覚える魔法を選んでみて
毎度ありがとうございます。
今回は光太郎視点以外の部分もありますがご了承ください。(思ってた量の3倍くらいになってしまった…)
魔法とは初めに自分の中の魔力を感じ取り、そこからイメージを膨らませて発動させる。簡単なものや威力が低いもの、例えば生活の中で使える魔法であれば誰でも使えるが、戦いに必要な高威力のものとなるとそれなりの修練が必要となる。
魔術師を始めとした魔法を主に使う者は杖などの発動媒体を使うことが多い。これらは発動の補助だけでなく魔法の精度の底上げにもなるが、高レベルの魔法にはそれ相応の媒体が必要となることに注意が必要である。
流石は初級の魔導書。この世界の魔法についての説明が一番最初に書いてある。こういった概念的なものが書いてあると異世界人的に凄く助かるね。まぁ元々はこの世界の初心者以前の人に向けての物なんだろうけどさ。
そこに書かれている魔法は確かに生活の役に立つのもが多い。焚火や料理の時に火を点ける魔法だったり、食材などを冷やしたり空気を冷やしてクーラーみたいな働きをするものだったり。感覚的に言えばそれらを強化した物が火炎魔法だったり氷結魔法だったりするんだろうな。
さて、その中で僕は何を覚えればいいのかな?そもそもレベル1でMPも少ないし、畑の事もあるからあまり練習できそうにないんだよなぁ。何か即戦力になりそうなものがあればいいんだけど、そんな都合よく……ん?
「あれ、これって……そうだ。じゃあ他には……うん、こっちも使えそうだね」
意外と即戦力になりそうなものがあるもんだね。よし、とりあえずはこの二つを中心に練習だ!
それから1ヵ月は魔法の訓練、ついでに戦闘(?)訓練も行いながらの生活だった。≪聖域≫スキルで薬草達を栽培、余ったMPで訓練。ただし魔力草を育てる2日は無理なので走り込みをしたりポーションの調合をしたり。ベントの街にポーションを売りに行く日にはついでに帰りに肥料を買っていくから、それだけで筋力アップは当然のこと、むしろ最近ではあまり疲れなくなって少しだけなら走れるようになってきた。1ヵ月でこれなら体力的にはだいぶ成果を上げた方じゃないかな?
やっぱり体力をつけとかないと逃げられないからね。
そんなある日の事。何時もの様に畑の薬草とかを収穫していると、普段は静かな森の方から何かが近づいて来ている音が聞こえてきた。始めはそれが何か分からなかったけどだんだんと近づいてくるそれが馬車の音だと分かる頃には猛然としたスピードで森から荷馬車が飛び出してきていた。
「おい、お前さんも早く逃げた方がいいぞ!」
物凄く慌てているのか馬車を御す男はそれだけ叫んで街の方に走り去ってしまった。いや、せめて何が来るのか教えてほしかったんだけど?どういう脅威なのかさえ分からないじゃないか。
「コータローさん、何かあったんですか?」
家の中に居たアリスも心配そうな顔で出てくる。当然今の音は家の中にいても聞こえていただろう。
「さぁ?森から荷馬車が飛び出してきただけだから何とも。もしかしたら森の中に何かいるのかもしれないけど」
「森ですか……って、コータローさん、あれって!」
「あれ?って煙⁉」
アリスが森の方の空を指さしながら叫んだからそちらを見ると、確かに森の中から煙が昇っているみたいだ。
「も、もしかして森が火事になってしまんじゃ……」
「そんな馬鹿な、雷が落ちたわけじゃああるまいし。それにこんな森に火を放つ人なんて……」
そこまで言って先程の荷馬車を思い出す。まさかさっきの男が?
「とにかくちょっと様子を見てくるよ。アリスは街に向かう準備をしておいて」
「街にですか?」
「さっきの荷馬車の人も『逃げた方がいい』って言ってたからね。火事か何か分からないけどもしかしたらジャンさん達に報告して手伝ってもらわないといけないかもしれないから」
「わ、分かりました。気を付けてくださいね!」
何か嫌な予感がするし、気を付けないと!
「くっそ‼何なんだよあの化け物は⁉」
「カイル、俺はもう足手まといにしかならねぇ。だから俺を置いて……」
「うるせぇ!そんな悲観的な事考える前に生き延びることを考えやがれ!」
森の中を3人の冒険者達がひた走る。しかし3人のうちの1人ブルーノは全身に大怪我をしており、リーダーのカイルが肩を貸している為中々速度があがらない。
「でもどうする?煙玉も後1個だけだよ!」
残りの1人、紅一点のリリーが煙玉を投げた後に走りながらカイルに問う。今のところ追っ手に対して有効な対抗策を彼らは持っていない。
「あのクソ商人め、自分だけとっとと逃げやがって……」
彼らはある商人の護衛としての依頼を受けて、サルタジア共和国内の街ダラスから隣国クロマキア王国のベントへと向かっている途中だった。
2つの国の国境、特にダラスとベントの間には『魔の森』と呼ばれる大森林が広がっており、基本的には旅人や商人たちはここを迂回するように行き来をするのが定番だ。しかしこのルートだと計算上魔の森を突っ切るよりも5日ほど行程が伸びてしまうせいか、この商人は魔の森を通り抜けると言い出した。一応カイルたちも危険だ、回り道をした方がと進言したが商人に契約を破棄されそうになり、生活費に困っていた彼らは渋々その提案を受け入れざるを得なかったのだ。
「俺らが獣人だからって、こんなにもあっさり見限るのかよ!」
「私の煙玉で目くらまししてる間にあの馬車の速度でなら逃げれたよね多分!」
「荷物どころか馬車にさえ触らせたくないってどんだけ獣人が嫌いなんだか……」
そう、彼らが生活費に困っている理由が自分たちが獣人であることが原因なのだ。カイルとリリーは猫の、ブルーノは狼の獣人である為それなりの迫害にもあってきた。だが自分たち次第で自由を得られるのならと、迫害なんてされない力を得られるならと冒険者としての道を選んだのだ。
しかし今回であった『奴』は駆け出しの冒険者である彼らでは歯が立たず、むしろベテランの冒険者でも手に余るんじゃないかと思う程だった。
「カイル、リリー。奴は俺の血の匂いを追ってきている。煙幕で巻いても追いつかれる上に見てみろ。もうそろそろ森を抜けちまうぞ。そうなったら隠れるのも難しくなる。そもそも回復薬も無い今俺が無事でいられる確率なんてほとんどないしな。だから俺が囮になれば」
「させねぇよ」
「させないよ」
ブルーノの発言は2人に止められる。
「俺は『幸運のカイル』だぜ?きっとこの森を抜けたらなんかいいことがあるさ!」
「お前、それは自称だろ?」
「いいじゃん。それに奴隷落ちしてないいだけでも私は良かったと思ってるよ?3人でダメだったら私全然後悔ないし」
「おいリリー、お前まで後ろ向きになってんじゃねぇよ。とにかく森を抜けるぞ!奴が追い付いてきやがった!」
3人が森を抜けるとほぼ同時に、それは再び姿を現した。それは通常の3倍はあろうかという赤黒い姿の猪であった。その巨大猪は完全に目の前の冒険者に狙いを定めている。
「とにかくリリー、最後の煙玉だ!後は全力で……」
ヒュン
何か小さい物が3人の脇をすり抜けていった気がした。それが速すぎて何だか分からなかったが、後ろを振り向くと何故か巨大猪が痛がったそぶりを見せていた。
「はぁ⁉ちょっと硬すぎるでしょ!今のなら樹に穴が開くレベルなんだけど!」
その声の主、おそらく今の攻撃(?)を放ったであろう人物を見るとそれはスリングショット、つまりパチンコを持った光太郎であった。
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