第六十八話 開発室
コル爺は、奥にある扉を開けて中に入った。
「ここが儂の開発室じゃ」
俺達も続いて中に入った、そこにはいくつもの魔道具らしき物や部品の様な物が沢山並んでいた。作業台の様な物もあり、ここで魔道具を作っているのだろう。
「凄い量の魔道具だな」
「ここにあるのは、全て儂が開発した魔道具じゃ」
「コル爺は、魔法国メイカーの魔道具開発部門の総責任者だもんね」
サーラが魔道具を物色しながらそう言った。
「それって、結構偉い人よね?」
「そんな大層なものじゃないぞい、儂はただ、魔道具開発が好きなだけじゃからな」
コル爺は部屋の魔道具を眺めながらそう言った。
「もう1つの奥の部屋に行くぞい、普段はここで作ってるんじゃが、今開発している魔道具は、奥で造っておるんじゃ」
もう1つ奥の部屋に入るとその部屋の中心には、巨大な砲身?のような物が置いてあった。
「これはなんだい?」
「これは、魔導砲の一部じゃ、じゃがこれが中々上手くいかなくての」
リオンの質問にコル爺が答えた。
「魔導砲、これはどういった物なんですか?」
「これを使えば強力な攻撃魔法を使えない者でも、攻撃魔法を放つ事が出来るんじゃ、従来の魔道具でも攻撃魔法を使える物があったが、威力はかなり落ちてしまう、じゃが、この魔導砲を使えば高威力の魔法を放つ事が出来る、中にセットした複数の魔石から魔力を抽出して、それを纏めて撃ち出すんじゃ、どの属性にも属さない、ただただ純粋な魔力の塊をぶつける事ができるのじゃ」
レーナ疑問に、コル爺は嬉々として説明している。
「でも上手くいってないんだ?」
「そうなんじゃよ、魔石から魔力を抽出して集めるにはそれを行う魔道具がいる、じゃが1つの魔石につき1つの魔道具が必要なんじゃ、これはどの魔石でも同じじゃがの、それでこの魔導砲は構造上、魔導砲を起動させるのに、砲身の手前から先に向けて順番に魔石を起動させる必要があるんじゃが、1つ1つを起動させると、ズレが出て上手く発動しないんじゃ、それと複数の人が必要になるしのう」
コル爺は落ち込みながらそう言った。
「こういう小難しい事は我は分からんな」
フレアは砲身をペチペチ叩きながら言っている。
しかし、順番に起動させる方法か……。
「歯車とか使えばいけそうな気がするがな」
「歯車?」
俺がなんとなく呟いた言葉にコル爺が反応した。
「それはなんじゃ?」
「えっ、歯車を知らないのか?」
「儂は初めて聞たぞ」
俺は他の人も見るが、この場にいる俺以外の全員が知らないようだ。この世界には歯車が無いのか?
「こういう形のやつなんだが、サーラ、ちょっと魔法でこれを作れるか?」
「作れるよ、クリエイト・ストーン」
俺はコル爺から借りた紙に、歯車を描いた。サーラに頼むと、俺が描いた歯車を石で3個作ってくれた。
「ここと、ここが噛み合うから、こっちを回せば2個目も動いて、2個目が動くと3個目も動くんだ、同じ大きさの歯車を同じ数使えば、動き出すのは同時になるから、俺は魔道具の事を全然知らないからよく分からないが、これを上手く使えば出来るんじゃ無いか?」
「おお‼︎これは凄い‼︎よくこんな物を考え出したのう‼︎」
コル爺は歯車を見て、興奮した様子で言ってきた。この世界には歯車は無かったんだな。
「これは、俺の故郷で使われてた技術だから、俺が考え出したわけじゃないぞ」
「お主の故郷は一体どこじゃ?是非行ってみたいのう」
「ここから凄く遠い所なので、それは難しいだろうな」
コル爺の言葉にどう返そうか迷ったが、俺はそう言った。
「そうか、それは残念じゃの、それじゃあサーラ、頼まれた魔道具は準備をしておくから、出来上がったら知らせる、儂は今から歯車を使って色々試してみるのでな」
「りょ〜かい、私達も宿を探したりしないといけないから、今日はもう行くね」
「ああ、それとレン君また暇な時にここに来てくれんかのう?他にも何か気づくことがあったら教えて欲しいんじゃが」
「まあ、暇な時ならいいが」
俺はそう返事をした。それを聞いたコル爺は頷くと、早く歯車をいじりたいのか、作業を始めてしまった。
「じゃあ、私達は宿を探しに行こうか」
俺達はコル爺の開発室を後にした。
開発室から出た俺達は、今日泊まる宿を適当に見つけて受付をした。俺は1人部屋で、リアナとレーナとフレで3人部屋、リオンとサーラで2人部屋をとった。
「こっちの部屋も、我達の部屋と同じなんだな」
「どうしたんだ?フレア?」
もう寝ようかという時間に、フレアが部屋を訪ねてきたので部屋の中に入れると、そんな事を言ってきた。
「いや、我の部屋と同じ作りか気になってな、確かめたから我はもう寝る、おやすみ」
「あ、ああ、おやすみ」
そう言うとフレアは俺の部屋を出て行った。一体なんだったんだ?フレアの謎の行動は気になるが、俺は部屋の鍵を閉めて、ベットに入って眠りについた。
キ〜、バタン、ギシ、ギシ
「ん?……」
ベットの上で、俺は仰向けに寝ていて、腹部に違和感を感じて目を覚ました。ゆっくりと目を開けると、そこには俺の上にフレアが馬乗りなって、俺の事を見ていた。
「なっ‼︎フレア‼︎」
「ん?なんだ、起きてしまったのか」
俺は驚愕して目を見開いたが、フレアはいつものテンションで話しかけてきた。
「こんな真夜中に何やってんだお前‼︎」
「ん?夜這いというやつかな、我がレンの事を好きなのはもう知っているだろう?」
フレアは俺にまたがった状態でそんな事を言ってきた。
「それは聞いたが、ていうか部屋には鍵がかかってただろ‼︎どうやって入ったんだ‼︎」
「ああ、さっきレンの部屋に来た時に鍵を盗んでおいたのだ、寝るだけなら鍵が無くても気づかないと思ってな、それよりも大樹の上では有耶無耶になってしまったが、我の気持ち受け取ってもらうぞ」
なるほど、あの時部屋に来たのは鍵を盗むのが目的だったのか、ってそんな事考えてる場合じゃなかった‼︎するとフレアが俺の頭を手で押さえて、顔を近づけてきた。
「ちょっ、フレア」
フレアの力で押さえられては俺ではどうしようも出来ない、もう少しで俺とフレアの唇の距離が後数センチの所で、別の声が割って入った。
「フレアさん‼︎部屋にいないと思ったら何やってるんですか‼︎」
部屋のドアの所にレーナが立っていた。
「夜這いだが?」
「よばっ‼︎そんな事はダメです‼︎部屋に戻りますよ‼︎」
フレアが顔を赤くしながら、フレアを連れ戻そうとしている。ふぅ、なんとか助かりそうだな。
「まあ、待てレーナ、今我と協力すれば、レンを好きに出来るのだぞ?」
「そ、そんな無理矢理なんてダメです‼︎」
フレアは言葉を続けた。
「本当にいいのか?大丈夫、黙っていれば問題無い」
「でも……」
なんだが雲行きが怪しくなって来たんだが。
「ほらレーナ、こっちに来い」
レーナが一歩を踏み出そうとした時、また別の声が部屋に響いた。
「何をしているの?」
そこには笑顔を浮かべた、リアナがいた。
「えーと、リアナ、さん?」
「さあ、フレアとレーナ、部屋に戻るわよ?」
レーナが振り返りながら名前を呼ぶと、リアナは笑顔だがどこか威圧感のある声でそう言った。
「そ、そうだ、なんならリアナも一緒に……」
「なに?」
「いや、なんでもない」
フレアがリアナの雰囲気に押されて、躊躇いがちに言うが、リアナの笑顔での一言に遮られて、発言を取り消した。
「それじゃあ、レンおやすみなさい」
「あ、ああ、おやすみ」
リアナはフレアとレーナを引き連れて部屋を出て行った。俺は部屋の鍵を閉めて、ベットに戻った。リアナが何故怒っていたのかは、分からないが、俺はリアナだけは怒らせない様にしようと、心に誓って眠りついた。




