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 要約すると、こうだ。不動産を経営している人が、無駄にできないほどの時間と金を費やして建てた洋館が崩れてしまったのだそうだ。何やら土台の造りが甘かったとかなんとか。なので黒煙の正体は、その時の土煙だったみたいだ。

 まあ、いつもナントカという高級馬車を自慢ばかりする人だから、街の者も内心は胸がすく思いだろうね。僕も吹き出しそうになるのを何とかおさえつつ、警官が見張りをしている現場から、かなり離れたところへ自転車を停めた。夏もそろそろ終わろうとしているけど、まだ暑い。それでも、間をおいて吹く風は涼しかった。

 僕はハンチング帽を脱ぎ、夕闇せまる空を仰ぎ見て草原を見渡した。ここは都心部から離れている郊外で、あまり人が来ない場所だ。遺体を棄てるにはもってこいの場所だろう。たぶん、朝方……朝刊を配る時間帯の前をねらって馬車か何かで棄てに来たのかも。四方八方にいる朝刊組に見られないように。

 郊外だから当たり前だけど、さみしいところかな。人々から忘れ去られた場所。残された物。時間がここだけとまっている……まるで一枚の絵画のような感じがした。もう少し見ていたかったけど、ペルペ警部が馬車から降りる姿が見えたので、慌てて自転車に乗った僕は、急いでその場を後にした。

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