砕けた玉片と十六歳の夜明け
三つの力が交わる地――辺境の地「三界交鋒」には、今は昔の栄華はなく、わずかな霊気と薄れた闘気、そして眠ったままの血脈が残るだけだった。
その最果ての廃村に、林帆は住んでいた。十六歳。両親を幼くして亡くし、誰にも見向きされない「五霊根の偽物」という劣等な素質を持つ。霊根は役立たず、血脈はなく、闘気すら通じない細い経絡。どの修行者の目にも、彼は“塵”以下の存在だった。
「また今日もゼロか…」
薄暗い洞窟の中で、彼はぼんやりと天井のひび割れを見つめていた。三日間、何も食べていない。街の市場で霊石の欠片を漁るのが精一杯の生きる術。その日も、錆びた刀の破片と、誰も欲しがらない汚れた石を拾って帰ってきた。
空腹でまぶたが重くなる。彼はぼんやりと、拾い集めたガラクタの山に手を伸ばした。すると指先が、何かざらついた破片に触れた。冷たい…いや、微かに温かい?
薄暗い灯りの下で、彼はそれを取り出した。拳半分ほどの大きさの、欠けた玉片だった。表面には見たこともない古代文字のようなものが刻まれている。
その瞬間――
キィン。
脳裏に直接、金属のような澄んだ音が響いた。次の瞬間、ぼんやりと光る文字列が彼の意識に浮かび上がる。
『三力同源、萬法帰一。得此道者、破限超格……』
そこから先は読めなかった。玉片は半分だけ。でも、その数行だけで林帆の心臓は激しく脈を打った。
「これは……修行の法門?」
彼は震える手で玉片を握りしめた。幼い頃、両親の遺品を漁ったとき、父が遺したボロボロの手記に書かれていた言葉を思い出す。
『霊力・闘気・血脈――本来、三つは別々のものではない。ただ、それを結びつける“鍵”が失われただけだ……』
もしかすると、この玉片こそがその“鍵”なのか?
林帆は唇を噛んだ。十六年間、何の希望もなく這いずり回ってきた。誰も教えてくれなかった。誰も助けてくれなかった。それなら――自分で道を切り開くしかない。
洞窟の外では風が泣いていた。三つの力の残り香が渦巻き、冷たい砂塵を舞い上げる。
少年はゆっくりと立ち上がった。痩せた肩に似合わない、固い決意を目に宿らせて。
これが、一人の「凡人」による果てなき旅の始まりだった。




