけ―。
討伐依頼達成と素材の売却を済ませてしまう。
えーっと。
まだそんなに狩ってないんだよな。
大蜥蜴85匹に毛牛35匹か。
全て合わせると、1,900ゴルの受け取りだった。
そして別途、預金は475ゴルだな。
うん。
こんなものだよね―。
さてと。
対応してくれた職員にお礼を言うと、俺は掲示板に向かった。
なんか、順番が逆になってしまったな―。
―ん。なになに。
―コトラン 30体 銅貨50
―ウシカロン 10体 銀貨3
張り紙に書かれた魔物の説明を読むと―。
大蜥蜴がコトラン、毛牛がウシカロンかな。
名前と合わせて討伐数や報酬をざっと確認していく。
さて。
ギルドを出て、マイルームに戻ろう――そう思ったときだった。
「なあ。ちょっといいか。」
―ん。
声のした方へ振り返ると、そこには10代後半と思われる男が立っていた。
☆ ☆ ☆
俺と同じか、少し若いくらいだろうか――。
だがこの男がそれなりに鍛えていることが分かる。
身長は――、俺より僅かに高いか。
「なんだ。」
俺は、なめられない様に少し低めの声で答えた。
おいおい。絡むのは勘弁してくれよ―。
「なあ。あんた、見ない顔だな。最近この町に来たのか。」
――なんの話だ。
まあ。とりあえず、「そうだ。」と答えて――。
一日迷宮で狩りしてきて疲れてるんだ。
要件を言ってくれ、そう俺は促す。
「よかったら俺とパーティ組まないか。見たところ、あんた1人だろ。」
怪訝そうな顔をした俺に対し。
さっき1人で報告してただろ、そう男は続ける。
あ―。そういうことか。
うん。
1人で報告してたら、ソロなのだろうか―。
なんか、ぼっち丸出しみたいで嫌だな・・・。
しかし―。
タイミングが悪すぎだろう、この男。
丁度、明日ボスに挑もうとしてるときに声をかけるとか――。
いやまあ。俺の都合だし、この男が知る由もないがな・・・。
正直なところ、臨時にパーティを組むのは大歓迎だ。
人間嫌いというわけではないし。
孤高を気取ってるわけでもないしな――。
だがずっと組むとなると――、ちょっとな・・・。
俺にはマイルームやスキルがあるので、その辺は信頼できる人を選びたいのだ。
俺以外に持ってる話を聞かないからな。
もしその話が広まれば目立ってしまうだろう。
「パーティか。うーん・・・。ちなみに、あんたは何ができるんだ。」
俺は前衛で剣士をやってる、そう続ける。
すると、
その男は言いにくそうにして―。
「あー、俺はその、冒険者だ。まあ・・・知ってると思うが、魔物のドロップ獲得には貢献できるぜ。」
「あとは、コトランくらいなら戦えるし―。」
それより強い魔物でも、注意を引くくらいならできる、そう続けた。
――。
そっか。冒険者か。
それはパーティないと辛いよな――。
俺の場合はスキルがあったから何とかやれたけど、もしなかったら・・・。
俺はまだ異世界に来た頃。
そう。
初日の身体強化スキルなしで、ハムラビィと繰り広げた戦いを思い出した―。
「そっか。ちなみに明日、草原のボスに挑むのだが―。」
やれるのか、そう問いかける。
「だ、だいじょうぶだ・・・。」
――。
顔青くしてるけど。
多分、大丈夫じゃないよね――。
翼鹿との戦いを思い出す。
うーん。
やめた方がいいよな。
きっと死んじゃうよ、コイツ・・・。
「いや。すまないが・・・。断ることにするよ。」
まだ、ボスは早いんじゃないか――そう、伝えて。
なんかちょっとホッとしてるし。
その後いくつか話をした所で、
その男――ハンスは肩を落として去っていった。
うーん。こればっかりは、仕方ないよな・・・。
彼の辛さは俺も経験したから分かる。
だが、だからといって無理矢理ボスに連れていくのは危険だし。
俺が予定を変えて、彼の狩りに付き合うのも、
それは違うと思ったのだ―。
せめて、この町にきた初日に出会えていれば――。
そんな考えが頭をよぎるのだった。
【主人公36話終了時のステータス+α】
サトウ キヨシ <アーレの村>
男 18歳 健康
職業:剣士Lv10
特殊空間:マイルームLv2
ギルドランク:8級
スキル:身体強化 剣術 地図 隠密 火魔法 直感 索敵
経験値獲得1.5倍 特殊空間魔法 特殊ストレージ
スキルポイント(SP):2
装備:鉄製の剣(稀少)
チェインメイル
鉄製の兜
皮製の篭手
皮製の足装備一式
筋力の指輪
知力の指輪
討伐した魔物と数:大蜥蜴85匹 毛牛35匹 ※1章の魔物省略




