表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

あの子は死んじゃった

                 

                 No.4 「あの子は死んじゃった」


 二人は闇に包まれた街の中を歩いていた。道の端に間を開けて並んでいる街灯が寂しげな夜の街に佇んでいる二人を導いていた。その光に照らし出されている彼女の横顔はどことなく寂しそうに見えた。そして、彼女の家に着くと、彼女は庭へと続く格子門を開けた。その音を聴きつけたクリーム色の子犬が小屋から勢いよく飛び出してきて、彼女の帰りを待ち詫びていたように吠えたてた。彼女はその子犬を優しく叱りつけると、コートのポケットに手を突っ込んでいる彼に微笑みかけた。

「カワイイでしょ、あの子」

 彼は小さな尻尾をせわしなく振っている子犬を見つめていた。

「うん、でも、あいつは?」

「えっ?」

「ラッキーだよ。ひょっとして、もう……」

 彼女は彼女を待ち構えている子犬に視線を送った。

「うん、あの子は、死んじゃった」

「いつ?」

「去年」

「そうか」

 彼の白い吐息が冷たい空気に触れて、散った。

「なあ、あのチビ、触らせてもらってもいいか?」

 彼女は頷いて、彼を庭へ通した。彼は子犬の前で屈むと、あどけない吠え声をあげながら飛びかかってくる子犬を受け止めた。

「こいつの名前は?」

「ハッピーっていうの。ちなみに男の子ね」

「そうか、お前はハッピーっていうのか。どれ……あっ、このヤロウ!」

 彼が子犬を抱き上げると、子犬は彼の顔をしつこく舐めまわした。彼は子犬の舌をうまく避けながら、まだ生え揃ったばかりの柔らかな毛を撫でた。

「元気があり余ってるみたいだな」

 彼女は膝に手を置いて屈みこみ、一人と一匹の様子を楽しげに覗きこんでいた。

 彼はひとしきり子犬とじゃれ合うと、まだ構ってもらいたそうにすり寄ってくる子犬を引き離して芝生の上に置いた。

「さてと、そろそろ帰るよ」

「うん、送ってくれて、ありがとう。今日は楽しかった」

「それじゃ、またな」

「また、いっしょに遊んでくれる?」

「暇があったらな」

「わかった、またね」

 彼女は子犬を抱きかかえて門の前まで見送りに出た。彼が道の角を折れる前に彼女の家を振り返ると、まだ門の前にいた彼女が小さく手を振った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ