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32.大義はどこに
走る。
頭上から降り注ぐ瓦礫と、誰のものとも知れない血肉をかいくぐり、また踏み越え、銃を構えたまま走り続ける。
既に相葉のいた部隊からも戦端を開いているものもいる――通信を途切れさせるものも出てきている。
先の作戦を遥かに上回る大混戦だ。開いている通信機は全部隊の通信を拾うが、意味をもって聞こえてくる音は少ない。
激音と、断末魔。
その奔流。
戦闘の音の響く中を、相葉は駆け抜ける。だが、引き金を引くことはない。そもそも通る道が、既に戦闘を終了しているという理由もあるが、動いている人間を見かけても物陰に隠れてやり過ごすようにしているためだ。
基本的な行動指針は、前回と同じだ。
とにかく、生き残ること。
そのために、まずは戦わないこと。
いや、戦えない――のかもしれない。
討伐するべき獲物――ではなく、人間を相手にしているということ。襲撃してきたということは、天城の統率している派閥とは異なるのかもしれないが、それでも白井のような人間がいないとも限らない。
何よりも……この戦いに、大義はない。
現実は、ただの、人間同士の醜い殺し合いだ。
終わりは、どこにある。
迷いを胸に抱えたまま、相葉は当てもなく走り続ける。
「俺は――」
何のために、人を殺す。




