終章:「謎を解かない系探偵」原アイラはぶん殴る!⑤
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2026年3月20日。13時22分10秒。
【ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ……】
大きすぎず、小さすぎず、少し乾いた心地よい排気音を響かせながら、クルーザータイプのバイクがゆっくりと国道19号線をT都方面へ走っていく。
多数のカスタムパーツが取り付けられ、ブルーパープルに塗り直されたその車体は、中型とは思えないほど大柄な車体は強い存在感を放っていた。
車体に合わせたブルーパープルのヘルメット。長い白髪を走行風に踊らせながら、愛馬「ホンダ・シャドウ400 クラシックアメリカンエディション」と共に走るのは、G県N市で“探偵”を自称する街の何でも屋――原アイラ。
気温は18度。例年より暖かいとはいえ、バイクで走るにはまだ少し肌寒い。だが、陽が当たっている限り、寒さを感じるほどではない。むしろ、少し涼しいくらいの、ちょうどいい空気。
結論を言うなら――とても気持ちのいい、春の陽気だった。
心地いい排気音と、気持ちいい陽気を感じながら、アイラはこの一カ月、自身が関わった事故について、一つだけ誰にも言わないままになっていることに思いを馳せていた。
◇◆◇
生前の小山ジョウジロウ。彼が駅で過呼吸になったとき、その様子に気づき、肩を貸して救護室へ運んでくれた人物がいた。
息苦しさで視界が揺れる中、自分を支えてくれたその人の胸についたネームプレートには――「兵藤」そう書かれていた。
『あのとき助けてくれた駅員さん、兵藤さんには本当に感謝しています。原さん。もし、何かのきっかけで兵藤さんに会うことがあったら、その時は僕がありがとうと言っていたとお伝えください。』
ジョウジロウとの会話の中にあった、そんな言葉。もしかすると兵藤ユウジは、幽霊という“見えない存在”になったジョウジロウを、どこか“違和感”として感じ取っていたのかもしれない。
だが――アイラはジョウジロウから預かったその言葉を、あえてユウジには伝えなかった。
それには、理由があった。
「言えないよな。幽霊からのメッセージだなんてさ。」
◇◆◇
【ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ……】
大きすぎず、小さすぎず、少し乾いた心地よい排気音を響かせながら、
長い白髪を走行風に踊らせ、愛馬「ホンダ・シャドウ400 クラシックアメリカンエディション」と共に走るアイラ。
行き先を決めることもなく、ただ気ままに走る――例年より暖かい、2026年3月20日の午後。
今年の桜の開花は、どうやら早くなりそうだ。
「謎を解かない系探偵」原アイラはぶん殴る!【完】




