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30話 名前で呼ぶとかその先とか考えると舞い上がってしまいそうです

 あの無駄に可愛がられた恥ずかしい夜から翌日の昼。結局、私とバルツァー様は望んだ仲になれずにいました。


 だいたい、私が恥ずかしさのあまりちょこまかと逃げ回ったせいですが、そんなこともバルツァー様は笑って許してくださいました。


 今朝も恥ずかしさに負け、ずっと俯きっぱなしでしたし、バルツァー様に嫌われていなければ良いのですが。


 お優しいバルツァー様ですし、きっと大丈夫でしょう。そういえば、私はいつまで彼のことをバルツァー様呼びなのでしょうか。


 今度、勇気を出してお名前で呼び返しましょう。そうすれば、私がどれだけ恥ずかしい想いをしているのか、ご理解して頂けるはずです。


「マリー?」


 私を呼ぶのはミシェーラ様。お昼の時間となり、各々が昼食をとるために食堂に向かい始めます。


 彼女の方に視線を向けると、彼女は少しだけ嬉しそうな表情になりましたが、すぐにいつもの険しい表情に戻ります。


「一緒に食べるでしょ?」


「え? あ、はい」


 ミシェーラ様との会話も徐々に慣れてきましたが、やはり癖なのか時々来る威圧的な雰囲気には、まだまだ慣れません。


 席を立ち、周囲の生徒たちも徐々にいなくなっている中、まだまだ一部の生徒たちが歓談を楽しまれていました。


 不意にルビー様たちの方に目を向けますと、やはり彼女たちは私を睨んでいました。


 足が震えないように、必死になってミシェーラ様の後ろをついていきますと、小さな声で覚えていなさいと聞こえました。


 どなたの発言かわかりませんが、きっとあの三人です。私は、怖くて振り返ることはできませんでした。


 今はともかくミシェーラ様の後ろについていきましょう。


 そして連れていかれたのは食堂の中でも、貴族生徒用のスペース。貴族と平民を同じ学校に通わせる以上、貴族側が納得できるようにとの優遇制度だ。


 食堂には、初等部や中等部の生徒までいらっしゃいます。


 高等部の貴族生徒は人数も少ないので、仕方ないと言えば仕方ないのでしょう。


 私の従弟にあたるエミリア様の息子さんや、現国王のお子様などもいらっしゃるので、不敬にならないように気を付けなければいけませんね。


「では食事にしましょうか」


「ええ」


 ミシェーラ様がお座りになられますと、スタッフの方が勢いよくやってきます。そこまで急がなくても、この方は怒りはしませんよ。


 昼食が運ばれ、私達の前にゆっくりと並べられます。


 普段あまり食べることがない高級なお肉のコース料理が目の前に出され、普段の食事から違いを感じました。


 昨夜はバルツァー様も我が家の食事を食べていかれましたが、貧乏くさいとか思われていなければ良いのですが。


 しばらくして食事も落ち着き、会話をする頻度が増えていきました。


「でも少し前までは、私達狂言誘拐まで考えていたんですよね」


「そうね。その件だけど、好きになさいな。ちゃんと二人で夜会に来るのよ? 友人としてしっかりもてなしてあげるんだから。それからお姉様にも紹介しなくちゃね」


「お姉様? え? ミシェーラ様のお姉様って王妃様ですよね?」


 ミシェーラ様のお姉様は現王妃。約十年前に当時の王子と婚約もなしに電撃結婚をなさったと噂の元公爵令嬢様です。


 当時のことは知りませんが、前々からその二人は結婚するであろうと言われていたものの、中々婚約などをしなかったそうです。なのに、婚約期間もなしに突然結婚されたそうです。


 結婚。婚約。バルツァー様にもし申し込まれるなんてことがありましたら、私は絶対に首を縦に振ると思います。


 申し込んでくださいますよね?


 まさかミシェーラ様にそう言われるとは思いもしませんでした。ふと誰かの視線を感じ振り返りますと、そこには多くの貴族生徒たちが行きかっているだけで、気のせいかと思い込みました。


「狂言誘拐? 夜会? これは利用できそうですね」


 その時、誰かが悪事を企てているとは、私は想像もしていませんでした。

どなぁタイトル難しいです。


ブックマーク誤字報告ありがとうございます。


今回もありがとうございました。

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