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第74話 それぞれの新たな道へ

 2日後。


「もう出発するのだな、キールよ」


 国王に挨拶するため、王の間にいた。


「はい」


 リーゼの体調も回復した。

 元シックザールでもあるリーゼをここに長くとどめておくと迷惑がかかると思い、レイアルロイツの都を出発する。


 当然、リーゼはシックザールのローブは脱いでいる。


「シックザールに立ち向かい、闇の指輪も捨てに行くこれからの旅、気をつけるのだぞ」


「お気づかいありがとうございます。必ず、達成してみせます。世界のために」


「うむ。キールよ、頼んだぞ」


「はい」


「エレナ、リーゼもキールをよろしく頼む」


「はい」


 エレナとリーゼは同時に答えた。


「キール。よい旅を」


 フレデリックが握手を求めてきたので、もちろん握りかえした。


「あぁ。ヴェロニカのことをよろしく頼む」


「もちろんだ」


 ふたたび互いに強く握手を交わした。


「あわっ、キール。ご武運を……わたくしをここまで導いていただき、ありがとうございました」


 ヴェロニカが頭を下げてきた。


「自分でここまで来たんだよ。俺はなにもしてはない。自分の判断だ」


 ヴェロニカの肩を軽く叩いてやった。


「はい……」


「ヴェロニカ、頑張ってね」


「はい、ありがとうございます。エレナも元気で」


「うん」


 ヴェロニカとエレナは抱きしめ合った。


「…………」


 もうアルスの表情は、涙と鼻水でぐずぐずだった。


「アルス、自分で選んだんだろ。ここに残るって」


「あい……しょうでふ……秘宝島のブラックエリクシャーをっ、じぇんぶ……ヒックッ……全部、廃棄処理しますでありますぅぅぅ」


「あぁ。お前ならできるさ」


「はいぃぃ……やってみせます」


 秘宝島にあった大量のブラックエリクサーをそのまま捨てるわけにはいかなかった。


 どう廃棄するか検討する中で、アルスがみずから無害な状態にすると言ったのだ。


 みずからの居場所を作ったアルス。


「過酷な作業だろうが、今までの仕事に比べたら、とんでもなくいい仕事になるだろうよ」


「はい、世界のために頑張りますぅ」


「ううう……アルスぅぅ……お仕事頑張ってね……うわぁぁぁぁ」


 エレナも涙をこぼして、アルスに抱きついた。


「エレナ姫ぇぇぇ……お別れはつらいですぅぅ」


「すぐに闇の指輪を捨てたら、会いにくるからぁぁぁ……」


「はいですぅぅぅ……」


 姫、さらっと簡単に言ってくれたな。


「た、大変です……フレデリック隊長……」


 兵士が1人走りこんできた。


「おい、ここは王の御前だぞ」


「し、失礼しました。しかし、急いで見ていただきたいものが……」


 フレデリックは、兵士から丸められた紙を受けとって広げた。


「こ、これは——」


 フレデリックは紙に目を落として固まってしまった。


「キール。大変だ……」


 フレデリックが1度大きく息をすって、紙を見せてきた。


「キール・ハインド、SSS級の賞金首だ」


「「えーーー」」


 エレナやアルス、ヴェロニカが驚愕した。


 ——そうくるか。


「はっきり言って、面倒くせー、ハハハ」


「ちょちょちょっとキールが狙われちゃうの?」


 エレナが聞いてきた。


「そういうことになるな」


「SSS級は、賞金首の中でも最高ランク。懸賞金は1億セピー以上……そして、生死問わず」


 フレデリックが冷静に言った。


「あっ、でも、それって、ものすごくキールが強いってこと?」


 エレナが軽く言う。


「そうとも言えるが……」


 困ったように答えたフレデリック。


「それじゃあ、仕方ないか。本当にキールは強いから」


「お気楽だな……いや、それは認めるけども……ただキールだけじゃない。妹のリーゼも」


 フレデリックが手配書をめくる。

 リーゼの顔が描かれていた。


「なんて目つきの悪い描き方だな。俺のもだけど」


「たった数日で、手配書を作ったってことは、シックザールならやりかねない。でも、それだけ脅威に感じているとも言えるんじゃないかしら」


 リーゼが冷静に答えた。


 この短時間で、俺の顔が描かれたってことは、秘宝島で見張られていたか?


 そんな気配はなかったが……。


「それと、エレナ姫のもある」


「えっ、なんで私も? 私、なにかしたかな?」


「姫はなにもしてないな……」


「いや、これは手配書ではなく、行方不明者としてだ。しかも、SSS級の賞金首、キールにさらわれたと書かれている」


 フレデリックが言った。


「私、さらわれてないよ。キールとお出かけしてるだけだよ」


「姫がそう思っても、一国の王女がいなくなれば、そう受けとめられる」


「……わかった!」


「なにがだ?」


「私がお出かけ中だって言う。これを作った人に」


 エレナは1人強くうなずいてみせた。


 これを作ったのはシックザール。

 シックザールに伝えるってことか……。


「まぁ、どうせシックザールのところへ行くんだ。ついでに伝えてやろう」


「うんっ」


「おいおい、お2人さん。命がかかってるのに、そんなお気楽な……」


 フレデリックは真剣の表情だった。


「大丈夫。私もいるから。シックザールの本拠地だって知ってる。私の人生を狂わせたヤツらは、ぶっ潰してやらなきゃね、兄さん」


「あっ、あぁ、そうだな……」


 笑顔でいうと、怖いぞ、リーゼ。


「妹の君まで……はぁ……でも、この手配書が世界中に配られているとしたら、やっかいなヤツらが」


 フレデリックが忠告する。


「大丈夫だろ」


「兄さんがいれば大丈夫だし、私もいるしね」


 と、リーゼが俺の腕をつかんで頭をくっつけてきた。


「あっ! 私だっているもん」


 と、もう片方の腕をエレナ姫が抱きしめてきた。


「はぁ……なんて頼もしい仲間なんだ」


 フレデリックが額に手を当てて、あきれてしまった。


「だそうだ、2人とも」


 エレナとリーゼは、ニカッと笑った。


「この手配書に関しては、誤報だと案内を出す。キールたちも無理をするなよ」


「あぁ」


 それから中庭に移動した。

 リフィーが待機していた。

 タビタは、リフィーの首カゴに乗ってもらう。


 俺がリフィーに乗ると、リーゼがわざわざ俺の前に入りこんできた。


「なんでそこに」


「兄さんが後ろにいてくれると安心するの」


「じゃあ、私はキールの後ろから、キールを安心させるから」


 と、エレナが俺の背後に座って、腰に腕を回してきた。

 背中にぴったりとエレナの胸が押し当てられる。


 リーゼが一瞬、後ろをにらんだ。


「それじゃあ、出発するぞ」


「それではみなさん、お元気で……あわわわわ……」


 ヴェロニカが手を振る。


「私、頑張りますからぁぁぁ……」


 アルスも涙ながらに叫んだ。

 そして、服を脱ごうとしていた。


 フレデリックたち紫苑騎士団弐番隊にも見送られて、城から飛び立った。


 レイアルロイツの都を離れて、タビタをハザシュの町を送る。


 タビタを町へ降ろして、ハザシュの町をあとした。


 そして、シックザールの本拠地がある大陸に向けて、姫と妹ともに空を行く。



 第2章 終わり

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