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「ってな訳でこいつが家に住むことになった」
はぁ。面倒なことになっちまった。
「宜しくー。えーと…」
「月井凛です。凛って呼んでください。リアマルさん」
「おーこれが妹…うん、いける」
「いくな」
「じ、冗談。冗談」
全く冗談に聞こえないのだが。
「ところで部屋はどうするの?」
「まあ空いてる部屋はないよな」
こいつが住むことに関して妹が寛容なのは疑問だが。
「その点については大丈夫。進の部屋を一緒に使うもん」
「な、何言ってんだ?お前」
俺は思春期の男だぞ。今やましい気持ちは全くないが止めておけ。…俺のためにも。
「うん。さすがに止めておいたほうが…」
「何で?いいじゃん。一目惚れしちゃった訳だし」
ここで衝撃の告白である。
「いやいやいや。止めておけって。今は居ない母さんの部屋を使っておけ」
「えー。しょうがないな」
「お前住ませてもらうってのを忘れるな」
「わ、分かったよ」
流れでどんどん進んでいっているが本当に住むことになるとはな…。
「じゃあ私夕飯の支度をするからお兄ちゃん案内してよね」
「おう。分かった」
「じゃあ一緒に行こっ。またねー凛ちゃーん」
「30分後にはまた会うぞ」
「な、何ですとぉ―」
その時ふふっ。そう笑う声が聞こえたような気がした。
それと同時にお姉ちゃんだー。とも。
「おぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー」
「何叫んでんだよ。そんなに驚くことか?」
「これは何て食べ物ですか?イカガエルですか?タコウシですか?」
リアマルの目はキラキラ…いやギラギラしている。
「それは唐揚げだ。鶏の肉からできてる」
「はぁー。「鶏」ですか。一度見てみたいなー」
お前が想像するようなもんじゃねぇぞ。
「近所に鶏飼ってる人居るっけ」
「居ないんじゃない。居たら毎日うるさいでしょ」
まあそうだよな。そんなほいほい居るわけないよな。
「「鶏」って飼えるんですかー?」
うわっ。飼う気満々じゃねぇか。
「飼わねぇぞ。いろいろ手間もかかるし」
「えー。飼おうよ飼おうよ。それで食べようよ食べようよ」
お前自分のペットを食うのか。俺には無理だ。
「もうお前には小熊が居るだろ」
「あれは違うよ。勇者に引き寄せられる魔物だもん」
「勇者?誰だそれは」
「うーん。確証はないんだけどね。もしかしたら進かも」
はあ?勇者なめんな。俺みたいな奴がなれるほどのものじゃねぇんだ。
「嘘つくな」
デコピンの襲来である。
「いったーい。嘘じゃないもん」
「証拠は?」
「この本」
いかにも禍々しい紫色の光沢を放つ本を見せびらかす。
「ジャーン。これがゲーム最初にもらえる魔術の書なのだよ」
「で、そのクソ本を信じていると」
「そうだよ。何か問題でも?」
「なんかサンタさんをまだ信じてる中学生を見ている気分」
「ぶ、侮辱したなー」
頑張ってテーブルを返そうとしているみたいだが、残念。このテーブルは固定されているのだよ。
「くっそー。やるしかないか」
「…なにを?」
嫌な予感しかしない。
「コマンド。特技。錬金」
うわっ。でた。中二病患者でもそこまで言わないようなひどい台詞。
「うわっ何だこれ。金属の留め具が土に変わっているだとー?」
「ふっはっはっはっはー。どうだ私の力は」
「…お前元に戻せんのか?」
「………」
やばい気がする。
「はっはっはー。そんな訳でひっくり返すぞ。よいしょっ」
「おい。止めろぉぉぉーーー」
意外にも強い力で抛られたテーブル。
宙に浮く食物たち。
…これは大惨事の予感。いや確信。
「あぁぁぁぁーーーー。いやぁぁぁぁぁぁーーーーー。唐揚げがぁぁぁーーーーーーーー」
お前がやったんだろ。




