45
「ありがとうございます。ハッサン先輩。そして、その夜、両親が予約していた角地六十三番街にあるデイジーヴィラホテルにチェックインしたんです。そのホテルの支配人はホームズさんという方で、色々なことによく気づく、とても親切な人だったんですけど、ジョシュアは気にいらないって感じで。僕が、どうかしたの? と訊いても、『何でもないよ。兄さん』の一点張り。ちょっと弟は、神経質なところがあるものですから、僕も両親も気にしていなかったんですけど」
「へえ……」
僕はとりあえず相槌を打った。彼はそう言うが、あのジョシュア君がそう言うぐらいだから、そのホテルに何かあったんじゃないかと思うんだけど。気になるな。そのホテル……。
「まあ、その支配人さんが僕たち……特に、母をよく見ていたからかもしれませんね。じゃあ、僕そろそろ他の方たちにもブラウニーを配って来ますね。それでは失礼します!」
「あ、うん。ハリエットさんにお礼言っといてね!」
「はい!」
僕がジョージ君の返事を聴いて、置いていった箱を見るとブラウニーはもう一つも残っていなかった。
「……」
僕はジーッとハッサンを見た。
「何だよ?」
「……何でもないよ」
*
「じゃあ行ってくるから、留守を頼んだよ」
「戸締りはしっかりね」
父と母はそう言うと、玄関の扉を閉じた。今日は会社恒例のパーティーだ。その日の母は、長い髪を高く結い上げエイグレットを挿し、薄く口紅を引き、父から贈られたダイヤのパリュール(ネックレス、イヤリング、ブレスレットなど、三点以上のジュエリーが揃ったもの)を身に着け、左手の薬指には婚約指輪の三カラットダイヤリングをし、それを落とさないように、同じく一連のダイヤリングを上から填める。母にとって、婚約指輪以外は義務のようなものだ。
僕と兄さんは内側から鍵を締め、ダイニングルームに入ると、棚の横に置かれた小さいベッドに寝ているエダが、こちらを見て再び目を閉じた。リリムはソファの上で仰向けになって寝ている。何とも警戒心のないことだ。僕は息を吐いて、椅子に座り、飲みかけのアイスティーを飲んだ。
「ジョシュア」
「何? 兄さん」
「いきなりだけど、謎々を出していい?」
「構わないよ」
「じゃあ言うよ。カラスと書き物机はなぜ似ているか?」
「……」
「難しい?」
「いや、兄さんがなぜ、そんな謎々を出したのかと思って。答えは、声とノートはほとんど出さないが、出した時には平坦で平ら。




