第三十八話 申し込み
次の日、俺達はダンジョンには行かず、武闘大会の出場申し込みの為に街の中心にある闘技場に来ていた。
「武闘大会の申し込みをしたいんだが、ここであってるか?」
「はい、こちらであっていますよ、こちらの紙に必要事項を記入して持ってきて頂ければ申し込みは完了です、注意事項などは向こうの掲示板に書いてあるのでご覧下さい」
「分かった、申し込み用紙3枚貰えるか?」
闘技場の中にある受付のような場所で紙を受け取った俺達は、受付の娘が指した掲示板を見に行った。
「大会の注意事項か」
掲示板に書いてあったのは、大会は格闘の部門と魔法の部門に別れていて、格闘では魔法の使用は禁止、ただし身体能力強化は可、武器は自由だがポーションなどでの回復は禁止。魔法の部門は身体強化は可、相手への直接的な打撃や武器の使用は禁止、その場で魔法で作った武器なら可、ポーションなどでの回復は禁止だが魔法での回復は可。と言うものだった。
「身体能力強化ってなんだ?」
「ん?知らないのか?」
そう返してきたのはフレアだった。
「私も知らないわ」
リアナも知らなかったらしい、フレアはそれを聞くと呆れた様に説明を始めた。
「身体能力強化と言うのは、魔力を体内に巡らせて身体の力を強化する事を言う」
「魔法とはどう違うんだ?」
「魔法は魔力を体の外にだすだろ?身体能力強化は体内で行うのだ、だから魔法を使えないものでも魔力が少な過ぎなければ使える、まあ出来ない者もいるが、ウィザードは身体能力強化が出来ない者が多いな、逆に他の者の方が身体能力強化は出来る者が多い」
あー、フレアの怪力はそういう事か。
「フレアは身体能力強化を使ってたからあんなに動けてたのか」
それにフレアはきょとんとした顔をしている。
「いや?素の身体能力だぞ?」
フレアには常識が通用しない事を忘れてた。
「あれ?君達は」
後ろから声がしたの振り返るとそこにはダンジョンで出会ったSランク冒険者のリオンがいた。
「うえぇ…お前はあの時の」
フレアが嫌そうな声を出しているが、リオンは近づいてくるといきなり頭を下げてきた。
「ダンジョンではすまなかった、突然勝負を挑んだりして、君にもパーティーの人にも迷惑をかけた」
俺達は予想外のリオンの行動に顔を見合わせた。
「取り敢えず頭をあげてくれ、それに俺達は気にしてない、フレアは分からんが」
「我も別に気にしていない」
「そう言って貰えると有難い、少し話さないかい?お詫びとして奢るからさ」
俺達はその提案になり近くの喫茶店のような店に入った。
「改めて、私はSランク冒険者のリオンと言う、よろしくね」
俺達はそれぞれ自己紹介をした後、気になっていた事を聞いた。
「あの時と随分態度が違わないか?」
あの時のリオンは怖い感じがあったが、今は優しい笑顔を浮かべていて、とても話しやすい。
「実は私は戦闘狂って言われてる奴でね、強い奴が目の前にいると戦いたい衝動が抑えられなくなって乱暴な感じになっちゃうんだ」
そういえば、あの時近くにいた冒険者がそんな事を言ってたな。
「なるほどな、それで冷静になった後に謝りにきたと」
「そういう事、そうだ君達武闘大会には初出場だろ?何か分からない事があればお詫びついでに教えてあげるよ、私は毎年出場してるからね」
それは有難いな。
「それは助かる、気になってたんだが普通に死人とか出ると思うんだが大丈夫なのか?」
「ああ、それなら大丈夫だよ、闘技場の中には遺跡から運び出した魔道具が設置されてて、闘技場の中で殺されても死なないんだよ」
「死なない?」
リオンは、説明を続けた。
「そう、闘技場の中で死ぬと光の粒になって消えて、闘技場の別の場所に設置されてる魔法陣の所に出てくるんだ、転換期よりも前の時代の魔法で原理とかは分かってないらしけど」
転移魔法の魔法陣とかと同じって事か。
「なるほどな」
「見つけたぞリオン‼︎」
声の聞こえた方を見るとでかい斧を背負ったスキンヘッドのガタイのいい男がいた。
「はぁ、またか」
リオンはうんざりと言った様子でつぶやいている。
「今日こそ俺らのパーティーに入って貰うぞ」
「なんども言ってるけど私は貴方のパーティーに入るつもりはないよ」
男はリオンの言葉など構わず自分の意見を言う。
「俺達のパーティーに入ればお前だって特だろ‼︎なんたってこの俺様と組めるんだからな」
なんか言っているがそんな強いのか?
「なあ、リオンあいつは?」
俺の言葉にリオンは答えてくれた。
「Aランク冒険者のダンク、何処かで私の話しを聞いたのか知らないけど最近付き纏ってきてるんだよ」
「貴方も大変ね」
リアナの言葉にリオンは、そうねと笑いながら頷いた。
「それなら武闘大会で決めればよかろう」
するとフレアがこないだと似たような提案をしてきた。
「なんだと?」
「武闘大会でお前がリオンを倒す事が出来れば、リオンはお前のパーティーに入る、逆に倒せなかった場合はきっぱり諦めるのだ」
フレアの提案にリオンが乗っかった。
「いい考えだね、分かった?ダンク、私を倒せればパーティーに入ってあげるよ」
「その言葉忘れるなよ?」
ダンクはそう言って店を出て行った。
「てゆうか、フレアは面倒臭い事を全部武闘大会で片付けようとするなよ」
「簡単に決まっていいだろ?」
「でもリオンさん、良かったんですか?あんな約束しちゃって」
レーナの心配にリオンは余裕の様子で答えた。
「問題ないよ、何があっても私があいつごときにやられる事はありえないからね」
まあ、リオンはSランクだしな。
その後暫く雑談をしてから俺達は店を出てリオンと別れた。申し込み用紙を書いて、俺とリオンとフレアの申し込みは完了した。
「今から武闘大会までは依頼を受けたりしながらそれぞれ武闘大会の準備の時間もつくらないか?」
「それじゃあ私は、訓練の間は別行動をとらせて貰うわ、レンにも負けない為にね」
「我は別にやる事がないからレーナと観光でもするかな」
「はい、一緒に回りましょう」
俺達はそれぞれ準備をして武闘大会に備えた。




