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第90話 死霊の山と八大騎士

 早朝、死霊の山に向かう。


「なんか元気なくなってきたね、リフィー」


 エレナが言った。

 朝もやのかかる山に近づくにつれて、リフィーの動きが鈍くなっていく。


 リフィーを追ってくる太陽騎士団の獣たちも遅くなっていた。


 死霊の山の手前で、リフィーは飛べなくなってしまった。


「ここまでのようだ。リフィーと獣たちには、ここで待っていてもらうしかない」


「うむ。本当にキールの言っていた通りじゃな。仕方ない。獣たちは置いていくほかあるまい」


 エルドウィンが言った。

 それぞれ、自分の仲間との別れを惜しんだ。


「さぁ、行こう。明るいうちに死霊の山の向こう側にたどり着いておきたい」


「もちろんだ」


 しばらく緩やかな坂道を歩いて行くと、大きな石碑が見えてきた。


「ここが死霊の山か。そのわりには静かなところじゃな。我らの登場に驚いて姿を隠しておるのか、わはははは」


 あぁ、なんかココで似たようなことを言っていたヤツがいたな。


「静かすぎて、逆に不気味に感じます」


 カリンは辺りを見回した。


「大丈夫だよ。キールとリーゼがいるから」


 エレナ姫はカリンを安心させる。


 まったく姫さんは……。


「よし。ここからは、太陽騎士団が先頭と後方に分かれて進もう」


 エルドウィンを先頭にして、俺たちを挟んで、太陽騎士団があとについてくる。


「なんじゃ……あまり危険な感じがしないな」


 先頭のエルドウィンが振り向いた。


「あぁ。中腹の広場までは、比較的楽に進める。そこの分岐は左だ」


「わかった。死霊の山も楽勝じゃな」


 と、意気揚々と進んでいくエルドウィン。

 それについていく俺たち。




 そろそろ中腹か……。


「しっ! 誰かいる」


 エルドウィンがデカい体を縮こませて、俺たちに止まる合図を出してきた。


「……いや、アレは、別の騎士団か……なぜ、こんなところで休んでおる」


 エルドウィンはゆっくりと近づいていく。


「お主ら、こんなところでなにを道草しておる」


「あ、あなたは、太陽騎士団の……」


 驚いた表情を見せたのは、紅蓮騎士団のレオンだった。


「そうじゃ。わしが太陽騎士団団長のエルドウィ——」


「あっ、キール……キールではないか!」


 レオンが俺を見つけると、エルドウィンの横を通り過ぎてやってきた。


「レオンたちもココへ来ていたんだな」


「あぁ。あのあとすぐにロラストの都を出発した。キールにもらった地図でここまで来ることができたと言っても過言ではない。あ、これは、エレナ姫、お久しぶりです。お元気そうで」


「はい、お久しぶりです」


 と、エレナは笑顔で会釈した。


「キールたちが来るのは、もっとあとになると思っていたが……」


「まぁ、いろいろあったが、順調に進むことができた」


「さすが、キールだ」


 レオンは強くうなずいた。


「ゴホンッ。その赤い鎧からして紅蓮騎士団だな。なぜ、こんなところで止まっておるのだ?」


 エルドウィンがあらたまって言ってきた。


「あ、あぁ、それが……この先の広場にモンスターが出現する。だが、なにをしてもまったく倒せない。剣も魔法も、騎士団の特性攻撃も効かない。黄金騎士団、翡翠(ひすい)騎士団、蒼穹(そうきゅう)騎士団、鉄紺(てつこん)騎士団、紫苑(しおん)騎士団がここで足止めされている状況で……」


 レオンが言った。


「わはははは、それじゃあ、ここに八大騎士が全部そろって足止めを食らっていると。笑わせる。そんなヤツら、この太陽騎士団にかかれば一瞬だ」


 と、エルドウィンが前に進み出る。


「いや、しかし、太陽騎士団といえど……」


「エルドウィン、待つんだ」


 俺はエルドウィンを腕をつかんで止めた。


「なんじゃ、キール……も、もしかして、いわくつきの敵というのは……」


「ここの敵だ」


「まったくなんなんだ、アイツらは……今までに遭遇したことのないモンスターだ」


 先の道から騎士団が息をあげて、引き下がってきた。


 黄金の鎧を身につけている騎士団と、エメラルド色の鎧の翡翠騎士団だった。


「ん? お前たちは太陽騎士団……それと、見たことのないヤツらだな。ここは、一般人が登山するところじゃねーぞ。帰んな」


 黄金の騎士が言ってきた。


「よぉ、久しぶりじゃの、黄金騎士団」


 エルドウィンが笑顔を見せつけた。


「ふん。いい年のくせに、いつになったら団長から降りるんだ、アンタは?」


「わはははは、太陽のようにいつまでもじゃ。それと、こやつは一般人なんかじゃないぞ」


 と、エルドウィンが俺の肩に腕を回してくる。

 目を細めた黄金騎士団団長が、俺をなめるように見てきた。


「キール・ハインド。新しい暗黒騎士。それで、こっちが暗黒騎士パーティーだ」


「新しい暗黒騎士? ふっ、笑わせるな。そんな適当な身なりで、よく暗黒騎士がつとまるな。パーティーも弱そうだ。ついに太陽騎士団団長も、目が衰えたか?」


「えっ? キール、暗黒騎士になったのか?」


 レオンが目を丸くして驚いた。


「あぁ」


「そうか。さすがキールだ。キールなら騎士になれると思っていた。しかも暗黒騎士か。やっぱり、紅蓮騎士団に入ってもらいたかったな」


 レオンは悔しそうに、でも嬉しそうだった。


 そのレオンを黄金騎士団が、眉間にしわを寄せて見ていた。

 なにを言っているんだというように。


「わはははは。もう遅いぞ。わしはこの目で、キールが暗黒騎士にゾクラナ帝国の国王から任命されるところを見ておる」


 エルドウィンが自慢するかのように言った。

 そして、エレナがうんうんとうなずいた。


「それにだ。闇の指輪を作り出した諸悪の根源であるシックザール魔教会を壊滅させたのもキールじゃ。わしらも一緒に同行してな。つまり、キールは暗黒騎士、そして八大騎士としての力を十二分に持っておる。わしら太陽騎士団が保証する」


 エルドウィンが俺の肩をバンバン叩く。


 だから、力が強いっての……。


「はいはーい、私も保証します」


 エレナが俺の腕をつかんで来た。


「えぇ、私も保証するわ」


 リーゼも手をあげた。


「もちろん、私も」


 カリンも強くうなずいた。


「あれ、君はロラストの都で……」


 レオンがリーゼに気づいた。


「俺の妹だ。今はシックザールじゃない。大丈夫だ」


「そうか、キール。助けられたんだな」


「あぁ」


「妹も仲間になったってことは、暗黒騎士パーティーは文句なく強いな」


「そうだとも、わははははは」


「ふん。お前たちがこぞって実力を認めるなら、そうなんだろうな。だが、前の暗黒騎士パーティーはどうしたんだ?」


 黄金騎士が聞いてきた。


「おそらく闇に飲まれて死んだと思われる」


「死んだ……だと……あの暗黒騎士が?」


 俺たちは、他の騎士たちに紹介された。

 そして、前の暗黒騎士が死んだことを手短に話した。


「では暗黒騎士パーティーを追放される前に、キールはここに1度来たことがあると」


 レオンが聞いてきた。


「あぁ」


「おい、だったら、ここを通り抜ける手段は? まさか知らないで、ふたたびココに来たんじゃないだろな」


 黄金騎士の語気は強かった。


「もちろん、わかっている」


「どうしたら、死霊のモンスターたちを?」


「マナだ。それに似た力をもつ精霊魔法なら、モンスターに効き目がある」


「バカな……マナなんて力、だれが持っている? ましてや、精霊魔法など」


 黄金騎士はあきれてしまった。


「マナは俺が使える。妹のリーゼとカリンもな」


 おぉ、と多くの騎士団から声があがった。

 騎士団の目に希望の光が差したかのように、半分あきらめていた気持ちが復活した。


 黄金騎士は信じられないと様子で、唇をかんでいた。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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