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騒動20 ミタリー取り扱い説明?

 み――皆様。メイドのミタリーでございます――。



 あ――いえ。何でも――。まさか皇子があのように――。

 あぁ――溢れる涙を堪えきれません。私が何をしたと。

 え?してるだろう?

 私、任務――いえ、自分の使命に忠実に従っているだけでございます!!



 これは――断固立ち向かわねばなりませんっ!!

 私の使命はそう――この物語の進行役っ!!ここでへこたれてなるものですかっ!!



 大丈夫です、皆様っ!!私にはこのお話を楽しみにしてくださっている皆様という強い味方がいるんですもの!!

 はい?勘違いも甚だしい?…聞こえません、聞こえていませんよ、私。



 はいっ!!ミタリー、頑張りますっ!!



◆◆◆



〈リデルサイド〉

「あいつそんなに偉いのかっ!!?」



 俺の部屋にはユアナだけではない。

 話し相手としてのマリーがいるのはわかる。なんでお前までいる――アキュリス?



 しかし――マリーの話に度肝を抜かれた。

 ミタリーって――次長なのか?はぁ?という感じだ――。



「ミタリーさん…あぁ見えても、コーヒーの淹れ方がわからないぐらいで、あとはほとんど完璧に正確に、素早くこなされるんです。

 それはメイドの中でも間違いなく1番だって。それは皆さん認めていらっしゃるところで」

「だが…それも「覗き」をしたいがために、自分に与えられた仕事は完璧に素早くこなす技を身につけた…と」

「はい…メイド長様がそのように……」

 呆れ切った様子でアキュリスがマリーに問い、マリーも残念そうに答えた。



「己の能力とエネルギーの使い道を完全に間違えているなあいつは……」

「はい…私もそう思います。それでもミタリーさんのすごい情報網のおかげで、色々助かっていることもあったりするんですよ」

 マリーの言い分もわかるが――あいつの場合、そのメリットより、完全にデメリットの方が上回っているだろう。



「仕事量を増やして、覗きが出来ないようにしてしまえばいいんですかね?」

 アキュリスが俺に尋ねた。

「それなんですが…以前メイド長が覗きを止めさせようと、私たち普通のメイドの倍以上の仕事量をミタリーさんに課したそうなんです。

 ところがそれを1週間で完璧にこなすようになった上に、「覗き」の時間もその間に捻出するようになって……。

 それがメイド次長に昇進するきっかけにもなってしまったと……」

「どれだけ凄まじい執念なんだよ…化け物か…あいつは」

 俺はマリーの話に頭を抱えた。

「覗きの虎…か?」

「かっこいい二つ名を付けるんじゃないっ!!そんなのただの「覗き魔」のことだろうっ!!」

 俺は頭ごなしにアキュリスを叱りつけた。

「でも…なんとかミタリーさんに、メイドの仕事にそのエネルギーを向けてもらえないのかな?なんか

ボクらがターゲットにされてるみたいだし」



◆◆◆



〈マリーサイド〉

 突然申し訳ありません。

 ちょっとこれには「ぎくっ」ですね。

 


 だからミタリーさんは遣りすぎだって、苦情が来ちゃったんでしょうねぇ。

 一生懸命なのはわかるんですが――。

 またリデル皇子様の独り言に戻りますね。




◆◆◆


 

 

〈リデルサイド〉

「今日、皇子がされたという…見つけ次第怒る…とか?」

「イチイチめんどくさいね…それ。ミタリーさん、隠れるの下手だからそれは出来ると思うけど」

 ユアナにそう言われて、アキュリスも「そうですね」と肩を竦めていた。



「首…というのは、ミタリーの「メイド」としての重要度から考えると、今は無理か…」

 俺がそう呟くと、「身につまされますね」とマリーが怖々と言った。

「マリーは大丈夫だよ。ボクが保証する」

「ありがとうございますっ!!嬉しいですっ!!」

 ユアナのやつ、よほどマリーが気に入ったらしい。同年代の女の子同士だからな。

 いい傾向か――ま、少し焼けるが――。



「皇子…マリーに嫉妬しないでくださいね」

「大きなお世話だ」

 俺はアキュリスを睨みつけた。



「大丈夫です。ユアナさんは、リデル皇子が大好きっておっしゃってましたから」

 こういうところはマリーの上手いところだな。

 面と向かって笑顔でこう言われると、俺が照れる。



「それよりアキュリス。普段(忙しくて)俺の護衛もまともに出来ないお前が、どうしてこう俺の部屋でのんびりコーヒーなんぞ啜ってるんだ?」

「変な言い方しないでください。それと…そのことなんですが……」

 アキュリスがため息をついた。



◆◆◆



「エリュシオンから来た『魔導騎士』たちが優秀すぎて、お前の仕事まで取られているのか……」

「簡単に言うと…そういうことです。ですので、俺はこうして本来の仕事に戻ったわけで。

 ただ俺もマリーがいないと、とてもこうして皇子とユアナ殿の2人しかいない部屋に入る勇気はないですけど」

 と、ここで。マリーの好意に満ち溢れた大きいキラキラと輝いた瞳が、アキュリスに向けられていたことに、俺たちは気がついた。



「お前の言い方…完全に誤解を招いているぞ」

「そう…みたいですね」

 まっ――自業自得だな、アキュリス。



◆◆◆



 度々です。メイドのミタリーでございます。



 私、めげずに――リデル様のお部屋の前に陣取ってます。

 ええ!!負けませんともっ!!



 それでもマリーまでも部屋から出てこないという――あっ、出てきました、って――ええっ!!

 アキュリス様とマリーが親しそうに話してるっ!!

 


 「何で」でございますかっ!?

 えっ!?アキュリス様――私という者があるではありませんかっ!!



 こっ、これは――私の一大事でございますっ!!

 必ず突き止めて見せますともっ!!ええっ!!負けませんっ!!



◆◆◆



「ねぇ…リデル……リデルの言う通りにミタリーさんめげずにこの部屋の前にいたけどさ。

 なんかアキュリスさんとマリーに…勘違いしてるんじゃない?」



 アキュリスとマリーを見送って、扉の前にいた俺たちには目もくれず、ミタリーのやつ、

あの2人のあとを追いかけ始めたな――。

 アキュリスに気があったとは知らなかったが――。



「ま…俺たちから矛先がアキュリスに向いて……少し助かったか?」

 そう言って俺は肩を竦めた。

 ユアナは楽しく談笑するアキュリスたちを追うミタリーの背中を見送り、心配そうな表情を俺に向けた。

「ちょっと、アキュリスさんが可哀想だね。それとマリーがひどい目に合わないといいな」

「それは俺から言っておく。しかし…ミタリーにも困ったもんだ」



 本当にな――。


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