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Blood/Bullet/Parade  作者: FRIDAY
参 Betrey/Blaze/Boost
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22/51

22.波紋


 機関七課施設は最奥に、組織を統括する者の座する一室がある。

 総長室だ。

 そしてその総長室から、厚い扉をも突き抜けて怒声が響いた。


「いい加減、決断をするべきだ北山総長! もう限界だろう!」

 言下に難く握った拳を机に叩きつける。そこに広がっているのは先の制圧戦における結果だ。そこに並んでいる数値は、

「死亡者数八百七十、被害総額二億! 圧勝は圧勝で戦果は戦果ではあるが、あまりにも損失が大きすぎる!」

 戦死者の名簿を机上から弾き散らして、副長の岸田は怒鳴った。


「こんな規模の損失はそう何度も出せるものではないぞ。敵の組織を壊滅させ超能力者を三百ほど殺したとはいえ、いくらかは逃走したと報告にある。まだ殲滅には至っていない。――決断のときだ北山総長。今こそ機関七課の総力を挙げて超能力者どもの殲滅作戦を決行するべきだ」


 言下に、岸田は北山の眼前に新たな書類を叩きつける。それは、

「情報部からの新たな報告だ。どうやら先の作戦で叩き潰したのはいくつか存在する集団のひとつでしかなかったらしい。しかし先頃、その集団が結集の動きを見せているという報告があった。何をするつもりなのかは知らんが、これぞ好機だ。奴らを一網打尽にする絶好の機会ではないか。何を躊躇っている、北山総長。決断しろ、これで決着がつくのだ!」


 さあ、と岸田は怒鳴る。だが北山は険しい表情のまま沈黙している。そのはっきりとしない態度に、岸田は口端と拳をぶるぶる震わせ、しかしふっと力を抜いて穏やかな声音を出した。


「この作戦で最後になるのだよ、北山総長。もう犠牲者を出さずに済む。超能力者の陰に怯えずに済むのだ。多少の犠牲が何だ。こうしている間にも、奴らの手によって哀れな犠牲者が出ているに違いないのだ。敗北を恐れているのか? 案ずることはない、我々が超能力者にも十分対抗し得ることは、そして勝利を得ることができるということは、先の作戦ではっきりと証明された。恐るるに足りん。さあ、これで終わりにしようではないか」


 取り入るような岸田の言葉に、しかし、北山は頷かなかった。

 厳めしい表情を崩すことなく、ようやくその重い口を開く。


「ダメだ。そんな作戦は許可できない」

 な、と反抗しようとする岸田を遮るように、北山は続けた。

「確かに先の作戦では多大な犠牲を出したものの一定の成果は得られた。我々が彼らに対して得た過去最大の戦果と言ってもいいだろう。しかし、それで調子に乗って逆襲でもされれば目も当てられない。ことは慎重に慎重を重ねるべきだよ。それに、おかしいじゃないか――ことの運びが順調過ぎる。情報部も数度に渡って成果を出したことで気が急いているのかもしれない。万が一にも誤情報があってはならないのだ。何度も言うが、我々の目的は魔女狩りではない――いいかね、岸田副長」

 睨み上げるようにして岸田を見据えて、ゆっくりと北山は言う。

「君の作戦は認可できない。少なくとももうしばらく様子を見、情報の精度を上げてからだ」


 北山の言葉を、岸田は目を剥いて聞いていたが、やがて頬をぶるぶると震わせ、満身の力で机を殴りつけた。そして至近で北山を睨み付け、

「――君には失望したよ、北山総長」

 絞り出すようにそう言い捨てると、踵を返し、つかつかと肩を怒らせながら総長室を出ていった。

 スライドドアが閉じるのを見届けてから、室内に残された北山はようやく小さく吐息する。


「焦って周りが見えなくなるようでは、組織全体を沈めかねない――彼が愚かしくも強硬手段に出なければいいのだが」


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