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どんな悩みも水無月くんにお任せ!!  作者: たかべー
相談部始動編!!
20/78

信頼関係を築く方法とは!?

6月下旬のある日の放課後、俺はいつも通り部室で読書をしていた。クライエントがいないので、如月さんとベルさんは会話をしており、神無月と霜月は宿題をしていた。その時、久しぶりにドアをノックする音がした。俺たちはそれぞれの道具を片付けてから、霜月が「どうぞ」というと、ドアが開き「失礼します」と言って、綺麗な女の子が丁寧な態度で入って来た。その姿を見て俺は驚いた。みんなも驚いた顔をしていたので同じ気持ちだったのだろう。その女の子は、俺でも知っている人だった。そう、暦学園の生徒会長、初御空睦月はつみぞらむつきさんだった。容姿端麗で、腰まで伸びる黒くてツヤのある長い髪を、なびかせながら歩く姿は、とても凛々しい。気品があり、可愛いというよりは、美人顔だと思う。頭も良く、この前の中間テストでは四位だった。俺は見たことないが、運動神経も良いと聞いたことがある。

「ここが相談部でいいのかしら?」彼女は部室を見渡しながら言った。

「はい。そうです。生徒会長は何かご用ですか?」

霜月がいつになく丁寧な言葉遣いで尋ねた。そしてそれは俺たち全員が聞きたいことでもあった。生徒会長がここに来たということは、おそらく部活の活動について話を聞きに来たのだろう。新しくできた部活がどんな活動をしているのか調査しに来たのかもしれないと思った。

「最近、噂を聞いてね。生徒のどんな悩みにも相談に乗ってくれて、解決に導いてくれる部活ができたって…」

そんな噂、俺は聞いたことなかったので、本当に噂になっているのだろうか、と内心疑問に思った。

「そうデス! ここが噂の相談部デス!」ベルさんが誇らしげな態度で言った。

「ようやく俺たちの活動が広まり始めたようだな!」神無月がカッコつけて言った。

なんで最近入部したばかりの新人二人がこんなに誇らしげなんだ、と思いながらも、二人の入部をきっかけに認知度が上がったのも事実なので否めない。何か少し悔しかった。

「生徒会長は相談部の活動内容の調査に来られたのですか?」霜月が改めて質問した。

「いえ、そうじゃないわ」そう言って生徒会長は、左から視線を送り、俺たちを順番に見始めた。最後に俺と数秒間目を合わした後、少し言いにくそうに話を続けた。「きょ、今日は…個人的な…相談に来たの…」

生徒会長の発言を聞いて、緊張していた空気感がなくなり、みんな安心した表情になった。

「ソウデシタカ! それならワタシたちにお任せくだサイ! どうぞおかけになってくだサイ!」ベルさんの言葉を聞いて、生徒会長は目の前の椅子に座った。

「では、生徒会長は今日誰に相談しますか?」霜月いつもの流れで尋ねた。

「そうね。内容がちょっとアレだから……」そう言って生徒会長は、再びみんなの顔を一人ひとり見て、誰に相談するのか考えているようだった。生徒会長は一通り全員を見たあと、決めた相談相手を言い始めた。「如月さんとエイプリルさん……」ここまで聞いて、女子二人を指名したと思っていたら最後に「……と水無月くんに相談したいわ」とまさかの指名をされてしまった。予想外の指名に、俺自身驚いたが、みんなもビックリしたようだった。神無月は「なんで俺じゃないんだ!?」という顔をしているように見えた。


ということで、霜月と神無月は一旦退出し、残った俺も席を移動した。俺は端に座るつもりだったが、なぜか如月さんとベルさんの間に座らされた。そして今回の進行は如月さんにしてもらうことになった。

「えーと、じゃあ自己紹介をお願いします」如月さんの進行は新鮮な感じがした。たまには進行役を変えてもいいかもしれないなと思った。

「二年C組、初御空睦月です。生徒会長をしています。よろしくお願いします」生徒会長は丁寧にあいさつをして、お辞儀をした。

「ありがとうございます。じゃあ、早速相談内容をお聞きしたいと思います」

「そのことなんだけれど……」生徒会長はチラチラ俺を見て何か言いたそうな様子だったので、俺は尋ねてみることにした。

「俺に何か言いたいことがあるんですか? それともやっぱり俺がいない方が…」

「い、いえ、そうじゃないわ。ごめんなさい、失礼な態度だったわね」

「あ、いえ、気にしないでください。ゆっくりでも大丈夫ですよ」生徒会長の様子を見て、如月さんがやさしく言葉を掛けた。それを聞いた生徒会長は、「ありがとう」と言って、深呼吸をしてから俺の方を見て、改めて話し始めた。

「相談の前に、水無月くんに聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「俺に…ですか?」

「私はあなたと話すのは今日が初めてなの。だから、あなたがどういう人なのかを自分の目で確かめたくて」

「そうですか」

「あなたのことは噂で聞いたことがあるのだけれど、噂はあまり信じないようにしているの。どうしても嘘が混ざったり、尾ひれがついて事実と異なったりすることがあるから」

「そうですね」俺は同意した。

「だから確認したいの。あなたに相談してもいいのかどうかを。……いいかしら?」

「大丈夫ですよ」俺は即答した。

「ごめんなさい。相談に乗ってもらう立場なのに、上から目線で…」生徒会長は申し訳なさそうな表情で言った。

「いえ、気にしないでください」俺は少し気を遣って答えた。

生徒会長の言っていることは正しいと思う。相談というのは、クライエントとのラポール(信頼関係)が大事だ。信頼がなければ、クライエントは正直に話しにくいだろう。そもそも信頼していない人に相談することもしないだろう。専門家も相談に乗るときには、まず信頼を築くことから始める。そうしなければ話が進まないからだ。そのため、俺は相談の時、クライエントに信頼されるように、というより、警戒されないように気を付けているつもりだが、不愛想なためか、見た目ではあまり上手くできていないようだ。俺の大きな欠点である。しかしそれで諦めないようにはしている。

信頼関係を築くのに、俺はまずはクライエントの話を真剣に聴くようにしている。話を遮ることなく話し終わるまで聴き続ける。これを傾聴という。人間は自分の話をすることが好きだ。自分の話を相手に聞いてもらえているということがわかれば信頼に繋がる。それに適時、頷いたり、相手の目を見て話を聴いたりもしている。また、相手が話した内容をまとめ、繰り返して確認することで、聴いているということを示している。

しかし、傾聴したからといって、簡単に信頼関係を築けるわけではない。信頼を築くには時間も掛かるし、忍耐も必要だ。一回話をしただけで、すぐに信頼を得ることは難しいだろう。本来、専門家の人たちも何度もカウンセリングを行って、信頼関係を築くようにしている。霜月や如月さんみたいに最初から信頼されている人なら問題ないが、俺は誰にも信頼されていない。俺に相談しようと思う人はいないだろう。するとしても俺がどんな奴か知りたいと思うのは必然だ。


「答えたくなければ、無理に答えなくてもいいから」

「はい」

生徒会長は俺を気遣っているようだったが、どんな質問でも答えようと思っていた。それに、この少しのやり取りだけでも、生徒会長がいい人だと直感で思った。

「あなた、よく学校を休むし、遅刻や早退も多いと聞くわ。それに先生に反抗することもあると…」ここで一度生徒会長は俺を見て間を取ったので、俺は「はい。そうですね」と答えた。

「それにその服装。いつもフードを出して、校則違反よ」

「そうですね」俺は同意した。

「でも…あなたはいつも成績で一位を取るほど勉強ができる。…だから考えたの。何か理由があって、そんな風にしているんじゃないかって。何か特殊なやり方を知っているんじゃないかって。噂では、あなたは学校で変人だと言われているのだけれど、それはあなたのことをよく知らない人が言っているに過ぎない。あなたの口から直接真実を知りたいの」

俺を『変人』と言った生徒会長の目は真剣だった。その目を見てテキトーに答えるわけにはいかないと思い、俺は自分のことを話すことにした。生徒会長だけでなく、隣に座っている如月さんとベルさんも俺の方を向いて話を聴こうとしていた。

「そうですね。理由はあります。まず学校を休んだり、遅刻したり、早退したりする理由ですが、俺にとっては週5で朝8時から夕方4時が体力的にも精神的にもキツイので、自分で調整しているだけです。元々人が大勢いる場所が苦手な方なので、40人も密集している教室に一日いるのは刺激が強すぎるんです。合間で一人になってリラックスしないと、集中力や判断力も低下してしまうので、勉強にも支障が出てしまうんです。俺、HSP気質なんで、自分で刺激をコントロールしないと早くバテるんです」

三人は真面目な顔をして、頷いたり、「そうなんだ!」と小さい声で呟いたりしながら、話を聞いていたので、俺は話を続けた。

「先生に反抗することに関しては、俺は別に先生全員を嫌っているわけじゃないです。気に入っている先生もいれば、嫌いな先生もいるだけです。それで嫌いな先生は大体、非合理的で感情的に俺に文句を言ってくるから、それに意見しているだけです」

「そうなの? あなたが気に入っている先生って誰なのかしら?」生徒会長は興味を抱いたようで聞いてきた。

「そうですね。担任の師走先生は結構好きです!」それを聞いた、如月さんとベルさんは隣で驚いた顔をしていた。

「じゃ、じゃあ、嫌いな先生は誰なの?」少し言いにくそうに生徒会長は聞いてきた。

「そうですね。特に嫌いなのは、いつも上から目線で指示をしてくる、体育と数学の先生ですね。どっちも教科は好きなんですけど、先生があれだと、嫌いになる人もいるんじゃないかなって思います」

「そんなに嫌いなの?」

「そうですね。嫌いなので基本は無視しています。だけど、俺、テストは好きなんですよ。自分の実力を確認できるんで。だから小テストも受けているんですけど、この前の数学の小テストは最悪でした。」

「何があったの?」生徒会長が興味を抱いたようなので、俺は数日前に行われた数学の小テストのことを話すことにした。


数日前の数学の時間、小テストが行われた。俺は全問解いて答えにも自信があった。しかし、次の時間に返却されたテストは採点されていなかった。先生が忘れてしまったのだと思って、俺は先生に再度提出した。その時、先生が言ったことは理解できなかった。俺の解き方は教えていない範囲だということで、採点しなかったのだという。他のみんなは、先生に教えられた解き方で解いており、俺は自分が解きやすい方法で解いていた。それに納得できなかった俺は、自分の答えがいかに正しいのかということの証明をすべて記入し、再度提出した。それでも先生は取り合ってくれなかったので、俺が一つずつ解説を始めると、怒鳴って来た。

この時のやり取りが、周りから見れば反抗しているように見えたのだろうと思う。俺は、いつもこんな感じで、先生と言い合っている。ちなみに自分で答えを確認すると全問正解していた。


この話を聞いて、如月さんは「そうだったんだ!」、ベルさんは「この前のは、そういうことだったんデスね!」と頷いていた。

「そんなことがあったのね」と生徒会長は言った。俺は、反論されるかもしれないと思っていたが、受け止めてくれたようだった。そして最後の質問に答えた。

「そして、最後の服装についてですが………これは…ただこのパーカーをたくさん持っていて、着心地がいいので着ているだけです。特に理由はないです」

「そうだったんデスね! ワタシは水無月サンのその恰好好きデスよ!」

「私も水無月くんその服装、似合っていると思う!」

 なぜかベルさんと如月さんがフォローしてくれた。

「そう」生徒会長は特に気にしていない様子だった。「やっぱり、あなたは思った通りの人だわ!」と生徒会長が小さな声で呟くのが聞こえた。

「え?」と俺が聞き返すと、「あ! いえ、なんでもないわ」とはぐらかされてしまった。

そして、生徒会長の審査は終わったようで、「んっ! んん!」と喉の調整をした後、俺に相談を聞く権利があるのか、結果を言い始めた。

「質問に答えてくれてありがとう。あなたがどういう人なのか、なんとなくわかったわ」

「そうですか。…で、俺はどうすればいいですか?」

生徒会長の判断によって、俺はこのまま相談を聞くのか、部室から出ていくのか、行動が決まる。

「そうね。できればあなたにも相談に乗ってもらいたいのだけれど、いいかしら?」生徒会長は恐る恐る言った。

「生徒会長が良ければ、協力します。元々そういう部活なんで」

「そう! ありがとう」

そう言った生徒会長の表情は少し柔らかくなっていた。生徒会長は部室に来てから、ずっと何かを気にして硬い表情だったが、その言葉の後、やっと少し笑った気がした。



読んでいただき、ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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