1.犬猿の勇者と聖女
数ある作品の中から目を留めていただき、ありがとうございます!
なろうへの作品投稿は今回が初挑戦となります……!めちゃくちゃ緊張。
「サクッと読めて、ガツンとくる話を」と思って書きました。
最初聖女の性格悪いです。
2万文字くらいで完結予定です。
完結まで毎日更新します。
勇者パーティによる魔王討伐により、国内はお祭り騒ぎだった。長らく続いた魔物による被害で疲弊していた国民たちは、ようやく平和が訪れたと安堵し、また、二つの嬉しいニュースを心から祝福していた。
一つは、勇者パーティがなんと全員無傷で帰還したこと。もう一つは、勇者と聖女の結婚が決まったこと。二人の婚約は国中に祝福され、『平和と幸福の象徴』とされた。
しかし、当の本人たちは違った。
リヒトは叫んだ。
「なんで!俺が!こいつと結婚しなきゃならないんだ!」
マナカは吐き捨てた。
「それはこっちのセリフなんだけど。なんでよりにもよって、あんたなの?死ね」
イケメンチャラ剣士は「あっははは!お似合いじゃんっぷっくくく」と泣いて笑い、筋肉眼鏡長髪エルフは「王命だから仕方ないわ。諦めるのよ」と図太い声で慰めた。双子の無口無表情魔術師は「「お幸せに」」とだけボソッと置いてその場を足早に去る。
「あっこら双子!逃げるな!」
「いーじゃん好きにさせれば。もうパーティは解散なんだし」
「俺たちのための祝賀会なんだから主役が逃げちゃ駄目だろうが!」
「あーはいはいうるさいうるさい」
勇者リヒトと聖女マナカ。
この二人は、口を開けば喧嘩する犬猿の仲だった。
・・・
元勇者パーティのメンバーは解散後それぞれの生活に戻った。エルフは森に帰り、双子は魔塔で研究の続きを、剣士は師として弟子の育成を始めた。
余ったのは、勇者と聖女。
魔王討伐のために異世界から召喚された二人には戻る生活がなかった。そして、魔王討伐に特化した才能は、平和な時代には無用の代物だった。
勇者の才能は、”魔王討伐への道のり”をことごとく幸運に導く”勘”。聖女の才能は、魔の瘴気を祓い、魔物を弱体化させる神聖力。
こちらの都合で呼び出した異世界の人間をどこに配置するか。国王は迷った。最終的に宰相の助言に乗っかり、それぞれの視点から勇者伝説を語り継ぐアカデミーの特別講師という仕事を与えることにした。
「なんでまたあんたと……」
「仕事は仕事だろ。俺らはもう勇者でも聖女でもないんだから、お前もお前の仕事に集中しろよ」
「なんで上から目線なの?腹立つっ」
ドスッ
「あだっ!」
マナカはリヒトの尻に手加減なしの回し蹴りをした。「この暴力女……」とヒリヒリジンジン痛む尻を庇いながら、アカデミーの職員寮へと歩き続けた。
「こちらがリヒト様の部屋、お隣がマナカ様の部屋になります」
「「なんで隣!?」」
「結婚されますので」
当然、男女で階が分かれると思っていた二人は思わず呆然と立ち尽くした。
「ちなみに、続き部屋です」
ガチャ、とリヒト部屋から扉を開け「このように扉一枚で行き来できます」と、そのままマナカ部屋を案内した。
「最悪なんですけど。絶対入ってくんなよ!」
「何を今更。野営で普通に雑魚寝だったろ」
「それと同じだって言いたいわけ!?あぁ、安心安全の筋肉眼鏡長髪エルフ姐さんが恋しい……」
「勝手に言ってろ」
(わぁ……本当に聞いていた通りだわ……大丈夫かしらこのお二人……)と、案内人はそっと目を閉じ微笑んだ。
・・・
次の日から仕事が始まった。
「よお、勇者サマ!」
「お久しぶりです、閣下!」
「勇者伝説を語る授業か〜、ハハハ!楽しみだな!」
「何から語ったらいいのかさっぱりです……でも、やれることはやるつもりです、全力で!」
「ハハ!さすがだな!」
無理はするなよ、肩をポンと叩いて去っていく。その姿を、離れた自席からジッと見ていたマナカ。
(あいつ一人で語れば良くない?どうせ同じこと言うんだから)
数分後。リヒトの席はたくさんの人に囲まれていた。
「あっちの世界では『スライド』っていうもので発表してたんで、似たようなこと出来ないかなと思って、『紙芝居』形式にしようと思ってるんです!」
「カミシバイ?って、どんなものですかぁっ!?♡」
「『A3』くらいの……ええと、闇の盾くらいの大きさ……これも伝わらないか、このくらいの大きさの紙に……」
「闇の盾だと!?詳しく聞かせてくれ!」
「カミシバイは紙で作るんですの!?」
「さすが勇者様!発想が素敵です♡」
「なにか手助けが必要ならいつでも言ってくれよな!」
「みんなありがとう!楽しみに待っていてくれ!」
(ハッ。なんなのあれ。)
そのくらいの発想、私にだってあるし。とマナカは思った。実際、マナカは絵本にしようとしていた。
(これじゃ私がパクったと思われるじゃん。萎えた。)
8割方完成していたその絵本をゴミ箱にブンッと放り投げた。イライラを、ぶつけるように。
ガランッ…ゴトッ
(……?マナカの方から大きな音がしたような?大丈夫か?)
リヒトは、まだわちゃわちゃと集う男女の隙間から覗くようにしてマナカの様子を伺った。
(……気のせいか?)
いつもの如く、不機嫌そうな顔で頬杖ついて枝毛を探しているマナカ。この人たちが去ったら様子を見に行こう、そう思っていたが、予想外に来訪者は絶えず、解放された時にはマナカはもう居なかった。
(……あれは、なんの音だったんだ?)
・・・
授業当日。
「は!?準備してない!?」
「そう」
フン、と顔を逸らして毛先をくるくる指で回しながらマナカは言った。
「なんでだよ!なんか作ってたろ!?それを使……」
「うっさいなあ!あんたのせいじゃん!!」
「俺ぇ??」
「………〜〜〜っ」
「ちょっ、どこ行くんだよ!?もう始まるぞ!?」
マナカはその場を逃げるように去った。
・・
「は〜あ」
完全な八つ当たりだという自覚はあった。
それに、たとえパクリだと思われても、パクリじゃないのだから堂々としていれば良かった。ほとんど完成していたのだから捨てる必要もなかった。それも分かっていた。
「でも、絶対謝らないから」
このモヤモヤをどう消化したらいいか、マナカには分からなかった。
・・
「おおぉぉぉおおお!!!」
「すっげ!すっげえ〜!!!!」
「かっこいい〜♡」
紙芝居は大盛況に終わった。まるで実際に自分が討伐したかのような気分になる、ジェットコースターのような勇敢なストーリー。
「私は剣士様推しだわ〜」
「あたしは双子〜」
パーティメンバーそれぞれのファンも付き、リヒトは(みんなの良さを知ってもらえて良かった!)と腕を組んで頷きながら、生徒たちの推し談義を聞いていた。
「でも、聖女様はないわ」
(……ん?)
「わかる〜。なんかイメージと違いすぎ」
「聖女ってもっと優しくて温かくてかわいらしい女の人だと思ってた」
「性格悪そうだよね」
リヒトは苦笑いをこぼしながら(一部同意はするが……)と心の中で前置きをして、その女子生徒たちの席にツカツカ近づいた。会話を制するようにトンと机に手を置き笑顔で身を乗り出す。
「それは、誤解だなあ」




