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ライフル暴走  作者: 河田 げんずい
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2章 捜査中③

「というのが今回の事件内容だ」

筑波は海道にテレビ局ハッキング事件の概要を説明した。

「この事件の事は知っている。ニュースマスターは毎日見ているので、画面が突然変わって俺もびっくりした」

と、海道。海道はテレビを基本的に見ない。馬鹿げた内容のバラエテイーやら人気だけで実力がともなわない歌手が出ている歌番組などを見ても時間が無駄だからだ。

だが、ニュースだけは例外だ。刑事たるもの世の中の流れを知っておかなければならない。

ニュース番組は最適な情報収集手段だ。特に、ニュースマスターは複雑な事件などもわかりやすく解説してくれる。そのせいで、射殺ショーという不謹慎なシーンも見さされるが、それは我慢した。

「八方塞りというわけか」

「いや、そうでもない」

筑波は言う。

「何!?犯人の手がかりが見つかったのか!?」

驚く海道。

「具体的な犯人が見つかったわけではないが、ここは捜査のやり方を変えてみようと思う。今までは前科のあるものの中でコンピューターの技術に長けた人間を中心に調べてきたわけだ。しかし、それでは駄目だ。今後は前科の有無を問わずにコンピューターの技術に長けた人間をピックアップしていくのだ」

「なるほど。犯人が前科のある人間だとは限らないしな。しかし、前科のない人間に対象を広げると捜査範囲が拡大しすぎて大変だと前回の会議で言っていなかったか?」

「まあ、話は最後まで聞け」

2092年では昔に比べ再犯率が高くなっていた。犯罪者という存在は一度や二度、牢屋に入ったぐらいでは懲りない存在らしい。射殺が日本でもOKに法律が改正されたのにはそういう理由もあった。犯罪者が反省しないのなら、さっさと殺してしまえばいい。死んでしまえば、再犯は絶対に起こらないからだ。

「ライフル暴走事件と今回のテレビジャック事件は同じ人間だろう。コンピューターの専門家によると、通常インターネットなどを通じてハッキングをしようとすると何らかの痕跡が残る。大抵のハッキング事件はそれが証拠となっていて犯人逮捕につながるのだ。

 今回それが見つからない。2件もそういったことやっておきながら痕跡を一つも残さないということはコンピューター技術に関しては、日本いや世界でもトップレベルの持ち主と考えていい。おそらくベスト100・・・まあそんなランキングもないだろうが、それくらいの持ち主なのだろう。

 さて、そういった人物が前科のある人間の中にいるのか?答えは否だ。それだけの技術のある人間が以前にそういったハッキングなどの犯罪行為をおこなっていたとしても証拠も残さないのだから、捕まるわけがない。前科などがあるわけがないのだ」

自説を長々と筑波はしゃべる。

海道はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「確かにスジの通った話だ。しかし、それほどの人物が犯人だとして、どうやって犯人の目星をつけるのだ。そのベスト100ってのをよ。プロ野球の年間打率ランキングみたいにネット上にリストがあるとかいうわけではないだろう」

「それについては考えている。ヘッドハンティング会社に行けば何かわかるのではないか。そこなら仕事柄有能の人材の情報が常に収集していているはずだ。当然コンピューター技術者の情報もあるはずだ。私の特務捜査課2課・・・もちろん私も含めて全員で聞き込み調査を開始する」

「わかった。俺も手伝う」

海道はスナイパーなので、捜査は得意ではない。警察学校で一通りの基礎を習ったが、スナイパー一筋なので、捜査に関しては経験不足だ。

「いや、海道。おまえはいい」

「どうしてだ!?」

「実は上からの圧力があった」

「何?圧力だ。むかつく話だ」

「そうだ。警察は上の命令は絶対ってところだからな。それなのに、お前ときたら、上の機嫌をそこなう事ばかりやっているからな。勝手な捜査はもちろん駄目だし、本業である射殺についてもしばらくやるなということだ」

「自分で言うのもなんだが確かにほめられた事はしていない」

海道は今までの自分の行いを振り返ってみる。中心的な仕事である射殺では、この前の事件の時を除けば一切ミスをしていない。しかし、それ以外の件でいえば、いろいろと問題を起こしすぎた。遅刻はけっこうやったし、上司に対して敬語こそ使ってはるが、敬う態度は一切ない。さらに、いえば、射殺担当者というのは本来、捜査などをやってはいけないのに勝手にやっている事がある。幹部連中にいい風に思われているわけがないのだ。

「しかし、どうも納得がいかない。確かに圧力がかかってきても不思議ではないが、今まで呼び出しこそ何度かあったが、射殺まで禁止されるとはどういうことだ!?ライフル暴走事件をハッキングではなく俺の腕のせいだと思っているのか?」

感情の起伏が激しいのが海道の特徴。いらだちを隠そうとはしない。特に今は海道と筑波の二人のみ。隠す理由もない。

「そうではない。実は今までにもこういう話は何度かあった。それを私の方でなんとかしていたのだよ。しかし、さすがに今回はどうもできなかったのだよ」

と筑波。

事実である。海道と筑波を比べると、筑波の方が階級が上であり、上司からの印象という点でも圧倒的に筑波の方がよかった。筑波は非常に礼儀正しい性格で、よほどのことがない限り怒り出したりしない。加えて、筑波の親は警察でもかなり頂点に近い地位にいる人物だ。筑波はそのおかげで、かなり得をしている。

「そうだったのか!?初めて知ったぜ。そら、いつもすまねえな」

「気にするな。ただ、ま、そういうわけだ。しばらくおとなしくしてくれ」

「と言われてもよー。捜査だけでなく射殺も禁止となると俺は具体的に何の仕事をすればいいんだ。まさか。椅子に座ってぼーと一日いるわけにもいかないだろう。」

仕事場で何もしないというのは実は意外と苦痛なものだ。忙しすぎてしんどい方がよほど楽というもの。

さすがに射撃訓練までは禁止したりはしないだろうから、1日中訓練すべきか?と海道は考えた。

「それについては問題なし。私の部署には部下が2名いるだろう」

「ああ、鈴木と宮垣か」

「その二人だ。彼らに射撃について教えてやってくれ」

人に教えるというのは面倒だと思ったが、いい経験になるかもと海道は考えた。それに筑波の頼みだから断るわけにはいかない。


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