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異形頭のダンデライオン ~異形の『美味しそう』なお嬢様は人外執事のご主人様~  作者: 石動なつめ
第1節 お嬢様と異形の紳士

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#0 出会い

 タールのように黒い異形が、真っ赤な口を開けている。

 それ(・・)が何であるのか五十鈴には分からない。気が付いたら追いかけられていたからだ。

 異形はその長身で五十鈴をじっとりと見下ろしながらこう告げる。


「ご はん」


 その口から発せられたのは、鼓膜を不快に震わせるような、独特の響きを持った声だ。

 聞いたとたんに五十鈴の肌が一瞬で粟立った。恐怖と緊張と、ここまで全力疾走で逃げてきた五十鈴の心臓が、破れてしまいそうなくらい激しく鳴る。

 喘ぐように息を吐きながら五十鈴は、何とか異形から距離を取る。


(――嫌)


 どうしてこうなったのか五十鈴には分からない。

 分かるのは異形が自分を『餌』だと認識して襲い掛かってきたことだけだ。


(――嫌です)


 五十鈴はごくりと唾を呑み込んだ。

 このまま家族にも友人にも会えないまま、訳の分からないまま死にたくない。

 そう思った時、五十鈴の口からは自然と「助けて」と声が零れた。


「ええ、もちろんですともお嬢さん」


 ――その瞬間、五十鈴の懇願に応えるかのように、穏やかな声が響いた。

 直後に五十鈴のすぐそばを、黒い風のようなものが颯爽と駆け抜けて行った。

 五十鈴は思わず息を呑んで、その黒い何かを目で追いかける。


 するとそこには執事服を着た、たんぽぽの綿毛のような頭を持つ異形が立っていた。

 異形は右手に淡く光るサーベルを携えている。

 そして五十鈴を喰らおうと大きな口を開けた異形を、一瞬の煌めきのもと軽々と切り伏せたのだった。


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