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不死王の手ほどき  作者: 森山すぱこ。
命の重み
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新しい大使


◇◇◇ 不死王・語り


ボレノフ連邦。

それは12の国からなる運命共同体。

シトレーネ家の血筋の人間が各国の首長を務めている。


我がロレンスマーク王国と連邦は隣り合ってはいない。

王国の北の隣国スロフェツトが連邦と国境を接している。

王国は連邦には属していないものの、国王だったロレンスマークはシトレーネ家の縁戚だった。

もし隣国が連邦に飲み込まれれば、待っていたとばかりにその一員になっていただろう。


王国の城にロレンスマークの一族が集まった夜。

ロレンスマークより前の統治者の生き残りだったレヌンが城を完全に破壊した。

私はロレンスマークがどのような形でここを乗っ取ったのか、正確な経緯まではわからない。

ただ、レヌンのやり方を見れば、かなり強引な手段を取ったのは明らかだった。


私は生前、王国がある場所にお忍びで遊びに来ており、家もあった。

だから人外の姿になっても、その場所で静かに暮らしていたのだ。

レヌンが事件を起こすまでは。


レヌンは統治に興味がなかった。

あとさきのことなど考えていなかった。

私はすぐに城を作り直し、自らを王と宣言したのだ。

その後は色々あったが、一見平穏は維持できていると思っている。

ただ、課題は山積みだ。

その中でも一番懸案なのは連邦との関係だ。

すでに王が変わったことは知っているはずだ。

どう出てくるか……。


実はボレノフ連邦の南には、我が国の大使館がある。

そこは情報収集の拠点として維持しておきたい。

が、ただでは済まないだろう。

血が流れるかもしれない。

でも、もう避けられないと思っている。


そこを死守することで、王国が戦場とならないようにしたい。

やるべきことは、大使館の人間を入れ替えることだった。




◇◇◇ オルト・ある日の午後


ここは連邦の端に位置する、ロレンスマーク王国の大使館。

その大使室は重苦しい空気に満ち満ちていた。



艶やかで大きな机の前に立つのは、壮年の男性オルト。

不死王の命で新しく大使になった。

その後ろには全身鎧の男と顔色の悪い死霊兵の二人が脇を固めていた。


その前でふんぞりかえっているのがジエン。これから大使を解任される男だ。

笑みを浮かべ、気まずそうに目を伏せるオルトを見上げている。

沈黙が続く。


ジエンは横を向き、煙草の煙をゆっくりと吐いた。


「これは私が受け取っても仕方がない」


そう言って、机の上の書類を指さす。

ジエンのそばで立っていた執事があわててその書類を手にすると、オルトにぶっきらぼうに手渡した。

オルトは一礼すると、その書類を手にした。


「それでは証拠にならんな……お前が新しい大使という。王がいなくなったとは聞いているが、本当のところはわからない。そのような状況でいきなり紙切れを持ってきて、私が新しい大使ですと言われてもね……。ここを明け渡すわけがないだろ? 君だったらそうするかね?」

「……」


オルトは何も答えない。

ジエンはその様子を見て、満足そうに話を続ける。


「そういうわけだ。今日のところは……」

「であれば」


ジエンの言葉を遮り、ようやくオルトが口を開いた。


「その目で確認しましょう」

「……は?」


ジエンの余裕だった顔が反転した。


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