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G県N市連続電車飛込事故について:「謎を解かない系探偵」原アイラはぶん殴る!  作者: 井越歩夢


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その1:2026年2月16日月曜日・G県N市新町交差点「寄合館」①

=1=


2月16日、月曜日。2月とは思えない暖かそうな陽気ではあるが、妙に風が強いせいか、暖かそうでありながらそれほど暖かさを感じかれない。そんな街中の雰囲気を他所に、日差しと暖房で暖かく過ごせそうな店内の時計が10時を示したところの喫茶「寄合館」。


一年ほど前にできたこの小さな喫茶店は、G県N市駅前・新町交差点付近にある。五席のカウンター、二人掛けのテーブル席が二つ。こじんまりと言うべきか、その広さは八畳ほどにも見え、どちらかと言えば「狭い」という表現が正しいだろう。だが、その手狭ささえ店の味として成立させてしまう、白を基調とした落ち着いた内装の妙がある。


通り側は大型のガラス面とガラス扉。陽当たりは良さそうだが、視線を遮るものは何もない。いわゆる“丸見え”だ。しかし、喫茶店の外観としては珍しいわけでもなく、むしろよくある形と言える。


そんな寄合館の店内には今、二人の客と店主の三人がいる。


店主、荻原ミドリ。喫茶寄合館の店主で、五一歳の女性。N市には“年齢詐欺師”と呼ばれる人物が男女問わず多く存在すると言われているが、彼女もその一人だ。本人が五一歳と言わなければ、見た目は三〇代と言われてもおかしくない。だが、会話の端々に見え隠れする年齢相応の話題が、彼女の年齢が本当であることを確信させる。茶色のロングヘア、おっとりとした顔立ち、ぱっちりした目を飾る赤いメタルフレームの眼鏡――それが「遠近両用」であることは、誰もが知るところだ。


通りを背にした席に座る男性、兵藤ユウジ。三五歳。黒髪短髪。精悍な顔つき。いかにも何らかのスポーツ経験者であることを示すような、スマートでありながら動ける体型をしたこちらは見た目年齢年相応の男。とある噂からN市のオカルト界隈では少し名の知れた男、尾作マサヤという人物に紹介され、今テーブルを挟んで向かいに座る白髪の女性、原アイラと会うためにここへ来たN市駅勤務の鉄道職員である。


そして、兵藤ユウジの向かい側に座る女性、原アイラ。自称二七歳。探偵を自称しているが、実際は“街の御用聞き”とも言える何でも屋だ。時にはモトブロガーの友人のYouTube撮影補助、時にはバイク雑誌ライターの手伝い、時には友人からの依頼で大っぴらにできない仕事(意味深)を請け負うこともある。また、N市で活動するバンドのボーカルも務めており、そのつながりから交友関係は広い。寄合館の店主・荻原ミドリとも音楽関係で知り合った友人だ。 白く染めた長いポニーテールに青い瞳。目のやりどころに困るほどのスタイルの良さは、週二のジム通いと週一の格闘技道場で自然に仕上がったものだが、本人はそんな自身の魅力をまったく自覚していないらしい。


店内に流れる80sのUSロックを背景に、ミドリは二人のテーブルにコーヒーを二つ置くと、カウンター内で文庫本を読み始めた。

そしてユウジとアイラは、テーブルを挟んで向かい合い、軽い自己紹介から話を始めるのだった。


◇◆◇


「先週駅で起きた事故のことは、ご存知ですか?ネットではオカルト好き界隈で少し話題になっているのですが…」


軽い自己紹介を済ませた二人は、早速本題へと話を移していた。 先週N駅で起きた事故といえば、N市民なら誰でも知っているであろう、あの話――某ネット掲示板でオカルト界隈を騒がせている件だ。


「G県N市連続電車飛込事故について」


ネットではそんなタイトルがつけられ、オカルト界隈が【ゾワゾワ】と騒ぎ始めているこの事故。 もちろんアイラもその存在を知っており、ユウジの問いかけにコクリと頷いた。


「G県N市連続電車飛込事故について、ですね。知っています。今回の事故が13日の金曜日。何かに繋がるんじゃないかって、オカルト界隈が騒いでいるようですね。もしかして、兵藤さんも、オカルト好きなんですか?」


アイラは、そう言いながらニッコリと微笑みを見せる。美女の見せるそんな様子に、若干トギマギするユウジは、それを悟られないように話を続けた。


「まあ、嫌いではないですが、あまり身近すぎると現実との境界が曖昧になるというか…気味が悪いですね。それで、その事故について、原さんに少し調べてほしいことがあるんです。」


ユウジはそう言い、左側に置いていた黒のビジネスバッグからA5サイズのタブレットを取り出した。 画面をオンにし、手早くある一文を表示させる。それは、某ネット掲示板に投稿された短い書き込みだった。


『飛び込んだ人は三人とも、ホーム中央付近で電車を待っており、線路へ落ちる瞬間、驚いた表情で後ろを振り返っていた』


その部分を反転させたユウジは、タブレットの画面をアイラに向け、「この一文です」と指を差した。


「三回の飛込事故のうち、一回を僕は目撃していて…違和感があったんです。」


そう前置きした彼は、自分が目撃した2026年1月23日金曜日、8時05分発の電車を待つN市駅ホームでの出来事を語り始めた。


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