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しかし、正確には名前だけを取ったと言った方がいいのだろう。なぜなら、正しい作り方が解らないので、即効性のある毒薬を調合して作ったからだ。使用したものは、ベラドンナ、青酸カリウム。そして、さすがに一晩ほど豚を逆さ吊りにし、虐め抜いたあとに撲殺こそしていないが、豚の肝臓に亜砒酸をかけて腐敗させ、粉末にしたものとウィリアム・クルックスによって、硫酸工場で一八六一年に発見されたタリウムだ。あとは、狼毒も参考にしたので、トリカブト、イチイ属の液果、砒素、生石灰、ガラス粉末も入れてある。本来はビターアーモンドや蜂蜜も混ぜ、ウォール・ナッツ(胡桃)ぐらいの大きさに丸めて使用したらしい。
実際、犯人に対してこれを使えたら手っ取り早いのだが、そういう訳にもいかない。そして当然だが、皮膚に付着しただけで体内へ吸収され大変なことになる毒物もあるので、護身用でも兄さんに渡すなどできない。仕方なく小瓶をしまってから、兄さんに渡す催涙薬を作ることにした。材料はハバネロペッパーや胡椒など、人体には無害なものだ。
先程から雷が鳴り出した。僕はできあがった催涙薬を小瓶に入れ、窓に歩み寄ると小雨が振り出していた。雷を見ていると、まだ僕達が小さかった頃を思い出す。兄さんは雷が鳴った日、必ず僕のところに来ていた。朝起きると、僕にしがみつき寝ていたものだ。
兄さんはその頃から人によく好かれた。老若男女すべてに。隅で本を読む僕より、草原を駆け回り、笑顔を振りまく兄さんはそれだけで注目の的だ。そう、僕は可愛くない子供だった。皆は口を揃えて兄さんを「天使のよう」と言っていた。子供の頃は、そんな兄さんが愛しくもあり、憎くもあった……。ちなみに僕のことは「蛇のような子」もしくは「爬虫類」だった。まあ、言われてみれば確かにそうだ。分け隔てなく接してくれたのは、兄さん、父さん、母さんだけだった。
雷雨がひどくなってきた。幼い頃のように、兄さんが僕のところに来ないだろうかと思いながら熟したイチイの実を食べた。
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「お早う、母さん。兄さんは?」
「お早う、ジョシュア。ジョージならまだ部屋じゃない?」
笑顔を浮かべて母さんは言った。
「それならよかった」
「そう? じゃあ、席に着きなさい。いまコーヒーを淹れるから」
「ありがとう。母さん」
テーブルには湯気の立ち上がる食事が用意されている。僕がフォークを手に取ったところで兄さんが入って来た。




