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どこかで事件が起きてるみたいで

 ある日の事、2人でポーション作りを進めていると扉をたたく音が聞こえてきた。

「失礼します、ここの主殿はおられますか?」

 声の主は女性の様だけど、僕がここに来てから来客なんて1度もない。僕が言うのも変な話だけど街から大分離れた森の近くにあるこの家に来るなんてよっぽど変な理由がありそうだ。

「誰でしょう?ちょっと出てきますね」

「待って、僕が先に出るよ」

 相手がどんな人かわからない以上、防犯上少しは僕の方がマシだろうからね。一応アリスにはローブだけ着ておいてもらおう。

「どちらさまですか…!?」

 待って、何か思ったより凄い人がいるんだけど!

 扉を開けた先にいたのはしっかりとした鎧を身に纏った、凛とした女性だった。

「えっと……」

「突然の来訪失礼します。ここがベントの冒険者ギルドにポーションを卸しているアリス殿のご自宅でよろしかったですか?」

 凄く礼儀正しい姿勢に、こちらが少し戸惑ってしまう。

「まぁそうなんですけど、貴女は一体どちら様でしょうか?」

「私はクロマキア王国騎士団所属≪盾の騎士≫ポーラ・ヘルマンと言います」

「王国騎士団だって?」

 クロマキア王国といえばこの地を治める国だって話は聞いてるけど、その国の騎士団の方が何でこんな所に来たんだろう?

「コータローさん、その人おそらく本物です。しかも二つ名付きですから相当偉い人ですよ」

 アリスが後ろからひそひそ声で捕捉してくれる。王国騎士団だけが付ける事の許される紋章の入った鎧を着ていることと、その中で特に秀でた能力のある者には二つ名が付けられるそうだ。

「そんな方が何でこんな所に?」

「実は折り入って頼みがありまして、ポーションを王国騎士団に売ってほしいのです。それもあるだけ全て」

「コータローさん、ポーラさんに中に入ってもらいましょう。ポーラさん、申し遅れましたが私がアリスです。こちらへどうぞ」

 アリスは何かを察したのかポーラさんを家の中に案内していく。その表情には真剣さが見て取れる。

 ポーラさんをリビングに案内しその間にアリスはお茶を用意する。そして席についてもらい、テーブルをはさんでその対面にアリスが座る。残念ながらこの家に椅子は二つしかないので、仕方なく僕はアリスの後ろの壁にもたれ掛かっておくことにする。なんかその方が絵面的にカッコいい気がしたし。

「さてポーラさん、王国騎士団にポーションを売ることは構いません。しかしお聞きしたいことがあるのですが」

 ちなみにアリスは僕以外の人間と喋るときはフードを被り、何時もの年相応の話し方ではなくしっかりとした大人っぽい話し方をしている。相手に舐められない様にだとか、これも獣人としての生活の知恵らしい。

「金銭は確りとお支払することを約束します」

「いえ、それもそうなんですが先ず理由を教えてください。ポーションをあるだけ全て何て、普通じゃ有り得ないでしょう?」

「まぁ隠す必要も無いですね。確かに戦う準備はしています。ですがこの辺りは避難する必要はありませんし、どこかと戦争をするという事もありません」

 ポーラさんはこちらが心配しないようにと努めて明るく話そうとしてくれているみたいだ。

「実は王国の北部で超巨大化したウォータイガーが目撃されたらしく、その討伐のための準備をしているところなのですよ」

 どうやらそんな名前のモンスターが国内で見つかったらしい。

「ウォータイガーと言えば、大きいもので3mくらいでしたっけ?」

「はい。ですが今回目撃されたものはだいたい全長10m程あるらしく」

 1匹だけなのが不幸中の幸いですがとポーラさんは付け加える。そんなにヤバいものなのかな?

「凶暴性もさることながら5m級のものでさえ、狙われたらこの家が30秒も持たずに消え去りますよ?」

 いまいちその危険度を把握していないのが顔に出てたのか、アリスが捕捉してくれた。確かにその倍のサイズはヤバいな。

「おそらく騎士団には多くのけが人が出るでしょう。ですのでその対策として多くのポーションが必要なのです」

「回復魔法を使える人はいないのですか?」

「いますが人数が足りないのに加えて今回のモンスターの凶暴性を考慮すると、もしかしたらそれが間に合わないかもしれない可能性があります。なので超緊急時用に各自に持たせる必要があるとの判断です」

 成程、念には念をって奴だね。考えてみれば当然なんだけど回復魔法にも時間はかかる。たった数秒なのかもしれないけどその間に他の人が瀕死の重傷を負うかもしれない。それを繰り返すうちに助からない人が……っていう事を防ぎたいのだろう。

「分かりました。とりあえず今出来ているものは全てお売りします」

「本当ですか!ありがとうございます」

 ギルドに売る分はまた後で作り足せばいいだろう。多分アリスもそう思って言ったんだろうね。

「おぉ、これ程あるとは驚きですね。では料金の方は……」

 アリスとポーラさんがお金のやり取りをしている間に、表に停めてあるある馬車にポーションを積んでおくことにしよう。

 馬車の荷台には非常に大量のポーションが積まれている。本当に有事の為の準備なんだなぁ。

「あぁ、すみません、運んで貰てしまって」

 家から遅れて出てきたポーラさんがお礼を言ってくれる。

「いえ、良いんですよ。それよりこのぐらいしか用意できなくて済みません」

「そんな事ないですよ!他の所からは多くてもこの半分も貰えなかったんですから」

 え?何か違和感があるな……。

「では次があるので私はこれで」

「あ、ちょっと待って!」

「何でしょうか?」

「モンスター討伐が決行されるのはいつです?」

「そうですね、5日後といったところですね」

「じゃあ4日後、いや、3日後でいい。夕方もう一度ここへ来てくれませんか?」

「また売ってくれるのですか?」

「はい、きっと満足させるものを作っておきますよ」

「じゃあ期待しておきますね。それではまた!」

 彼女は笑顔で馬車を走らせていく。さて僕たちは僕たちで出来ることをしよう。



 さて家に戻ったら先ずはアリスとの作戦会議だ。

「ハイポーションですか?出来なくはないですけど」

 通常のHPポーションよりも効き目の高い、それが噂に聞くハイポーションというものらしい。冒険者ギルドで話を聞いてから作ってみたいなと思っていたんだよね。

「でも普通のポーションよりも倍以上の薬草を使いますし、売るには効率が悪いですよ?」

 そう、ハイポーションは簡単に言えばHPポーションを濃くした物な訳だけど、家の庭で作られている薬草の量だと大量生産するには足りなかったのだ。

「だから提案。いっそ庭の畑を広げないか?」

「畑をですか?」

 そうだよ。栽培量が足りなくて効率が悪くなるなら、足りるまで育てられるようにすればいいんだよ。

「幸いにも土地はあるし、僕のスキルも上がったしね」

 あれからほぼ毎日スキルを使い続けていった結果、いつの間にか僕のスキル≪聖域【植物】≫がレベル2に上がっていたんだ。面積が多少広くなっても大丈夫だと思いたい。

「それはいいですけど、でもどうしたんですか?急にハイポーションや庭の拡張だとか言い出して」

「うん、少しだけ思うことがあってね。まぁ最終的には収入が増えるだろうからいいじゃないか」

「思う事ですか?」

 もしも僕の予想が当たっていたとしたら。いや、そんな可能性の低い事を考えていても仕方がない。

「まぁそれはまた後で話すから、とりあえず畑の準備を始めよう」

「わ、わかりました」

 僕たちは畑の拡張に取り掛かる。日数もあまりないから、できるだけ急がなくちゃ!



読んでいただきありがとうございます。

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