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二人もそう言って出て行った。椅子に座って待つのも失礼かなと思ったので、僕は仕方なくジョシュア君から渡された箱を紙袋から出して見た。ブラウニーの時のように細いベージュのリボンが巻かれている。ハリエットさんはベージュ好きなんだなと僕は思った。そうしながらしばらく待っていると、「お待たせして申し訳ありません」と言いながらハリエットさんが食堂へ戻ってきた。
「あ、いえ」
「どうぞ、お座り下さい。スチュワートさん。お疲れになったでしょう? いますぐ、ハーブティーをご用意しますね」
「どうぞお構いなく」
僕はそう言って、椅子に座った。ちょっとして、台所の方からレモンの香りが漂ってくる。帰ってきた二人がすぐに飲めるように用意していたのだろう。ああ、なんだか疲れがとれていくようだ。ハリエットさんは開け放していた台所から高そうなティーカップに入れたお茶を運び、僕の前に置いた。
「メリッサティーです。どうぞお飲み下さい。スチュワートさん」
「メリッサティーとは何ですか?」
「別名はレモンバームともいいます。とても体にいいんですよ」
「そうなんですね。ああ、そうだ。この前のブラウニー、本当にとても美味しかったです。ありがとうございました。それと、これなんですが……」
「はい、どうかしました?」
「あ、いえ。若い時に使っていらしたものとジョシュア君にお聴きしましたので、本当に頂いていい物なのかと思いまして……」
「そうですか。その箱の中身は、蝶の髪留めなんです。やっぱり誰かに使って頂いた方が、この髪留めも喜ぶと思って」
若い時……今も十分若く見える上に、皺ひとつないその肌は少女のように透き通っている。
「でも、そんな高価そうな物を……」
「スチュワートさん。値段は価値と違うのだと私は思いますよ」
ハリエットさんはそう言って微笑んだ。
「奇麗……」
ベスは箱を開いて、そう言った。その中にはベルベットの布に包まれるようにして髪留めが入っていた。広げられた羽根を覆うように緑と青のエナメルがあしらわれ、蝶の胴体部分にはよく磨かれた深緑の翡翠が填めこまれている。
「ハリエットさんにお礼状を書かないとね。ベス」
「……そうね。ねえ、あなた。何だか夢のようだと思わない? 大きな屋敷……そこに住む美しい人達……」
「そうだね」
「子供の頃って、それが夢だったのか、それとも夢じゃなかったのか区別のつかないことってなかった?」




